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転生王女の新婚旅行4《おまけ》
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私たちは、呉服店店主のおすすめで、早い安い美味いという3拍子揃った定食屋に訪れていた。
魔王陛下に定食屋は、さすがに抵抗があって、私としてはお寿司屋とかにしようと思ったんだけど、ローゼが食べたい店にしようと言われて、それならということになった。
私もお寿司とか食べたいけど、それは夜に宿で食べれそうな気がして、それなら宿では出そうにない物を食べたかったのだ。
シンバルトは海に面しているから、お魚料理がとっても多いのよね。ここは、セフィロスやベルメゾンでは食べられないお魚1択でしょう。
定食屋は、大衆食堂って感じで、地元の人と、観光客でごった返していた。やっぱりこんなところで、魔王陛下に食事させるのは・・・とアルフレッド様を見たけど、アルフレッド様は物珍しそうに辺りを見渡している。
「アルフレッド様?」
「ああ、いや、みんな幸せそうだと思ったんだ。ベルメゾンもこうあればいいと」
「ベルメゾンの皆さんも幸せですわ。だって、アルフレッド様の元で暮らしているんですもの」
こんな優しい魔王の元で暮らせて、幸せでないわけがない。
もちろん、ひねくれた考えの人もいるだろうけど、そんなのどこにだって居る。
王宮の人たちを見ていれば分かる。みんな、アルフレッド様が好きなんだ。
「ローゼも幸せか?」
「もちろんですわ」
「おやおや、熱々だね。新婚さんかな?ほら、お待たせさん」
冷やかしの言葉とともに、私とアルフレッド様の前に料理が運ばれてきた。
私は頬を赤らめながら、礼を言う。
「あ、ありがとうございます」
「熱いからね、気をつけて食べな」
気の良さそうな女将さんは、そう言うと可愛い嫁さんだね、とアルフレッド様に笑いかけて、立ち去って行った。
「・・・さ、さあ、アルフレッド様。熱いうちにいただきましょう?」
「ローゼ、真っ赤だ。可愛い」
「しょ、食事の時にそんなことを言うのはマナー違反ですわ」
「ふふっ。さていただこうか。で、これは何と言ったか」
アルフレッド様は、目の前の皿と箸を見比べる。明らかに観光客然としている見かけの私のところには、フォークが置かれていたけど、アルフレッド様は黒髪だからシンバルトの民と思われたのかもしれない。置かれていたのは箸だ。
「それは天ぷらというものです。アルフレッド様はお箸は使えないでしょう?フォークでお食べ下さいませ」
私は手元のフォークと、アルフレッド様の箸を入れ替える。ナイフはないようだ。行儀は悪いけど天ぷらだしいいわよね。
ちなみに、私はアジフライである。麻里の記憶のある私は、お箸はもちろん使える。
しかし、どうやって食べればいいのか分からないのか、アルフレッド様は固まったままだ。せっかく熱々なのに、冷めたらもったいない。
私は、箸で海老の天ぷらを摘むと、アルフレッド様の口元へと差し出した。
「アルフレッド様、どうぞ?」
「・・・っ!」
一瞬、息を詰めたアルフレッド様は、次の瞬間、満面の笑みで天ぷらを口にした。
私だって、恥ずかしいけど、なんていうか、旅先だと普段出来ないことも出来ちゃうのよ。
「くっ・・・熱い!」
「大丈夫ですか?」
「ふぅ。ああ、大丈夫だ。美味いな」
アルフレッド様の口に合ったようで良かった。
私も、自分のアジフライを口に運ぶ。本当はガブっていきたいけど、王女であり、王妃となった私としては、さすがにそれはちょっと、行儀が悪すぎる。
フォークで黙々と天ぷらを食べていたアルフレッド様は、私がまだ半分も食べていないのに、完食してしまったようだ。
「まぁ。もう食べてしまわれたのですね。もう少し何か召し上がりますか?」
「いや、もう必要ない」
そう言うものの、私のお皿へと視線は向いたままだ。
どうやら、アジフライに興味があるようだ。私は手を付けていないフライをアルフレッド様のお皿へと移した。
「私はもうお腹がいっぱいですから、私の食べかけで申し訳ありませんけど、食べて下さいますか?」
「いや、ローゼ・・・」
「美味しいですわよ?でもまだ熱いですから、気をつけて下さいませね」
そう言うと、私はさっさと自分の食事へと戻った。
よほど気になっていたのか、少しためらったあと、アルフレッド様はアジフライを食べ始める。
美味しそうに食べるアルフレッド様を横目で見て、思わず笑みが浮かぶ。
さっきの呉服店では、私が楽しい時を過ごさせてもらった。
安い定食屋だけど、アルフレッド様が喜んでくれているなら、とても嬉しい。
私たちは美味しいご飯を食べながら、にっこりと微笑み合うのだった。
魔王陛下に定食屋は、さすがに抵抗があって、私としてはお寿司屋とかにしようと思ったんだけど、ローゼが食べたい店にしようと言われて、それならということになった。
私もお寿司とか食べたいけど、それは夜に宿で食べれそうな気がして、それなら宿では出そうにない物を食べたかったのだ。
シンバルトは海に面しているから、お魚料理がとっても多いのよね。ここは、セフィロスやベルメゾンでは食べられないお魚1択でしょう。
定食屋は、大衆食堂って感じで、地元の人と、観光客でごった返していた。やっぱりこんなところで、魔王陛下に食事させるのは・・・とアルフレッド様を見たけど、アルフレッド様は物珍しそうに辺りを見渡している。
「アルフレッド様?」
「ああ、いや、みんな幸せそうだと思ったんだ。ベルメゾンもこうあればいいと」
「ベルメゾンの皆さんも幸せですわ。だって、アルフレッド様の元で暮らしているんですもの」
こんな優しい魔王の元で暮らせて、幸せでないわけがない。
もちろん、ひねくれた考えの人もいるだろうけど、そんなのどこにだって居る。
王宮の人たちを見ていれば分かる。みんな、アルフレッド様が好きなんだ。
「ローゼも幸せか?」
「もちろんですわ」
「おやおや、熱々だね。新婚さんかな?ほら、お待たせさん」
冷やかしの言葉とともに、私とアルフレッド様の前に料理が運ばれてきた。
私は頬を赤らめながら、礼を言う。
「あ、ありがとうございます」
「熱いからね、気をつけて食べな」
気の良さそうな女将さんは、そう言うと可愛い嫁さんだね、とアルフレッド様に笑いかけて、立ち去って行った。
「・・・さ、さあ、アルフレッド様。熱いうちにいただきましょう?」
「ローゼ、真っ赤だ。可愛い」
「しょ、食事の時にそんなことを言うのはマナー違反ですわ」
「ふふっ。さていただこうか。で、これは何と言ったか」
アルフレッド様は、目の前の皿と箸を見比べる。明らかに観光客然としている見かけの私のところには、フォークが置かれていたけど、アルフレッド様は黒髪だからシンバルトの民と思われたのかもしれない。置かれていたのは箸だ。
「それは天ぷらというものです。アルフレッド様はお箸は使えないでしょう?フォークでお食べ下さいませ」
私は手元のフォークと、アルフレッド様の箸を入れ替える。ナイフはないようだ。行儀は悪いけど天ぷらだしいいわよね。
ちなみに、私はアジフライである。麻里の記憶のある私は、お箸はもちろん使える。
しかし、どうやって食べればいいのか分からないのか、アルフレッド様は固まったままだ。せっかく熱々なのに、冷めたらもったいない。
私は、箸で海老の天ぷらを摘むと、アルフレッド様の口元へと差し出した。
「アルフレッド様、どうぞ?」
「・・・っ!」
一瞬、息を詰めたアルフレッド様は、次の瞬間、満面の笑みで天ぷらを口にした。
私だって、恥ずかしいけど、なんていうか、旅先だと普段出来ないことも出来ちゃうのよ。
「くっ・・・熱い!」
「大丈夫ですか?」
「ふぅ。ああ、大丈夫だ。美味いな」
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私も、自分のアジフライを口に運ぶ。本当はガブっていきたいけど、王女であり、王妃となった私としては、さすがにそれはちょっと、行儀が悪すぎる。
フォークで黙々と天ぷらを食べていたアルフレッド様は、私がまだ半分も食べていないのに、完食してしまったようだ。
「まぁ。もう食べてしまわれたのですね。もう少し何か召し上がりますか?」
「いや、もう必要ない」
そう言うものの、私のお皿へと視線は向いたままだ。
どうやら、アジフライに興味があるようだ。私は手を付けていないフライをアルフレッド様のお皿へと移した。
「私はもうお腹がいっぱいですから、私の食べかけで申し訳ありませんけど、食べて下さいますか?」
「いや、ローゼ・・・」
「美味しいですわよ?でもまだ熱いですから、気をつけて下さいませね」
そう言うと、私はさっさと自分の食事へと戻った。
よほど気になっていたのか、少しためらったあと、アルフレッド様はアジフライを食べ始める。
美味しそうに食べるアルフレッド様を横目で見て、思わず笑みが浮かぶ。
さっきの呉服店では、私が楽しい時を過ごさせてもらった。
安い定食屋だけど、アルフレッド様が喜んでくれているなら、とても嬉しい。
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