4 / 32
過去②
しおりを挟む
リウス・コパーは子爵家の嫡男だ。
焦茶色の短い髪と瞳をした、優しげな風貌の少年である。
彼にはとても大切な幼馴染がいた。
コパー子爵領と隣り合わせの、カメリア男爵家のご令嬢セレスだ。
ふわふわしたピンク色の髪と、同色の瞳をした、とても可愛らしいセレスのことが、リウスはとても大好きだった。
幼い頃から共に過ごし、お互いの両親も、それから本人たちも、王立学園を卒業すればふたりは結婚するものだと思っていた。
学園に入る前に婚約することにしたのは、リウスの希望だ。
「セレスは超絶可愛いから、他の男が寄ってきたら困る」
その言いように、お互いの両親は苦笑し、セレスは顔を真っ赤にした。
確かにセレスは可愛いが、リウスの心配は惚れた欲目だと、セレス本人はもちろんお互いの両親も思った。
でもセレスもリウスのことが大好きだったから、その婚約を喜んで受けることにした。
セントフォーリア王国の学園は、身分によってクラス分けされる。
両親から聞いた話によると、過去に男爵令嬢が王族である王子をたらしこんだらしい。
王族に嫁げるのは、公爵家、侯爵家、辺境伯家まで。
婚姻できるのは、爵位が二つ下までと決まっていた。
セントフォーリア王国での辺境伯家は、公爵と侯爵の間という扱いだったから、王族に嫁ぐ権利があった。
しかし、男爵令嬢はあり得ない。
男爵家から嫁げるのは伯爵家まで。
それは身分差がどうこうではなく、下位貴族の交流と高位貴族の交流とでは差があるからだ。
身に纏うドレスひとつとっても値段が違う。
交流する相手も、他国の高位貴族や王族で、その国の言語やマナーを理解しておかなければならない。
個人の能力で、他国の言語を理解できる下位貴族の令嬢もいるだろう。
だがドレスや宝飾品を揃えるのもだが、元々の友人たちなどの関係にしても、爵位は二つ下までが妥当だとされたのだ。
それなのにその時の王子は、こともあろうに婚約者である公爵令嬢より、男爵令嬢を率先した。
国王陛下が愚かでなかったため、王子は王籍からすぐに廃籍。男爵家へ強制的に送られることになった。
二度と同じ過ちが起きないようにと、それ以降の王立学園ではクラス分けは爵位別とされた。
学園内では爵位は問わず、平等扱いという他国でよくあったしきたりも排除され、学園内であっても社交界と同じ振る舞いを、と決められた。
リウスはあまり武術は得意でなく、騎士職には就けなさそうだったが、幸いにも文官として勤めるには向いていた。
セレスも騎士として危ない目にあうよりも、給与が安くても文官の方がいいと言ってくれていた。
焦茶色の短い髪と瞳をした、優しげな風貌の少年である。
彼にはとても大切な幼馴染がいた。
コパー子爵領と隣り合わせの、カメリア男爵家のご令嬢セレスだ。
ふわふわしたピンク色の髪と、同色の瞳をした、とても可愛らしいセレスのことが、リウスはとても大好きだった。
幼い頃から共に過ごし、お互いの両親も、それから本人たちも、王立学園を卒業すればふたりは結婚するものだと思っていた。
学園に入る前に婚約することにしたのは、リウスの希望だ。
「セレスは超絶可愛いから、他の男が寄ってきたら困る」
その言いように、お互いの両親は苦笑し、セレスは顔を真っ赤にした。
確かにセレスは可愛いが、リウスの心配は惚れた欲目だと、セレス本人はもちろんお互いの両親も思った。
でもセレスもリウスのことが大好きだったから、その婚約を喜んで受けることにした。
セントフォーリア王国の学園は、身分によってクラス分けされる。
両親から聞いた話によると、過去に男爵令嬢が王族である王子をたらしこんだらしい。
王族に嫁げるのは、公爵家、侯爵家、辺境伯家まで。
婚姻できるのは、爵位が二つ下までと決まっていた。
セントフォーリア王国での辺境伯家は、公爵と侯爵の間という扱いだったから、王族に嫁ぐ権利があった。
しかし、男爵令嬢はあり得ない。
男爵家から嫁げるのは伯爵家まで。
それは身分差がどうこうではなく、下位貴族の交流と高位貴族の交流とでは差があるからだ。
身に纏うドレスひとつとっても値段が違う。
交流する相手も、他国の高位貴族や王族で、その国の言語やマナーを理解しておかなければならない。
個人の能力で、他国の言語を理解できる下位貴族の令嬢もいるだろう。
だがドレスや宝飾品を揃えるのもだが、元々の友人たちなどの関係にしても、爵位は二つ下までが妥当だとされたのだ。
それなのにその時の王子は、こともあろうに婚約者である公爵令嬢より、男爵令嬢を率先した。
国王陛下が愚かでなかったため、王子は王籍からすぐに廃籍。男爵家へ強制的に送られることになった。
二度と同じ過ちが起きないようにと、それ以降の王立学園ではクラス分けは爵位別とされた。
学園内では爵位は問わず、平等扱いという他国でよくあったしきたりも排除され、学園内であっても社交界と同じ振る舞いを、と決められた。
リウスはあまり武術は得意でなく、騎士職には就けなさそうだったが、幸いにも文官として勤めるには向いていた。
セレスも騎士として危ない目にあうよりも、給与が安くても文官の方がいいと言ってくれていた。
23
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
王子様と朝チュンしたら……
梅丸
恋愛
大変! 目が覚めたら隣に見知らぬ男性が! え? でも良く見たら何やらこの国の第三王子に似ている気がするのだが。そう言えば、昨日同僚のメリッサと酒盛り……ではなくて少々のお酒を嗜みながらお話をしていたことを思い出した。でも、途中から記憶がない。実は私はこの世界に転生してきた子爵令嬢である。そして、前世でも同じ間違いを起こしていたのだ。その時にも最初で最後の彼氏と付き合った切っ掛けは朝チュンだったのだ。しかも泥酔しての。学習しない私はそれをまた繰り返してしまったようだ。どうしましょう……この世界では処女信仰が厚いというのに!
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
つがいの皇帝に溺愛される皇女の至福
ゆきむらさり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
【完結】ドケチ少女が断罪後の悪役令嬢に転生したら、嫌われ令息に溺愛されました。
やまぐちこはる
恋愛
仁科李依紗は所謂守銭奴、金を殖やすのが何よりの楽しみ。
しかし大学一年の夏、工事現場で上から落ちてきた鉄板に当たり落命してしまう。
その事故は本当は男子学生の命を奪うものだったが、李依紗が躓いた弾みで学生を突き飛ばし、身代わりになってしまったのだ。
まだまだ寿命があったはずの李依紗は、その学生に自分の寿命を与えることになり、学生の代わりに異世界へ転生させられることになった。
異世界神は神世に現れた李依紗を見て手違いに驚くが今回は李依紗で手を打つしかない、いまさらどうにもならぬと、貴族令嬢の体を与えて転生させる。
それは李依紗の世界のとある小説を異世界神が面白がって現実化したもの。
李依紗も姉のお下がりで読んだことがある「帝国の気高き薔薇」という恋愛小説。
それは美しい子爵令嬢と王太子のラブストーリー。そして李依紗は、令嬢を虐めたと言われ、嫌われることになるありがちな悪役令嬢リイサ・サレンドラ公爵令嬢の体に入れ替わってしまったのだ。
===============================
最終話まで書き終え、予約投稿済です。年末年始は一日3〜4話、それ以外は毎日朝8時に更新です。
よろしくお願い致します。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
禁断の恋に落ちた帝領伯令嬢と皇帝陛下の運命
夜桜
恋愛
銀色に輝く美しい城の中。
そこは帝国の城内であり、皇帝陛下が住まう場所だ。
その中でも、一際美しく、華やかな部屋があった。そこは、帝領伯令嬢ステラの寝室である。ステラは、城内で過ごすことを特別に許可され、幸せな日々を送っていた。彼女は、美しい容姿と賢さで周囲の人々から尊敬を集めいた。
そんな彼女に婚約者ができた。
侯爵のカイルだ。
幸せな日々を送るはずだった。
しかし、ある日、ステラの人生は一変する。侯爵カイルからの婚約破棄の言葉を受け、ステラは心身共にボロボロになってしまった。
そんな彼女の前に、謎の青年『ローガン』が現れる。彼は、実は皇帝陛下だった。ステラは、彼の優しさと溺愛に救われ、生きる気力を取り戻す。しかし、城内にはステラに嫌がらせをしてくる意地悪皇女・カルラがいた。カルラの嫌がらせは、どんどんエスカレートしていき、ステラは限界に達する。
それでも、ステラは自分の強さと勇気を見つけ、カルラと戦う決意をする。そして、皇帝陛下の溺愛と寵愛を受け、成長していく。
これは、彼女が苦境を乗り越え最愛の人と幸せになるまでの物語である。
【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。
みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。
【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない
千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。
公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。
そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。
その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。
「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」
と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。
だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる