37 / 45
転生王女の思い出《おまけ》
しおりを挟む
「アルフレッド様のばかぁ」
ビビアン様の胸で、私はグズグズと子供のように泣いていた。
結婚して半年ー
ようやく夫婦の睦言にも慣れ、魔王妃としての公務にも頑張っていたこの日、私はアルフレッド様のせいで自室を飛び出すこととなった。
ビビアン様は優しく私の髪を撫でてくれる。
「ぐすん・・・ビビアン様、ごめんなさい」
「ローズマリー様が謝ることなどありませんわ。全く、陛下は私の可愛いローズマリー様を泣かせるなんて!」
「私が子供すぎるのでしょうか・・・でも、あれは、私が初めてアルフレッド様にいただいたものでしたのに」
そうー
今回の私の涙の原因になったのは、小さなポプリ。
それは、私とアルフレッド様が知り合った4年前のこと。
「綺麗な薔薇・・・アルフレッド様、ありがとうございます」
アルフレッド魔王陛下との婚約が結ばれた翌日、アルフレッド様は私に真っ白な薔薇を1本贈ってくれた。
1週間後には、3本の赤い薔薇を。そして今日、99本の赤い薔薇が私の手にある。
白い薔薇の花言葉は、『私はあなたにふさわしい』1本だから、『一目惚れ』だ。
赤い薔薇は『あなたを愛しています』
3本は『愛してる』で99本は『ずっと一緒にいよう』だ。
こんなの、麻里だった29年間でも貰ったことがない。
まさか、魔王様が花言葉に精通してて、しかもこんなマメな人だとは思わなかった。
「喜んでもらえてよかった」
アルフレッド様は、蕩けるような笑顔で私を見つめてくれる。
ゔゔっ、美形の笑顔って破壊力が半端ないわ。
「いつも私ばっかり。アルフレッド様にも何かお贈りしたいです」
でも、男の人って何が嬉しいんだろう?ああっ、麻里の時にもっと経験が有ったらこんなに困らなかったのに。
「愛しいローゼ。その気持ちだけで十分だ」
「私、殿方に何か差し上げたことがないので、よくわからないのです。アルフレッド様、何か私にして欲しいことなどありませんか?」
「・・・何でも構わないの?」
「ええ。私に出来ることでしたら」
少しだけ躊躇った後、アルフレッド様が私に望んだのは、膝枕だった。
何でもするって言ったからするけどっ!は、恥ずかしい。
「ローゼ、真っ赤だ」
「ゔゔっ、恥ずかしいのです。こんなことしたことない・・・」
「ローゼの『初めて』が僕で嬉しい」
アルフレッド様の言葉に、私はさらに顔を赤くした。もう、なんていうか、火が出そうである。
私は、その日貰った花束と、4本の薔薇を、侍女に教えてもらってポプリにすることにした。
枯れてしまうのは仕方のないことだけど、どうしても手元に置いておきたかった私に、侍女がポプリにしてはと教えてくれたのだ。
「そのポプリは私の宝物なのです。結婚の際にいただいた、108本の薔薇もポプリにしようと、置いてありましたのに・・・」
「それを、陛下が枯れてるからと捨てられたんですね」
そうなのだ。包んでいた袋が汚れていたために、机の上に広げて置いてあった花びらと、108本のドライフラワーは私が戻った時にはすでに捨てられていたのだ。
男の人だから、そういうことに疎くても仕方がない。仕方がないが、薔薇の花言葉にも精通している人が何してくれてるのって言いたい。
「ずっと大切にして来ましたのに・・・」
悲しくて悲しくて、捨てたと聞いた途端、部屋を飛び出した。
「ここで少しお眠りになって下さいませ。目がウサギのように真っ赤になっていますわ」
「ビビアン様・・・」
泣き疲れて眠るなんて、本当に子供すぎる。だけど私は、ビビアン様に髪を撫でられながら、ソファーの上でその目を閉じた。
誰かが目元を撫でる感触に、意識が浮上する。
本当に眠ってしまったようだ。ひんやりとした指先に、記憶の中の優しい指先を思い出す。
「アルフレッド様・・・」
「ローゼ、起きた?」
その声に目を開けると、私の頭を膝に乗せたアルフレッド様が、私を見下ろしていた。
「ああ、まだ目が赤い。ずいぶんと泣かせてしまった。どうか許して欲しい」
「・・・ぐずっ・・」
「愛しいローゼ、泣かないでくれ。君に泣かれると僕は、胸が張り裂けそうになる。どうか泣かないでくれ」
アルフレッド様は私を抱き起こすと、ポロポロと涙をこぼす私の頬に何度も口付ける。
「ローゼ、代わりにはならないが、君に薔薇を贈るから、だから、どうか泣き止んでくれないか」
「もう・・・捨てない?」
「ああ、もちろんだ。もう君を悲しませたりしない」
後日ー
アルフレッド様は、約束どおり薔薇の花束を贈ってくれた。
999本の真っ赤な薔薇を。
花言葉は『何度生まれ変わってもあなたを愛す』
ビビアン様の胸で、私はグズグズと子供のように泣いていた。
結婚して半年ー
ようやく夫婦の睦言にも慣れ、魔王妃としての公務にも頑張っていたこの日、私はアルフレッド様のせいで自室を飛び出すこととなった。
ビビアン様は優しく私の髪を撫でてくれる。
「ぐすん・・・ビビアン様、ごめんなさい」
「ローズマリー様が謝ることなどありませんわ。全く、陛下は私の可愛いローズマリー様を泣かせるなんて!」
「私が子供すぎるのでしょうか・・・でも、あれは、私が初めてアルフレッド様にいただいたものでしたのに」
そうー
今回の私の涙の原因になったのは、小さなポプリ。
それは、私とアルフレッド様が知り合った4年前のこと。
「綺麗な薔薇・・・アルフレッド様、ありがとうございます」
アルフレッド魔王陛下との婚約が結ばれた翌日、アルフレッド様は私に真っ白な薔薇を1本贈ってくれた。
1週間後には、3本の赤い薔薇を。そして今日、99本の赤い薔薇が私の手にある。
白い薔薇の花言葉は、『私はあなたにふさわしい』1本だから、『一目惚れ』だ。
赤い薔薇は『あなたを愛しています』
3本は『愛してる』で99本は『ずっと一緒にいよう』だ。
こんなの、麻里だった29年間でも貰ったことがない。
まさか、魔王様が花言葉に精通してて、しかもこんなマメな人だとは思わなかった。
「喜んでもらえてよかった」
アルフレッド様は、蕩けるような笑顔で私を見つめてくれる。
ゔゔっ、美形の笑顔って破壊力が半端ないわ。
「いつも私ばっかり。アルフレッド様にも何かお贈りしたいです」
でも、男の人って何が嬉しいんだろう?ああっ、麻里の時にもっと経験が有ったらこんなに困らなかったのに。
「愛しいローゼ。その気持ちだけで十分だ」
「私、殿方に何か差し上げたことがないので、よくわからないのです。アルフレッド様、何か私にして欲しいことなどありませんか?」
「・・・何でも構わないの?」
「ええ。私に出来ることでしたら」
少しだけ躊躇った後、アルフレッド様が私に望んだのは、膝枕だった。
何でもするって言ったからするけどっ!は、恥ずかしい。
「ローゼ、真っ赤だ」
「ゔゔっ、恥ずかしいのです。こんなことしたことない・・・」
「ローゼの『初めて』が僕で嬉しい」
アルフレッド様の言葉に、私はさらに顔を赤くした。もう、なんていうか、火が出そうである。
私は、その日貰った花束と、4本の薔薇を、侍女に教えてもらってポプリにすることにした。
枯れてしまうのは仕方のないことだけど、どうしても手元に置いておきたかった私に、侍女がポプリにしてはと教えてくれたのだ。
「そのポプリは私の宝物なのです。結婚の際にいただいた、108本の薔薇もポプリにしようと、置いてありましたのに・・・」
「それを、陛下が枯れてるからと捨てられたんですね」
そうなのだ。包んでいた袋が汚れていたために、机の上に広げて置いてあった花びらと、108本のドライフラワーは私が戻った時にはすでに捨てられていたのだ。
男の人だから、そういうことに疎くても仕方がない。仕方がないが、薔薇の花言葉にも精通している人が何してくれてるのって言いたい。
「ずっと大切にして来ましたのに・・・」
悲しくて悲しくて、捨てたと聞いた途端、部屋を飛び出した。
「ここで少しお眠りになって下さいませ。目がウサギのように真っ赤になっていますわ」
「ビビアン様・・・」
泣き疲れて眠るなんて、本当に子供すぎる。だけど私は、ビビアン様に髪を撫でられながら、ソファーの上でその目を閉じた。
誰かが目元を撫でる感触に、意識が浮上する。
本当に眠ってしまったようだ。ひんやりとした指先に、記憶の中の優しい指先を思い出す。
「アルフレッド様・・・」
「ローゼ、起きた?」
その声に目を開けると、私の頭を膝に乗せたアルフレッド様が、私を見下ろしていた。
「ああ、まだ目が赤い。ずいぶんと泣かせてしまった。どうか許して欲しい」
「・・・ぐずっ・・」
「愛しいローゼ、泣かないでくれ。君に泣かれると僕は、胸が張り裂けそうになる。どうか泣かないでくれ」
アルフレッド様は私を抱き起こすと、ポロポロと涙をこぼす私の頬に何度も口付ける。
「ローゼ、代わりにはならないが、君に薔薇を贈るから、だから、どうか泣き止んでくれないか」
「もう・・・捨てない?」
「ああ、もちろんだ。もう君を悲しませたりしない」
後日ー
アルフレッド様は、約束どおり薔薇の花束を贈ってくれた。
999本の真っ赤な薔薇を。
花言葉は『何度生まれ変わってもあなたを愛す』
23
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる