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セレスティーナ7歳②

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 目が覚めたら、やっぱりピンク色の天蓋が目に映った。

 あれ?さっきのは夢じゃなかったの?

 でも、手を握ってくれていた女性の姿は見えなくて、部屋には私ひとりみたいだった。

 重たかった体は、薬湯が効いたのか思ったほど辛くなくて、モソモソとベッドから起き上がる。

 部屋は白を基調とした、とても可愛らしい感じだった。

 ドレッサーもテーブルも白で、ソファーは淡いピンク。

 今は引かれたままのカーテンは白のレースとローズピンクだし、フリルの付いたクッションも白とピンク。

 ものすごく、大きなベッドのシーツは真っ白で。
 天蓋も素敵だし、コパー子爵夫人であるおば様はとてもセンスがいいのね。

 それとも、その・・・私とリウスの・・・夫婦の寝室というやつかしら?

 きっとそうだわ。
子爵夫人の部屋にしては、ベッドが大きすぎだもの。

 着せられてる夜着もレースたっぷりでお洒落・・・

 とそこで初めて、異変に気付いた。

 ううん。本当はさっきの時もおかしいと思ってた。

 でも、そんなことがあるわけないからって、目を逸らしてただけ。

 レースとフリルたっぷりの真っ白な夜着を着ている体は、どう見ても十五歳のものとは見えなくて、小さな子供のそれだった。

 真っ白な小さな手。
それに、夜着にかかっている髪が、さっきの女性と同じ紫色だった。

 私の髪はピンク色なのに。

 カメリア男爵家の長女である、私セレス・カメリアは十五歳で、半年後の卒業と共に、コパー子爵嫡男のリウスと結婚するのよ。

 リウスが私によく似合うと言ってくれた髪は、瞳と同じピンク色のはず。

 そうよ。
それにあの女性は私のことを「セレ」と呼んでいたわ。

 この少女は、セレという名なの?
どうして、私はこの少女の体に宿っているの?

 違うと、まだ夢を見ているのだと思いたくて、ベッドからおりようとした。

 鏡を見たら・・・
きっともとのセレスの姿のはず。

 あの女性みたいに、とびきりの美人じゃなかったけど、婚約者のリウスが可愛いと言ってくれた、セレス・カメリアの姿のはずよ。

 あと、数ヶ月でリウスのお嫁さんになるの。
 うちもコパー子爵家も貧乏だから、ウェディングドレスは母様のを手直しすることにした。

 リウスは作ればいいって言ってくれたけど、一度しか着ないんだもの。勿体ないからって断ったのよ。

 大丈夫。
元のセレスの姿のはず。

 ベッドからおりようとしたけど、自分が思っていたより体は小さかったようで・・・

 私は、ベッドから転げ落ちた。

 床にフカフカの絨毯が敷かれていたから痛くはなかった。
 ヨタヨタと立ち上がると、ドレッサーの椅子によじ登る。

 その鏡には・・・
紫色の髪と瞳をした、見知らぬ幼い少女が戸惑った表情で映っていた。

 



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