転生令嬢の婚約者様〜冷酷皇帝陛下が私を溺愛してきます

みおな

文字の大きさ
上 下
5 / 32

セレスティーナ8歳①

しおりを挟む
 私の名前は、セレスティーナ・アマランス。
 アマランス公爵令嬢で、現在八歳。

 その事実を自分に納得させるのに、半年近くかかった。

 だって私にはセレス・カメリア男爵令嬢十五歳としての記憶があるから。

 あの日。
ドレッサーの鏡に映った美少女は、紛れもない現在の自分で、セレスとしての自分がどうなってしまったのか、大切な家族やリウスがどうなったのか、激しく混乱した。

 そんな私を、部屋に戻ってきた女性は抱き上げ、宥めるように背や頭を撫で、それでも落ち着かない私は呼ばれた医師によって鎮静剤を打たれた。

 次に目覚めた時は夜中で、それでもベッド脇で私の手を握ってくれている女性が目に映った。

 きっと、この少女のことがとても大切なんだ。

 そのことだけはすごく理解できた。

 そんな人に、少女の中身が私であることを言うのは正しいのだろうか。

 私はしばらく様子を見ることにした。

 本当は、すぐにでもリウスに会いに行きたい。

 でも、姿が幼い、別人の少女が「私はセレスなの」と言っても、リウスだって困るだろう。

 とにかく現状を把握すること。
それまでは、セレと呼ばれたこの少女として振る舞うこと。

 そう決めた。

 そして分かった事実。

 この家はセントフォーリア王国の、公爵家であるということ。

 あの女性はアマランス公爵の夫人で、セレと呼ばれていた少女の母親であるということ。

 セレと呼ばれた少女の本名は、セレスティーナといい、あの時七歳であったということ。

 あの時は高熱を出して倒れ、そして目覚めたら私が宿っていたということ。

 そして。

 現在が、セレス・カメリアが生きていた時代から五百年もの時が流れているということ。

 半狂乱になって屋敷を飛び出しかけ、私はギリギリ理性で立ち止まった。

 その頃には、セレスティーナがどれだけ両親や使用人たちに愛され大切にされているか理解していたから。

 あの高熱を出した時、どれだけ心配されていたのか。

 理解出来たから、私はギリギリだったけど屋敷を飛び出すことを堪えた。

 中身が十五歳のセレスだったから、出来たというのも妙なものだ。

 それから私は、公爵家にある図書室で、多くの文献を読み、あの頃から今までのことを学ぶことにした。

 何故、セレスの精神が五百年も未来の、この少女の体として目覚めたのか。

 セレスティーナの精神はどうなったのか。

 セレスは、家族は、そして大好きなリウスはどうなったのか。

 イチ男爵令嬢や子爵令息のことが文献に載ってはいないだろう。

 それでも、何か知れるかもしれない。
そう思った。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

処理中です...