上 下
12 / 32

セレスティーナ10歳②

しおりを挟む
 ユリウス様は皇帝陛下だったお父様が十歳の時に亡くなられ、その時に皇帝陛下の地位につかれた。

 皇妃殿下であるお母様の手を借りながら、それでも今、ハイドランジア帝国の皇帝として君臨されている。

 ハイドランジア帝国は、血族で継がれる。
 だけど、愚かな後継が生まれないとは限らない。

 だから皇族は、最低でも三人の子供をもうけるそうだ。

 ユリウス様は長男で、上に三歳年上のお姉様。下に五歳年下の弟君がいらっしゃる。

 だけど、お母様、お姉様、周囲の親族全員一致でユリウス様に後継が決まったらしい。

 幼い頃から優秀で、冷酷な面もあるユリウス様は、皇帝という地位に相応しいと言われたそうよ。

 そんな方が何故私を望んでくれたのか、不思議なのだけど、ユリウス様と婚約できたことは大きいと思う。

 何故なら、ハイドランジア帝国はこのセントフォーリア王国の何倍も国力が上なので、その皇帝陛下と婚約に文句を言える人がいないから。

 セントフォーリア王国の王家では、やはり公爵家の私を二人の王子のどちらかの婚約者にと考えていたらしい。

 年齢と爵位が合うのが私ともう一人侯爵家のご令嬢だけなのだけど、少し年上か年下なら数人ご令嬢はいる。

 お母様のお話だと、私の婚約を聞いた王妃様は残念そうに、それでもお祝いを言ってくれたらしい。

 良かったわ。
別に王家の方が何かされたわけじゃないけど、やっぱりあの夢の中の瞳が怖かった。

 できることなら、あの瞳と同じ色の瞳の男性とは会いたくない。

 ただ・・・
私に皇妃は務まらないんじゃないかしら。

 中身は貧乏男爵家の令嬢だし、公爵令嬢としての嗜みもまだ三年しか学べていないわ。

 もちろん婚姻できる年までまだあるけれど、皇帝として認められたユリウス様の隣に立つ者として、私は周囲の人を納得させられるのかしら?

「どうされましたか?セレスティーナ様」

「マチルダ。私はユリウス様のお隣に立つことを皆様に認めてもらえるかしら?」

 セントフォーリア王国では学園に十三歳から通うけど、ハイドランジア帝国では十一歳かららしい。

 十一歳から五年間通うらしいけど、ユリウス様は皇帝の座につかれたから、そんな暇はなかった。

 ハイドランジア帝国の学園は、建前として貴族は全員通うという決まりらしいけど、高位貴族はほとんどが優秀な家庭教師が付いてるから、学園で学ぶことは少ないらしい。

 だからテストだけ受けて、それが合格なら授業を受けなくて良いそうなの。

 ユリウス様も入学式は出られたけど、あとは試験の時だけ学園に行かれるらしいわ。

 で、何故こんな話になったかというと、私も来年ハイドランジア帝国の学園に入学するから、なの。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】愛とは呼ばせない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,097pt お気に入り:6,661

最低な夫と離婚したら、幸せになりました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:149

完 弱虫悪役令嬢の結婚前夜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:46

婚約破棄?はい喜んで!私、結婚するので!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:16

これは報われない恋だ。

BL / 完結 24h.ポイント:2,811pt お気に入り:8,408

みんなに優しい王子様に求婚されました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14,549pt お気に入り:1,194

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:986pt お気に入り:3,088

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:143

処理中です...