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セレスティーナ7歳①
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体が怠い。頭が重い。
どうしたんだろう?風邪でもひいたかな。
リウスに心配かけてしまう。
「ん・・・」
ん!と力を入れて重い瞼を上げると、淡いピンク色の天蓋が見えた。
え?天蓋?
私の部屋のベッドに、天蓋なんて付いてない。
おば様の部屋には入ったことがないから、もしかしてコパー子爵家なのかしら?
起きあがろうとして、私の右手を両手で握り、椅子に座ったまま眠っている女性に気が付いた。
二十代半ばくらいだろうか。
紫色の艶やかな髪をした、とても綺麗な女性だ。
着ているドレスも見るからに高級そうで、でも派手ではなく品が良い。
だが、見覚えがない。
コパー子爵家の親戚筋だろうか?
でも、その見知らぬ女性が何故自分の手を握っているのか。
「・・・ぅん、セレ?目が覚めたの?」
「え、えと、あの・・・」
私が動いたせいか、目覚めた女性が驚いたような、それでいてホッとしたような声を上げた。
何と答えるべきか、とりあえずどなたなのか聞こうと声を出して、その声の高さに戸惑う。
え?どうして?
声がまるで子供のような・・・
聞き慣れない自分の声に戸惑って、ふと女性が握ってくれている手が視界に入った。
綺麗に手入れされた手に握られているのは、真っ白な、小さな手。
え?どうしてこんなに小さいの?
まるで子供の手みたい・・・
「セレ?まだ苦しい?」
それにどうして、知らない女性から「セレ」だなんて、愛称で呼ばれているの?
優しく私の額に細い指が触れて、汗で貼り付いていた髪を撫でてくれる。
小さな子供に戻ったみたいで、甘やかしてくれるその手に、思わず笑みが浮かんでしまう。
幼い頃、こんなふうに母様に看病されたことがある。
うちは貧乏男爵家だったけど家族の仲はよくて、熱を出したら母様が看病してくれた。
「母様・・・」
私の、歳の離れた姉といってもおかしくないような女性に、母様を重ねてしまう。
これでは本当に小さな子供みたい。
もうすぐリウスと結婚して、コパー子爵夫人になるというのに。
「セレ、お薬を飲んでもう少し眠りましょうね」
枕元にあった吸い飲みを口元に運ばれ、素直に口を開いた。
苦い薬湯に顔を歪ませる。
薬湯なんて随分飲んでいないから、思ってたより苦く感じる。
コップに三分の一程度の量を飲んだところで、女性は吸い飲みを枕元へと戻した。
「苦かったのに頑張ったわね、セレ。はい、ご褒美よ」
口元に運ばれたのは、大きな粒の葡萄。
甘い果汁が、薬湯の苦味を忘れさせてくれる。
薬湯を飲んでご褒美に果物をもらうなんて、本当に子供の頃みたい。
もしかして夢を見ているのかしら?
夢の中で眠るなんて変な感じだと思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。
どうしたんだろう?風邪でもひいたかな。
リウスに心配かけてしまう。
「ん・・・」
ん!と力を入れて重い瞼を上げると、淡いピンク色の天蓋が見えた。
え?天蓋?
私の部屋のベッドに、天蓋なんて付いてない。
おば様の部屋には入ったことがないから、もしかしてコパー子爵家なのかしら?
起きあがろうとして、私の右手を両手で握り、椅子に座ったまま眠っている女性に気が付いた。
二十代半ばくらいだろうか。
紫色の艶やかな髪をした、とても綺麗な女性だ。
着ているドレスも見るからに高級そうで、でも派手ではなく品が良い。
だが、見覚えがない。
コパー子爵家の親戚筋だろうか?
でも、その見知らぬ女性が何故自分の手を握っているのか。
「・・・ぅん、セレ?目が覚めたの?」
「え、えと、あの・・・」
私が動いたせいか、目覚めた女性が驚いたような、それでいてホッとしたような声を上げた。
何と答えるべきか、とりあえずどなたなのか聞こうと声を出して、その声の高さに戸惑う。
え?どうして?
声がまるで子供のような・・・
聞き慣れない自分の声に戸惑って、ふと女性が握ってくれている手が視界に入った。
綺麗に手入れされた手に握られているのは、真っ白な、小さな手。
え?どうしてこんなに小さいの?
まるで子供の手みたい・・・
「セレ?まだ苦しい?」
それにどうして、知らない女性から「セレ」だなんて、愛称で呼ばれているの?
優しく私の額に細い指が触れて、汗で貼り付いていた髪を撫でてくれる。
小さな子供に戻ったみたいで、甘やかしてくれるその手に、思わず笑みが浮かんでしまう。
幼い頃、こんなふうに母様に看病されたことがある。
うちは貧乏男爵家だったけど家族の仲はよくて、熱を出したら母様が看病してくれた。
「母様・・・」
私の、歳の離れた姉といってもおかしくないような女性に、母様を重ねてしまう。
これでは本当に小さな子供みたい。
もうすぐリウスと結婚して、コパー子爵夫人になるというのに。
「セレ、お薬を飲んでもう少し眠りましょうね」
枕元にあった吸い飲みを口元に運ばれ、素直に口を開いた。
苦い薬湯に顔を歪ませる。
薬湯なんて随分飲んでいないから、思ってたより苦く感じる。
コップに三分の一程度の量を飲んだところで、女性は吸い飲みを枕元へと戻した。
「苦かったのに頑張ったわね、セレ。はい、ご褒美よ」
口元に運ばれたのは、大きな粒の葡萄。
甘い果汁が、薬湯の苦味を忘れさせてくれる。
薬湯を飲んでご褒美に果物をもらうなんて、本当に子供の頃みたい。
もしかして夢を見ているのかしら?
夢の中で眠るなんて変な感じだと思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。
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