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転生王女の誕生日2
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「クリムゾン魔国魔王陛下。娘の誕生日にご足労いただき感謝する」
父様の声に、ハッとする。呆けている場合ではないわ。ご挨拶しないと。
私は急いでカテーシーをする。
第2王女だから、国王である相手の方が地位は上だけど、跪礼するのもおかしいわよね。
「魔王陛下様、ご足労いただきありがとうございます。サフィロス王家第2王女ローズマリー・サフィロスでございます」
「噂以上に愛らしい姫君だ。僕のことはアルフレッドと呼んで欲しいな。ああ、姫君、少し時間をいただいてもいいだろうか」
「陛下。姫君は皆様にご挨拶を受けている途中ですよ。ご遠慮なさいませ」
魔王陛下、アルフレッド様の言葉に目を見開いていると、彼の後ろから濃青の髪の青年が声をかけて諫めている。
「む。それはそうか。姫君、これは我が国の宰相だ」
「フレイと申します。愛らしき姫君。あとで、我が主にお時間をいただいても?」
濃青の髪と同色の瞳が、私を見つめる。ま、魔族の人って美形なのね。
魔王陛下に至っては、あまりにも人外すぎる。
濡れ羽色の艶やかな髪に、深紅の瞳。年の頃は17歳ほどに見えるが、魔王が見た目通りの年齢とは限らないだろう。
父様もナイスミドルってやつで美形だし、美人のお母様似のお兄様たちも美形なんだけど、魔王陛下は桁が違う。
傾国の美貌って、この人のことを言うんだと思う。
「わ、私でよろしければ」
どもってしまったけど、仕方ないわよね。
私の返答に満足したのか、魔王陛下と宰相はこの場から離れて行った。
ふぅ。
小さく息を吐く。緊張していたようだ。美形には見慣れていたつもりだけど、世の中は広いということだろう。
そんな私を、隣の父様がジト目で見ていた。
「なにか?」
「・・・誰彼構わず誑かせるのは、ある意味才能かと思っただけだ」
「何を訳の分からないことを。それより、魔王陛下に例のこと聞いても?」
そう。美貌に目を奪われたけど、魔国に招待状を送ったのは、呪いに対する対処法を知りたいからだ。
しかも、その相手から話がしたいと言われた。絶好のチャンスである。
父様は、一瞬逡巡したあと、うなづいた。
「お前の判断に任せる」
「わかりましたわ」
私もうなづき返すと、目の前に現れた新しい招待客に、にこりと笑顔を向けた。
「ああ。とても美しいな」
王宮の庭園で、魔王陛下アルフレッド様とお話を、と思った私は、魔王陛下を案内したわけだが・・・
何故か、魔王陛下の膝の上に座らせられていた。
な、何故こんなことになってるの?
「ま、魔王陛下!あ、あのっ」
「アルフレッドと呼んでと言っただろう?ああ。アルでもいいな」
魔王陛下は、私の頬を撫でながら、私の顔を覗き込む。
ち、近い!近いですーっ!
「そ、そんな。畏れ多いですわ」
「そんなこと言わないで、呼んでくれないか」
「こっ、婚約者でもない方を愛称で呼ぶなどできません」
というか、自国より大国の、しかも魔王陛下を愛称呼びとか、無理でしょう!
あわあわしてる私と対称的に、魔王陛下はそれは名案とばかりに瞳を輝かせた。
「じゃあ、僕と婚約してくれないか」
「は?」
「駄目だろうか?」
えっ、いや、あの・・・耳が見えるんですけど。大型犬の、耳がぺしゃんって・・・ううっ。
「お、お膝から下ろして下さいましたら、父にお願いしてみますわ」
だから、下ろして下さい~っ!
膝抱っこなんて、子供みたいで居た堪れないのよ。もう12歳だし、しかも中身は29歳なんだから。
魔王陛下は、少し考えた後、渋々という感じで、それでも私を下ろしてくれた。
「あ、ありがとうございます。あ、あ、アルフレッド陛下」
名前呼びは緊張するけど、多分、父様は婚約を認めるだろう。いずれ呼ばなくてはならないなら、少しずつ慣れていかないと。
私の礼に、アルフレッド陛下はとても嬉しそうに微笑まれた。ゔゔっ、び、美形の微笑みに目が潰れそう。
「陛下も取ってくれると嬉しい。うん、でも婚約するまで我慢しよう。僕も、ローズマリーと呼んでいいかな?皆、なんて呼んでるの?」
「兄たちはローゼと」
「僕もそう呼んでいい?」
「ええ」
私はうなづいた。
兄たちの嫉妬が目に見えるようである。まぁ、さすがに魔王陛下に食ってかかることはないだろうが。
それに、父様が決めたことに反論できる強者はいないだろう。目の前の魔王陛下は知らないが。
私は、いずれ他国に嫁ぐか、降嫁して公爵か侯爵家に嫁ぐ運命である。
それなら、それが目の前の魔王陛下でも構わない。随分と私を気に入ってくれているようだし。
我がサフィロスよりも大国である、魔国と縁が結べるのだから、父様も認めるのは間違いない。
婚約の話をしたら、あの呆れたような目で見られるのは間違いないだろうけど。
そしてー
婚約の話を切り出した私に案の定、父様はため息をついて呆れた顔をし、お兄様たちは、どうしてだの何だの文句を言ったのであった。
父様の声に、ハッとする。呆けている場合ではないわ。ご挨拶しないと。
私は急いでカテーシーをする。
第2王女だから、国王である相手の方が地位は上だけど、跪礼するのもおかしいわよね。
「魔王陛下様、ご足労いただきありがとうございます。サフィロス王家第2王女ローズマリー・サフィロスでございます」
「噂以上に愛らしい姫君だ。僕のことはアルフレッドと呼んで欲しいな。ああ、姫君、少し時間をいただいてもいいだろうか」
「陛下。姫君は皆様にご挨拶を受けている途中ですよ。ご遠慮なさいませ」
魔王陛下、アルフレッド様の言葉に目を見開いていると、彼の後ろから濃青の髪の青年が声をかけて諫めている。
「む。それはそうか。姫君、これは我が国の宰相だ」
「フレイと申します。愛らしき姫君。あとで、我が主にお時間をいただいても?」
濃青の髪と同色の瞳が、私を見つめる。ま、魔族の人って美形なのね。
魔王陛下に至っては、あまりにも人外すぎる。
濡れ羽色の艶やかな髪に、深紅の瞳。年の頃は17歳ほどに見えるが、魔王が見た目通りの年齢とは限らないだろう。
父様もナイスミドルってやつで美形だし、美人のお母様似のお兄様たちも美形なんだけど、魔王陛下は桁が違う。
傾国の美貌って、この人のことを言うんだと思う。
「わ、私でよろしければ」
どもってしまったけど、仕方ないわよね。
私の返答に満足したのか、魔王陛下と宰相はこの場から離れて行った。
ふぅ。
小さく息を吐く。緊張していたようだ。美形には見慣れていたつもりだけど、世の中は広いということだろう。
そんな私を、隣の父様がジト目で見ていた。
「なにか?」
「・・・誰彼構わず誑かせるのは、ある意味才能かと思っただけだ」
「何を訳の分からないことを。それより、魔王陛下に例のこと聞いても?」
そう。美貌に目を奪われたけど、魔国に招待状を送ったのは、呪いに対する対処法を知りたいからだ。
しかも、その相手から話がしたいと言われた。絶好のチャンスである。
父様は、一瞬逡巡したあと、うなづいた。
「お前の判断に任せる」
「わかりましたわ」
私もうなづき返すと、目の前に現れた新しい招待客に、にこりと笑顔を向けた。
「ああ。とても美しいな」
王宮の庭園で、魔王陛下アルフレッド様とお話を、と思った私は、魔王陛下を案内したわけだが・・・
何故か、魔王陛下の膝の上に座らせられていた。
な、何故こんなことになってるの?
「ま、魔王陛下!あ、あのっ」
「アルフレッドと呼んでと言っただろう?ああ。アルでもいいな」
魔王陛下は、私の頬を撫でながら、私の顔を覗き込む。
ち、近い!近いですーっ!
「そ、そんな。畏れ多いですわ」
「そんなこと言わないで、呼んでくれないか」
「こっ、婚約者でもない方を愛称で呼ぶなどできません」
というか、自国より大国の、しかも魔王陛下を愛称呼びとか、無理でしょう!
あわあわしてる私と対称的に、魔王陛下はそれは名案とばかりに瞳を輝かせた。
「じゃあ、僕と婚約してくれないか」
「は?」
「駄目だろうか?」
えっ、いや、あの・・・耳が見えるんですけど。大型犬の、耳がぺしゃんって・・・ううっ。
「お、お膝から下ろして下さいましたら、父にお願いしてみますわ」
だから、下ろして下さい~っ!
膝抱っこなんて、子供みたいで居た堪れないのよ。もう12歳だし、しかも中身は29歳なんだから。
魔王陛下は、少し考えた後、渋々という感じで、それでも私を下ろしてくれた。
「あ、ありがとうございます。あ、あ、アルフレッド陛下」
名前呼びは緊張するけど、多分、父様は婚約を認めるだろう。いずれ呼ばなくてはならないなら、少しずつ慣れていかないと。
私の礼に、アルフレッド陛下はとても嬉しそうに微笑まれた。ゔゔっ、び、美形の微笑みに目が潰れそう。
「陛下も取ってくれると嬉しい。うん、でも婚約するまで我慢しよう。僕も、ローズマリーと呼んでいいかな?皆、なんて呼んでるの?」
「兄たちはローゼと」
「僕もそう呼んでいい?」
「ええ」
私はうなづいた。
兄たちの嫉妬が目に見えるようである。まぁ、さすがに魔王陛下に食ってかかることはないだろうが。
それに、父様が決めたことに反論できる強者はいないだろう。目の前の魔王陛下は知らないが。
私は、いずれ他国に嫁ぐか、降嫁して公爵か侯爵家に嫁ぐ運命である。
それなら、それが目の前の魔王陛下でも構わない。随分と私を気に入ってくれているようだし。
我がサフィロスよりも大国である、魔国と縁が結べるのだから、父様も認めるのは間違いない。
婚約の話をしたら、あの呆れたような目で見られるのは間違いないだろうけど。
そしてー
婚約の話を切り出した私に案の定、父様はため息をついて呆れた顔をし、お兄様たちは、どうしてだの何だの文句を言ったのであった。
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