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転生王女の襲撃2
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ローゼの上に乗った女が視界に入る。その指が、ローゼの細い首に絡んでいるのを認識した途端、脳が沸騰した。
ローゼの上から女を吹き飛ばすと、女は悲鳴も上げれないまま地面をのたうち回った。
「僕に汚された花嫁を娶るのは諦めるんだね、魔王」
ベッドの上にいた男が、ローゼに近づこうとするのを弾き飛ばした。
男の言っていることを理解した頭が、怒りと嫉妬に染まっていく。
人の姿の輪郭がぼやけ、黒い鱗が覆い始める。パキパキと何かが剥がれ落ちるような音を立てながら、その姿が変わり始めた。
「フレイ」
僕の呼びかけに、転移してきたフレイは目を見開いた。すぐさまローズマリーに駆け寄る。そのまま、ローズマリーに防御魔法をかけた。
フレイは、僕が普段見せない最終形態へと変わっていくのを、うっとりと見つめる。僕は、天空に浮かんだフレイと、その腕に抱かれたローゼから、目の前の男と女へと視線を向けた。
屋敷は、巨大な竜へと姿を変えた僕にによって瓦礫と化した。
苦痛の声も上げれないほど、原形を留めていない男と、吹き飛ばした際に両手が千切れた女ー
ローゼを殺めようとした腕など必要ないだろう。
ローゼを汚したというその男は、永遠の苦痛を味合わせてやろう。ローゼに触れた手は必要ない。ローゼを見た目は潰してやろう。ローゼの声を聞いた耳は引きちぎろう。
自分の中にある残虐な魔王としての感情が、醜く暴れまわるのを感じた。
人型でなくなれば、本能のまま殺戮を繰り返す『化け物』でしかない。
「ある、ふれっど様?」
掠れるような声が聞こえて、ギョロリと深紅の竜の瞳をそちらに向ける。
目の前の醜い塊りは、ローゼの目に触れる前に、王宮の地下牢へと転移させた。容易く死なせたりはしない。
「アルフレッド様」
屋敷を崩壊させるほどの巨大な姿の僕に、ローゼは恐怖を感じた様子もなく、フレイの腕から僕へと腕を伸ばしてくる。
『ローゼ』
「アルフレッド様、助けに来て下さりありがとうございます」
『ローゼ、君が他の誰かに汚されたとしても、僕は君しか花嫁にしたくない』
魔王の花嫁が純潔でなければならないというのなら、魔王でなくなってもかまわない。
ローズマリーは普通の人間だ。人間は、自分の常識から外れた存在を恐怖するのが当然だ。
だけど、ローゼは僕に手を伸ばしてくれた。僕を見て、恐怖や嫌悪でなく、いつもの変わりないローゼでいてくれた。
そんな唯一無二の存在を失うくらいなら、大切な配下も、大切な国も、大切な国民も、全て捨ててもいい。
「なんの話ですの?」
『君が、あの男に、その・・・け、汚されたと・・・』
「!!」
僕の言葉に、ローゼが目を見開く。
『ローゼ・・・』
「アルフレッド様、元に戻って下さいませ」
『え・・・』
「戻って下さいませ!」
普段とは違う、固いローゼの声に、僕は戸惑いながらも人型へと戻っていく。
地上にローゼを下ろしたフレイは、人型に戻った僕が全裸なのをわかっているので、瓦礫の中から、手頃なシーツを引っ張り出している。
完全に人型に戻った僕の肌を、ローゼの視界から隠すように、僕にシーツを纏わせると、フレイは深々と頭を下げた。
「先に戻っております」
転移でフレイが姿を消すと、埃っぽいシーツに包まれた僕と、何故か不機嫌そうなローゼだけが瓦礫の山の前に残された。
ツカツカと僕に近づいてきたローゼが、両手で僕の頬をペチンと叩く。
「ローゼ」
「私は、アルフレッド様の妻になるのです。みんなに祝福してもらって、魔王妃になるのです。だから、必死で抵抗しましたのに、どうしてアルフレッド様は・・・」
頬を叩かれた僕でなく、叩いたローゼがポロポロと涙を零す。
その言葉の真意に、僕はローゼを抱き寄せる。
「愛しいローゼ。君に触れる男など許せない」
「私に触れることができるのは、旦那様だけです。その・・・き、キスも肌に触れるのも、アルフレッド様だけですわ」
可愛らしいことを言う。せっかく守られた純潔を、ここで僕が散らしてしまうわけにはいかない。
こんな可愛いローゼに、口づけしたら、我慢できなくなりそうだ。
僕はローゼを抱き上げた。
「愛しいローゼ、帰ろう」
ローゼの上から女を吹き飛ばすと、女は悲鳴も上げれないまま地面をのたうち回った。
「僕に汚された花嫁を娶るのは諦めるんだね、魔王」
ベッドの上にいた男が、ローゼに近づこうとするのを弾き飛ばした。
男の言っていることを理解した頭が、怒りと嫉妬に染まっていく。
人の姿の輪郭がぼやけ、黒い鱗が覆い始める。パキパキと何かが剥がれ落ちるような音を立てながら、その姿が変わり始めた。
「フレイ」
僕の呼びかけに、転移してきたフレイは目を見開いた。すぐさまローズマリーに駆け寄る。そのまま、ローズマリーに防御魔法をかけた。
フレイは、僕が普段見せない最終形態へと変わっていくのを、うっとりと見つめる。僕は、天空に浮かんだフレイと、その腕に抱かれたローゼから、目の前の男と女へと視線を向けた。
屋敷は、巨大な竜へと姿を変えた僕にによって瓦礫と化した。
苦痛の声も上げれないほど、原形を留めていない男と、吹き飛ばした際に両手が千切れた女ー
ローゼを殺めようとした腕など必要ないだろう。
ローゼを汚したというその男は、永遠の苦痛を味合わせてやろう。ローゼに触れた手は必要ない。ローゼを見た目は潰してやろう。ローゼの声を聞いた耳は引きちぎろう。
自分の中にある残虐な魔王としての感情が、醜く暴れまわるのを感じた。
人型でなくなれば、本能のまま殺戮を繰り返す『化け物』でしかない。
「ある、ふれっど様?」
掠れるような声が聞こえて、ギョロリと深紅の竜の瞳をそちらに向ける。
目の前の醜い塊りは、ローゼの目に触れる前に、王宮の地下牢へと転移させた。容易く死なせたりはしない。
「アルフレッド様」
屋敷を崩壊させるほどの巨大な姿の僕に、ローゼは恐怖を感じた様子もなく、フレイの腕から僕へと腕を伸ばしてくる。
『ローゼ』
「アルフレッド様、助けに来て下さりありがとうございます」
『ローゼ、君が他の誰かに汚されたとしても、僕は君しか花嫁にしたくない』
魔王の花嫁が純潔でなければならないというのなら、魔王でなくなってもかまわない。
ローズマリーは普通の人間だ。人間は、自分の常識から外れた存在を恐怖するのが当然だ。
だけど、ローゼは僕に手を伸ばしてくれた。僕を見て、恐怖や嫌悪でなく、いつもの変わりないローゼでいてくれた。
そんな唯一無二の存在を失うくらいなら、大切な配下も、大切な国も、大切な国民も、全て捨ててもいい。
「なんの話ですの?」
『君が、あの男に、その・・・け、汚されたと・・・』
「!!」
僕の言葉に、ローゼが目を見開く。
『ローゼ・・・』
「アルフレッド様、元に戻って下さいませ」
『え・・・』
「戻って下さいませ!」
普段とは違う、固いローゼの声に、僕は戸惑いながらも人型へと戻っていく。
地上にローゼを下ろしたフレイは、人型に戻った僕が全裸なのをわかっているので、瓦礫の中から、手頃なシーツを引っ張り出している。
完全に人型に戻った僕の肌を、ローゼの視界から隠すように、僕にシーツを纏わせると、フレイは深々と頭を下げた。
「先に戻っております」
転移でフレイが姿を消すと、埃っぽいシーツに包まれた僕と、何故か不機嫌そうなローゼだけが瓦礫の山の前に残された。
ツカツカと僕に近づいてきたローゼが、両手で僕の頬をペチンと叩く。
「ローゼ」
「私は、アルフレッド様の妻になるのです。みんなに祝福してもらって、魔王妃になるのです。だから、必死で抵抗しましたのに、どうしてアルフレッド様は・・・」
頬を叩かれた僕でなく、叩いたローゼがポロポロと涙を零す。
その言葉の真意に、僕はローゼを抱き寄せる。
「愛しいローゼ。君に触れる男など許せない」
「私に触れることができるのは、旦那様だけです。その・・・き、キスも肌に触れるのも、アルフレッド様だけですわ」
可愛らしいことを言う。せっかく守られた純潔を、ここで僕が散らしてしまうわけにはいかない。
こんな可愛いローゼに、口づけしたら、我慢できなくなりそうだ。
僕はローゼを抱き上げた。
「愛しいローゼ、帰ろう」
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