魔王様は転生王女を溺愛したい

転生王女の嫌がらせ２

「フレイ様、ドレスのことありがとうございました」

　お茶会から戻ったローズマリー様は、魔王陛下の執務室で、私にお礼を言われた。
　本当につまらぬことをする奴らがいるものだ。

「いえ、お役に立てたのなら何よりです」

「ローゼ、だから貴族どもなど放っておけば良いんだ。愛しいローゼ、僕のそばにいてくれるだけで・・・」

「アルフレッド様。私は人形ではありませんわ。私は、魔王陛下の妻、魔国の魔王妃になるのです。貴族の令嬢程度を御せれないようでは先が思いやられますわ」

　ローズマリー様の言葉に、思わず満足気な笑みが漏れてしまった。

「我が君、なんと素晴らしい番様でしょうか」

「ローゼが素晴らしいのは分かっている」

　魔王陛下は、どうやら不満のようだが、ここは、姫君の言う通りだ。
　仮にも魔王妃となられる方が、貴族の小娘程度を御せれないようでは困る。
　そうでなくても、人間が魔王妃になるということで、不穏な空気が感じられるのだ。

　しかし、人間というものは、齢16歳でこんなにもしっかりとした考えを持つものなのか。
　16歳といえば、魔族ではヒヨッコもヒヨッコ。卵の殻をつけているようなものである。
　まぁ、だから紅茶をドレスに注ぐような、子供じみたことをする者がいたりするのだが。

　あとで、ビビアン公爵令嬢にも注意するよう伝えておこう。
　普段穏やかな魔王陛下の姿に、みんな忘れがちなようだが、魔族というものは実力世界なのだ。
　弱く優しいだけのものが上に立てる世界でないことを忘れてもらっては困る。

　もしも、寵姫に害なすものがあれば、陛下は全力を持ってそれを滅ぼすだろう。

　そして、魔国王宮に住うメイドや騎士たちも、あの姫君に陥落されているのだ。
　見た目だけでなく、人を惹きつけてやまない人間のようだ。

　魔王陛下の横に並んで遜色のない内面の持ち主ということを周囲も理解するべきだろう。

　私も、全力を持ってお守りさせていただく。今まで婚約者すら拒んでいた魔王陛下が、ようやく望んだお方なのだから。