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転生王女の結婚式
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魔国クリムゾンの王都に、鐘の音が鳴り響く。
私は、扉の前で父様の腕に手をかけた状態で、その時を待っている。
純白のドレスは銀糸で細かな刺繍が施され、裾や胸元には、アルフレッド様の瞳の色の、深紅の石が彩りを添えている。
左手に持ったブーケは、あの日見た真っ白な花。
私は今日、アルフレッド様の妻になる。
「父様・・・短い間でしたが、お世話になりました」
たった4年だ。ローズマリーとしてこの世界に転生し、父様の娘として過ごしたのは、たった4年ー
だけど、父様が『麻里』を認めてくれたから、私はこの世界で生きてこれたのだ。
「幸せになれ。『あの子』の分まで」
「転生先が父様の娘でよかった、です」
「嫁に行っても、娘であることに変わりはない。時々は顔を見せに来い」
もう少し、この人の娘でいたかった。そう思ってしんみりしたけど、そう、結婚したって娘であることに変わりはないんだ。
いつだって会いに行ける。
私は、小さくうなづいた。
祭壇の前に立つアルフレッド様の元へ、父様とゆっくりと近づいて行く。
アルフレッド様は、漆黒の礼服に身を包んでいる。
前世の記憶だと、黒衣なんてお葬式を彷彿させるけど、魔国クリムゾンでは純白にこだわりはないそうだ。
まぁ、確かに、白のタキシード姿の魔王様というのも違和感がある。アルフレッド様的には、何を着ても似合うと思うけど。
アルフレッド様が、父様から私の手を受け取る。
「娘を、泣かせたら許さない」
父様の言葉に、思わず振り返った。
優しく私を見つめる父様の瞳。
私はアルフレッド様の手から飛び出すと、父様に抱きついた。
「父様、父様・・・」
「幼子のように泣くな。お前は魔王妃になるのだろう」
父様の手が、私の頬をそっと撫でた。
そして、そのまま抱きしめてくれる。
「さあ、旦那様のもとへ行け。父親にも嫉妬するほど溺愛してくれる、お前の最愛の人のもとへ」
「はい。父様・・・」
涙に濡れた顔のまま、アルフレッド様を振り返ると、その両手を広げてくれる。
私は、その腕の中へと飛び込んだ。
「愛しいローゼ、僕の花嫁」
「愛しいアルフレッド様。私の旦那様」
私が同じ言葉を繰り返して言うと、アルフレッド様はその目を一瞬見開いて、そしてとろけるように微笑った。
私は、扉の前で父様の腕に手をかけた状態で、その時を待っている。
純白のドレスは銀糸で細かな刺繍が施され、裾や胸元には、アルフレッド様の瞳の色の、深紅の石が彩りを添えている。
左手に持ったブーケは、あの日見た真っ白な花。
私は今日、アルフレッド様の妻になる。
「父様・・・短い間でしたが、お世話になりました」
たった4年だ。ローズマリーとしてこの世界に転生し、父様の娘として過ごしたのは、たった4年ー
だけど、父様が『麻里』を認めてくれたから、私はこの世界で生きてこれたのだ。
「幸せになれ。『あの子』の分まで」
「転生先が父様の娘でよかった、です」
「嫁に行っても、娘であることに変わりはない。時々は顔を見せに来い」
もう少し、この人の娘でいたかった。そう思ってしんみりしたけど、そう、結婚したって娘であることに変わりはないんだ。
いつだって会いに行ける。
私は、小さくうなづいた。
祭壇の前に立つアルフレッド様の元へ、父様とゆっくりと近づいて行く。
アルフレッド様は、漆黒の礼服に身を包んでいる。
前世の記憶だと、黒衣なんてお葬式を彷彿させるけど、魔国クリムゾンでは純白にこだわりはないそうだ。
まぁ、確かに、白のタキシード姿の魔王様というのも違和感がある。アルフレッド様的には、何を着ても似合うと思うけど。
アルフレッド様が、父様から私の手を受け取る。
「娘を、泣かせたら許さない」
父様の言葉に、思わず振り返った。
優しく私を見つめる父様の瞳。
私はアルフレッド様の手から飛び出すと、父様に抱きついた。
「父様、父様・・・」
「幼子のように泣くな。お前は魔王妃になるのだろう」
父様の手が、私の頬をそっと撫でた。
そして、そのまま抱きしめてくれる。
「さあ、旦那様のもとへ行け。父親にも嫉妬するほど溺愛してくれる、お前の最愛の人のもとへ」
「はい。父様・・・」
涙に濡れた顔のまま、アルフレッド様を振り返ると、その両手を広げてくれる。
私は、その腕の中へと飛び込んだ。
「愛しいローゼ、僕の花嫁」
「愛しいアルフレッド様。私の旦那様」
私が同じ言葉を繰り返して言うと、アルフレッド様はその目を一瞬見開いて、そしてとろけるように微笑った。
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