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転生王女の叱責
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「カイルお兄様!」
ノックもせず、扉を大きく開いた私に、部屋にいたカイルお兄様と、一緒にいたルヒトお兄様が目を見開いた。
「ろ、ローゼ、どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃありません。いつまで婚姻を引き延ばすおつもりですか!」
私は、私を溺愛してくれるルヒトお兄様もカイルお兄様も好きだ。
2人も、それからエリザベスお姉様も父様も、私にとって大切な人である。
だけど、アルフレッド様に恋をした私は、ずっと宙ぶらりんで待たされている王女様の気持ちが分かるのだ。どれほど、切ない日々を送っているのか。
そう考えると、例え大好きな家族といえど、語調もキツくなるというものである。
「いつまでって・・・」
「お兄様は、共に未来を過ごす王女殿下のお気持ちをどうお考えなのですか?」
「ローゼ、カイルは別に・・・」
「ルヒトお兄様は黙っていて下さい」
カイルお兄様を擁護しようとするルヒトお兄様を、ピシャリと遮る。
私だって、お兄様にこんなことは言いたくない。大切な家族なのだ。
転生してきた私にとって、私を誰よりも愛してくれたお兄様たちは、アルフレッド様と出会うまで、誰よりも誰よりも大切な人たちだったのだ。
そして、アルフレッド様がいても、大切な家族であることに変わりはない。
だからこそ、幸せになって欲しいのだ。
未来の奥様に、自分より妹を優先したなんて、心のわだかまりを持って欲しくないのだ。
私にキツイ口調で問われたカイルお兄様は、今にも泣きそうだ。
「お、俺は・・・」
「カイルお兄様。私を大切に思って下さりありがとうございます。でも、お兄様が結婚しようと、私はお兄様の妹であることは変わりないのです。お兄様と共に歩まれる王女殿下のお気持ちに寄り添って下さいませ」
カイルお兄様の両手を握り、その目をジッと見上げる。
私は自分の使い道を分かっているつもりだ。私を溺愛している人は、私のお願いモードにとても弱い。
「ローゼ・・・」
「例え離れていても、私はお兄様の妹ですわ。大好きな気持ちも変わりません」
「ローゼ・・・」
カイルお兄様は、俯いてしまった。
少し考える時間をあげたほうがいいかしら。
私は、ルヒトお兄様の手を引いた。
「ルヒトお兄様、少しよろしくて?」
「ん?あ、ああ」
そのまま、カイルお兄様の部屋を出る。
ルヒトお兄様の手を引いたまま、隣の部屋へ入った。
「ルヒトお兄様、後でカイルお兄様へ後押しをお願いしますわ」
「ローゼ」
「私は、カイルお兄様にも幸せになって欲しいのです。ルヒトお兄様もわかっていらっしゃいますよね?」
「ああ。カイルも分かっていると思う。ただ、僕はこの国に残ってるけど、カイルは他国に行くから、寂しいんだと思う」
そう。だから、一緒にいられる時間いっぱい、側にいようと思ってくれたのだろう。
私だって、わかっている。わかっているからこそ・・・
「ルヒトお兄様。お願いします」
「うん。わかったよ、ローゼ」
ルヒトお兄様はうなづいてくれた。
ルヒトお兄様の後押しを受けて、カイルお兄様が結婚を決めたのは、翌日のことであったー
ノックもせず、扉を大きく開いた私に、部屋にいたカイルお兄様と、一緒にいたルヒトお兄様が目を見開いた。
「ろ、ローゼ、どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃありません。いつまで婚姻を引き延ばすおつもりですか!」
私は、私を溺愛してくれるルヒトお兄様もカイルお兄様も好きだ。
2人も、それからエリザベスお姉様も父様も、私にとって大切な人である。
だけど、アルフレッド様に恋をした私は、ずっと宙ぶらりんで待たされている王女様の気持ちが分かるのだ。どれほど、切ない日々を送っているのか。
そう考えると、例え大好きな家族といえど、語調もキツくなるというものである。
「いつまでって・・・」
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「ローゼ、カイルは別に・・・」
「ルヒトお兄様は黙っていて下さい」
カイルお兄様を擁護しようとするルヒトお兄様を、ピシャリと遮る。
私だって、お兄様にこんなことは言いたくない。大切な家族なのだ。
転生してきた私にとって、私を誰よりも愛してくれたお兄様たちは、アルフレッド様と出会うまで、誰よりも誰よりも大切な人たちだったのだ。
そして、アルフレッド様がいても、大切な家族であることに変わりはない。
だからこそ、幸せになって欲しいのだ。
未来の奥様に、自分より妹を優先したなんて、心のわだかまりを持って欲しくないのだ。
私にキツイ口調で問われたカイルお兄様は、今にも泣きそうだ。
「お、俺は・・・」
「カイルお兄様。私を大切に思って下さりありがとうございます。でも、お兄様が結婚しようと、私はお兄様の妹であることは変わりないのです。お兄様と共に歩まれる王女殿下のお気持ちに寄り添って下さいませ」
カイルお兄様の両手を握り、その目をジッと見上げる。
私は自分の使い道を分かっているつもりだ。私を溺愛している人は、私のお願いモードにとても弱い。
「ローゼ・・・」
「例え離れていても、私はお兄様の妹ですわ。大好きな気持ちも変わりません」
「ローゼ・・・」
カイルお兄様は、俯いてしまった。
少し考える時間をあげたほうがいいかしら。
私は、ルヒトお兄様の手を引いた。
「ルヒトお兄様、少しよろしくて?」
「ん?あ、ああ」
そのまま、カイルお兄様の部屋を出る。
ルヒトお兄様の手を引いたまま、隣の部屋へ入った。
「ルヒトお兄様、後でカイルお兄様へ後押しをお願いしますわ」
「ローゼ」
「私は、カイルお兄様にも幸せになって欲しいのです。ルヒトお兄様もわかっていらっしゃいますよね?」
「ああ。カイルも分かっていると思う。ただ、僕はこの国に残ってるけど、カイルは他国に行くから、寂しいんだと思う」
そう。だから、一緒にいられる時間いっぱい、側にいようと思ってくれたのだろう。
私だって、わかっている。わかっているからこそ・・・
「ルヒトお兄様。お願いします」
「うん。わかったよ、ローゼ」
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