転生令嬢の婚約者様〜冷酷皇帝陛下が私を溺愛してきます

みおな

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過去⑧

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 槍で串刺しにされる夢を見た。

 その激しい痛みに、息をヒュッと吸う。

「ああ、目が覚めたか」

 その声はセレスの隣からした。

 重いまぶたを上げると、緑色の髪のその人が、上半身裸でセレスの隣にいた。

 重い頭では状況が理解出来ない。

「・・・ぁ」

 問いかけようとした声は掠れて、体も頭も重い。
 セレスは、自分の思うように動かない体と頭に戸惑いを隠せない。

 その様子をジッと見ていたエルムンドは、のしかかるようにセレスの顔の両側に手をつき、セレスを見下ろす。

 その時初めて、セレスは自分がベッドの上に横たわっていることに気付いた。

 しかも、自分を見下ろすエルムンド殿下も、そしてセレス自身も何も着ていない!

 どうして!?

 混乱した頭で起きあがろうとするが、重い体は動いてくれない。
 それでも必死に首を横に振った。

「ぃや・・・」

動けないだろう?薬が思ったより効きすぎたようだからな」

「・・・離・・・て」

 どうして裸で、王太子殿下と共にベッドにいるのか。

 信じたくない。考えたくない。

 セレスは身をよじるように、見下ろすエルムンドから離れようとする。

 だが思うように動かない体は、あっさりとエルムンドに押さえつけられた。

「どこへ行く?せっかく目が覚めたのだ。今度は僕の愛が注がれるのを感じさせてやろう」

「!」

 セントフォーリア王国は一夫一妻制である。

 王族は、正妃が子を授かれなかった場合は、愛妾という形で自身の血を後継に残す。

 女性は閨事を共にすれば、その相手と添い遂げない場合「疵モノ」として貴族世界では扱われる。

 新たな相手を見つけることも難しく、社交界でも後指を指されるため、修道院へ行くことがほとんどであった。

 エルムンドとジュリエットの婚約が覆ることはない。

 彼らの婚約は政略的に結ばれたものであり、彼ら自身もそれを理解しているからだ。

 未婚のセレスが相手と裸でベッドにいる。

 それだけでも醜聞である。
リウスのキスどころではない。

 それなのに、目の前の王太子は笑顔を浮かべてセレスの動けない体に手を滑らす。

「ゃめて!」

?もう何度も何度もここに愛を注いだ。愛している、セレス。君のが僕で嬉しいよ」

「!!」

「今は、君との子を授かるわけにはいかないからね。ちゃんと薬は飲んである。だから、安心して僕の愛を受け止めると良い」

 そう言うと、エルムンドは宣言通りに何度も何度もセレスを蹂躙した。

 薬が体から抜け動けるようになった時には、セレスはもう立ち上がることも出来なかった。

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