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セレスティーナ8歳①
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私の名前は、セレスティーナ・アマランス。
アマランス公爵令嬢で、現在八歳。
その事実を自分に納得させるのに、半年近くかかった。
だって私にはセレス・カメリア男爵令嬢十五歳としての記憶があるから。
あの日。
ドレッサーの鏡に映った美少女は、紛れもない現在の自分で、セレスとしての自分がどうなってしまったのか、大切な家族やリウスがどうなったのか、激しく混乱した。
そんな私を、部屋に戻ってきた女性は抱き上げ、宥めるように背や頭を撫で、それでも落ち着かない私は呼ばれた医師によって鎮静剤を打たれた。
次に目覚めた時は夜中で、それでもベッド脇で私の手を握ってくれている女性が目に映った。
きっと、この少女のことがとても大切なんだ。
そのことだけはすごく理解できた。
そんな人に、少女の中身が私であることを言うのは正しいのだろうか。
私はしばらく様子を見ることにした。
本当は、すぐにでもリウスに会いに行きたい。
でも、姿が幼い、別人の少女が「私はセレスなの」と言っても、リウスだって困るだろう。
とにかく現状を把握すること。
それまでは、セレと呼ばれたこの少女として振る舞うこと。
そう決めた。
そして分かった事実。
この家はセントフォーリア王国の、公爵家であるということ。
あの女性はアマランス公爵の夫人で、セレと呼ばれていた少女の母親であるということ。
セレと呼ばれた少女の本名は、セレスティーナといい、あの時七歳であったということ。
あの時は高熱を出して倒れ、そして目覚めたら私が宿っていたということ。
そして。
現在が、セレス・カメリアが生きていた時代から五百年もの時が流れているということ。
半狂乱になって屋敷を飛び出しかけ、私はギリギリ理性で立ち止まった。
その頃には、セレスティーナがどれだけ両親や使用人たちに愛され大切にされているか理解していたから。
あの高熱を出した時、どれだけ心配されていたのか。
理解出来たから、私はギリギリだったけど屋敷を飛び出すことを堪えた。
中身が十五歳のセレスだったから、出来たというのも妙なものだ。
それから私は、公爵家にある図書室で、多くの文献を読み、あの頃から今までのことを学ぶことにした。
何故、セレスの精神が五百年も未来の、この少女の体として目覚めたのか。
セレスティーナの精神はどうなったのか。
セレスは、家族は、そして大好きなリウスはどうなったのか。
イチ男爵令嬢や子爵令息のことが文献に載ってはいないだろう。
それでも、何か知れるかもしれない。
そう思った。
アマランス公爵令嬢で、現在八歳。
その事実を自分に納得させるのに、半年近くかかった。
だって私にはセレス・カメリア男爵令嬢十五歳としての記憶があるから。
あの日。
ドレッサーの鏡に映った美少女は、紛れもない現在の自分で、セレスとしての自分がどうなってしまったのか、大切な家族やリウスがどうなったのか、激しく混乱した。
そんな私を、部屋に戻ってきた女性は抱き上げ、宥めるように背や頭を撫で、それでも落ち着かない私は呼ばれた医師によって鎮静剤を打たれた。
次に目覚めた時は夜中で、それでもベッド脇で私の手を握ってくれている女性が目に映った。
きっと、この少女のことがとても大切なんだ。
そのことだけはすごく理解できた。
そんな人に、少女の中身が私であることを言うのは正しいのだろうか。
私はしばらく様子を見ることにした。
本当は、すぐにでもリウスに会いに行きたい。
でも、姿が幼い、別人の少女が「私はセレスなの」と言っても、リウスだって困るだろう。
とにかく現状を把握すること。
それまでは、セレと呼ばれたこの少女として振る舞うこと。
そう決めた。
そして分かった事実。
この家はセントフォーリア王国の、公爵家であるということ。
あの女性はアマランス公爵の夫人で、セレと呼ばれていた少女の母親であるということ。
セレと呼ばれた少女の本名は、セレスティーナといい、あの時七歳であったということ。
あの時は高熱を出して倒れ、そして目覚めたら私が宿っていたということ。
そして。
現在が、セレス・カメリアが生きていた時代から五百年もの時が流れているということ。
半狂乱になって屋敷を飛び出しかけ、私はギリギリ理性で立ち止まった。
その頃には、セレスティーナがどれだけ両親や使用人たちに愛され大切にされているか理解していたから。
あの高熱を出した時、どれだけ心配されていたのか。
理解出来たから、私はギリギリだったけど屋敷を飛び出すことを堪えた。
中身が十五歳のセレスだったから、出来たというのも妙なものだ。
それから私は、公爵家にある図書室で、多くの文献を読み、あの頃から今までのことを学ぶことにした。
何故、セレスの精神が五百年も未来の、この少女の体として目覚めたのか。
セレスティーナの精神はどうなったのか。
セレスは、家族は、そして大好きなリウスはどうなったのか。
イチ男爵令嬢や子爵令息のことが文献に載ってはいないだろう。
それでも、何か知れるかもしれない。
そう思った。
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