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転生王女の涙2
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「殺されかけた僕は、真の姿になってしまった。母は、そんな僕を見て恐怖と嫌悪を露わにし、そして、そのことに母は絶望して自らの命を絶ってしまったんだ」
抱きしめられたままの私は、アルフレッド様の表情を見ることができない。だけど、その声は苦しそうで、私はその背中にそっと手を回した。
この人は、自分の真の姿のせいで、お母様を亡くしてしまったことで、自分を責めている。
だから、私が真の姿を見たいと言った時、躊躇ったのね。
「アルフレッド様、教えて下さってありがとうございます。アルフレッド様のお心がよくわかりましたわ」
実の母親に恐怖と嫌悪を持たれたことに、どれだけ傷付いたか。しかも、母親が自殺する原因になったのだから、他人である私が何を言ったところで、覆すことは難しいだろう。
真の姿を見せたくはないけど、理由を話さなければ私が納得しないと判断して、苦しいだろうに話してくれたに違いない。
それを知った以上、私の我儘で見たいとは言えない。
そう、我儘だ。好きになった人の全てを知りたいなんて、我儘なんだ・・・
私は自分の性格をわかっているつもりだ。
頭では、この人の苦悩も気持ちも理解して、全てを知りたいと言ってはいけないと分かっている。
だけど、本心は・・・
知ることを許してもらえないことに、傷ついている。どれだけ好きだと言われても、それを信じきれない気がするほどに。
鼻がツンとして、涙が浮かんでくる。
ダメだ。泣いたりしたら困らせてしまう。涙を堪えようとグッと唇を噛みしめようとした。
「駄目だ。噛んだりしたら傷になる」
強張った体に気付いた彼の指が、私の唇を撫でる。
こぼれてしまいそうな涙を堪えるために、上を向くと、私を見つめるアルフレッド様と目があった。
揺れる視界の向こうの、アルフレッド様の眉間にシワがよっている。
ああ。やっぱり、嫌われてしまったのね。違うと言ってくれたのは、私を気遣ってくれた彼の優しさなんだ。
一層、視界が歪んだ。こぼれるのを耐えきれなくなった涙が、流れる。
泣くのは卑怯だ。優しいこの魔王は、泣いたりしたら婚約を解消なんて言えなくなる。
唇に触れたことで緩んだ腕から逃れるために、背中に回していた手を彼の胸元へと移動させる。
そのまま、突き放そうとした私の、歪んだ視界に影が落ちた。
「ん・・・ふっ」
唇に触れる柔らかい存在に、思わずアルフレッド様のシャツを握りしめる。
「駄目だ。僕から逃げるなんて許さない。君は僕の婚約者だろう?愛しいローゼ」
離れた唇から、束縛の声が聞こえる。
「アルフレッド様・・・」
「例え君が本当の僕を知って、逃げようとしても、絶対に離さない。いっそ、このまま・・・」
「婚姻までは駄目ですよ、我が君、アルフレッド魔王陛下」
アルフレッド様の腕が、私をキツく抱きしめようとした時、涼やかな声が部屋に響いた。
慌てて、その腕の中から顔を上げると、アルフレッド様の後ろ側にフレイ様が立っていた。
「フレイ」
「魔王の伴侶となる者、婚前交渉は認められません。ローズマリー様は、魔王陛下のご正妃となられるお方でしょう?」
フレイ様の言葉に、アルフレッド様は私を抱きしめていた腕を緩め、その体を離した。そして、欲望を耐えようと力の入った眉間を緩める。
えっと、えっと、何だか衝撃的な事を聞いたような・・・婚前交渉?私、まだ12歳ですよ?えっと、じょ、冗談ですよね?
あわあわしている私を見て、アルフレッド様はフッと微笑むと、私の頬にキスを落とした。
「我が愛しのローゼ。早く大人になっておくれ」
マジですか~
抱きしめられたままの私は、アルフレッド様の表情を見ることができない。だけど、その声は苦しそうで、私はその背中にそっと手を回した。
この人は、自分の真の姿のせいで、お母様を亡くしてしまったことで、自分を責めている。
だから、私が真の姿を見たいと言った時、躊躇ったのね。
「アルフレッド様、教えて下さってありがとうございます。アルフレッド様のお心がよくわかりましたわ」
実の母親に恐怖と嫌悪を持たれたことに、どれだけ傷付いたか。しかも、母親が自殺する原因になったのだから、他人である私が何を言ったところで、覆すことは難しいだろう。
真の姿を見せたくはないけど、理由を話さなければ私が納得しないと判断して、苦しいだろうに話してくれたに違いない。
それを知った以上、私の我儘で見たいとは言えない。
そう、我儘だ。好きになった人の全てを知りたいなんて、我儘なんだ・・・
私は自分の性格をわかっているつもりだ。
頭では、この人の苦悩も気持ちも理解して、全てを知りたいと言ってはいけないと分かっている。
だけど、本心は・・・
知ることを許してもらえないことに、傷ついている。どれだけ好きだと言われても、それを信じきれない気がするほどに。
鼻がツンとして、涙が浮かんでくる。
ダメだ。泣いたりしたら困らせてしまう。涙を堪えようとグッと唇を噛みしめようとした。
「駄目だ。噛んだりしたら傷になる」
強張った体に気付いた彼の指が、私の唇を撫でる。
こぼれてしまいそうな涙を堪えるために、上を向くと、私を見つめるアルフレッド様と目があった。
揺れる視界の向こうの、アルフレッド様の眉間にシワがよっている。
ああ。やっぱり、嫌われてしまったのね。違うと言ってくれたのは、私を気遣ってくれた彼の優しさなんだ。
一層、視界が歪んだ。こぼれるのを耐えきれなくなった涙が、流れる。
泣くのは卑怯だ。優しいこの魔王は、泣いたりしたら婚約を解消なんて言えなくなる。
唇に触れたことで緩んだ腕から逃れるために、背中に回していた手を彼の胸元へと移動させる。
そのまま、突き放そうとした私の、歪んだ視界に影が落ちた。
「ん・・・ふっ」
唇に触れる柔らかい存在に、思わずアルフレッド様のシャツを握りしめる。
「駄目だ。僕から逃げるなんて許さない。君は僕の婚約者だろう?愛しいローゼ」
離れた唇から、束縛の声が聞こえる。
「アルフレッド様・・・」
「例え君が本当の僕を知って、逃げようとしても、絶対に離さない。いっそ、このまま・・・」
「婚姻までは駄目ですよ、我が君、アルフレッド魔王陛下」
アルフレッド様の腕が、私をキツく抱きしめようとした時、涼やかな声が部屋に響いた。
慌てて、その腕の中から顔を上げると、アルフレッド様の後ろ側にフレイ様が立っていた。
「フレイ」
「魔王の伴侶となる者、婚前交渉は認められません。ローズマリー様は、魔王陛下のご正妃となられるお方でしょう?」
フレイ様の言葉に、アルフレッド様は私を抱きしめていた腕を緩め、その体を離した。そして、欲望を耐えようと力の入った眉間を緩める。
えっと、えっと、何だか衝撃的な事を聞いたような・・・婚前交渉?私、まだ12歳ですよ?えっと、じょ、冗談ですよね?
あわあわしている私を見て、アルフレッド様はフッと微笑むと、私の頬にキスを落とした。
「我が愛しのローゼ。早く大人になっておくれ」
マジですか~
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