4 / 45
転生王女の思案
しおりを挟む
決意したものの、いきなり王女が厨房に行ったところで何もできないことは分かっている。
父様を説得するにも、ちゃんとした結果を示さないと、あの人は絶対うなづかない。
しかし結果を示すには、何かをやらないといけない。
私は堂々巡りに陥っていた。
温かい食事が取れないのは、毒味が必要だから。
なら、毒味が要らなければ温かいまま食べることができる。
毒味が不要となるのは、信用のなる人間が作ること。
そこまではいいのだが、どれだけ信用足る人間が作ったとしても、毒味の必要がなくなることはない。
第一、王宮の料理人が信用されてないわけがない。厳選な審査の上で採用された人達だ。
だけど、そんな人達だって、悪意を持つ人間に、もし自分の大切な人を人質にとられたら?
家族である私が作ったとしても、それは100%安全ではないのだ。
私が、陛下を、兄を姉を、蹴落とそうとしていたら?
私はそんなこと考えるつもりはないけど、他から見たら可能性がゼロではない、ということなのだ。
あー、これは前途多難だわ。
厨房の片隅で、生地を型で抜き取りながら、私は頭を悩ませていた。
何してるかって?
転生してから、毒味の必要があるから、食べたいお菓子を頼むのも中々面倒だった。
それなら、自分が食べるのなら毒味もいらないかということで、厨房を借りて、お菓子作りをしているのだ。
元々、お菓子作りが趣味だったのもあって、考え事がある時は、お菓子作りが一番。
ちなみに、料理は得意ではない。レシピ見ながらなら作れるけど、見ずに作れるのは簡単なものだけだ。
「姫様、焼きあがりましたよ」
料理長が、焼き上がったクッキーを籠へと移してくれる。
最初は、私が訪れたことに戦々恐々し、遠巻きで見ていた料理人たちも、回を重ねるごとに慣れてきたのか、今では私がいても、それぞれの仕事に集中している。
ただ、オーブンを使う為か、料理長だけは常に私の側にいて、道具の準備や片付けをしてくれていた。
・・・料理長のすることではないわ。
確かに、初日オープンの蓋の重さにびっくりしたけど。天板の重さにフラフラもしたけど。
どうしてこうなったの?片付けとか見習いの人で良くない?
「こちらのクッキーは、焼き上がったら皆様で召し上がって下さいね」
型抜きが終わった生地を天板に並べ、料理長に託す。
ありがとうございますと、あちこちから声がかけられた。
私はクッキーが入った籠を提げると、厨房を後にした。
厨房の入口を出たところで、後ろから伸びてきた手に籠を奪われる。
「ローズマリー様、お持ちします」
「あら、レナード。ルヒトお兄様は?」
「殿下は、カイル殿下と手合わせをしてらっしゃいますよ」
レナードは、ルヒトお兄様付きの護衛騎士だ。短く刈られたダークブラウンの髪に、切れ長の同色の瞳。お兄様と同じ19歳だ。
へぇ。鍛錬中か。
レナードがルヒトお兄様の側を離れることなんかほとんどないけど、カイルお兄様の護衛騎士がいるから、任せたってことかしらね。
ん?にしても、なんでここに来たの?
疑問に感じて振り返る。
數歩あとをついて来るレナードが、ジッと私を見ていた。
え・・・と、何故そんなに見てるの?
「レナード、私の顔に何か付いていますか?」
「・・・・・・いえ」
そうですか。付いてませんか。なら、何故ジッと見ているのですか?
そう聞きたいが、聞いてはいけないと前世の自分が言っている。
なんか、ぞわぞわする。いかん。これはこれ以上考えない方がいい。
「お兄様たちのところへ行きます」
私は、レナードから視線を外すと、鍛錬を行なっているという中庭へと歩き出した。
父様を説得するにも、ちゃんとした結果を示さないと、あの人は絶対うなづかない。
しかし結果を示すには、何かをやらないといけない。
私は堂々巡りに陥っていた。
温かい食事が取れないのは、毒味が必要だから。
なら、毒味が要らなければ温かいまま食べることができる。
毒味が不要となるのは、信用のなる人間が作ること。
そこまではいいのだが、どれだけ信用足る人間が作ったとしても、毒味の必要がなくなることはない。
第一、王宮の料理人が信用されてないわけがない。厳選な審査の上で採用された人達だ。
だけど、そんな人達だって、悪意を持つ人間に、もし自分の大切な人を人質にとられたら?
家族である私が作ったとしても、それは100%安全ではないのだ。
私が、陛下を、兄を姉を、蹴落とそうとしていたら?
私はそんなこと考えるつもりはないけど、他から見たら可能性がゼロではない、ということなのだ。
あー、これは前途多難だわ。
厨房の片隅で、生地を型で抜き取りながら、私は頭を悩ませていた。
何してるかって?
転生してから、毒味の必要があるから、食べたいお菓子を頼むのも中々面倒だった。
それなら、自分が食べるのなら毒味もいらないかということで、厨房を借りて、お菓子作りをしているのだ。
元々、お菓子作りが趣味だったのもあって、考え事がある時は、お菓子作りが一番。
ちなみに、料理は得意ではない。レシピ見ながらなら作れるけど、見ずに作れるのは簡単なものだけだ。
「姫様、焼きあがりましたよ」
料理長が、焼き上がったクッキーを籠へと移してくれる。
最初は、私が訪れたことに戦々恐々し、遠巻きで見ていた料理人たちも、回を重ねるごとに慣れてきたのか、今では私がいても、それぞれの仕事に集中している。
ただ、オーブンを使う為か、料理長だけは常に私の側にいて、道具の準備や片付けをしてくれていた。
・・・料理長のすることではないわ。
確かに、初日オープンの蓋の重さにびっくりしたけど。天板の重さにフラフラもしたけど。
どうしてこうなったの?片付けとか見習いの人で良くない?
「こちらのクッキーは、焼き上がったら皆様で召し上がって下さいね」
型抜きが終わった生地を天板に並べ、料理長に託す。
ありがとうございますと、あちこちから声がかけられた。
私はクッキーが入った籠を提げると、厨房を後にした。
厨房の入口を出たところで、後ろから伸びてきた手に籠を奪われる。
「ローズマリー様、お持ちします」
「あら、レナード。ルヒトお兄様は?」
「殿下は、カイル殿下と手合わせをしてらっしゃいますよ」
レナードは、ルヒトお兄様付きの護衛騎士だ。短く刈られたダークブラウンの髪に、切れ長の同色の瞳。お兄様と同じ19歳だ。
へぇ。鍛錬中か。
レナードがルヒトお兄様の側を離れることなんかほとんどないけど、カイルお兄様の護衛騎士がいるから、任せたってことかしらね。
ん?にしても、なんでここに来たの?
疑問に感じて振り返る。
數歩あとをついて来るレナードが、ジッと私を見ていた。
え・・・と、何故そんなに見てるの?
「レナード、私の顔に何か付いていますか?」
「・・・・・・いえ」
そうですか。付いてませんか。なら、何故ジッと見ているのですか?
そう聞きたいが、聞いてはいけないと前世の自分が言っている。
なんか、ぞわぞわする。いかん。これはこれ以上考えない方がいい。
「お兄様たちのところへ行きます」
私は、レナードから視線を外すと、鍛錬を行なっているという中庭へと歩き出した。
15
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
夫の心がわからない
キムラましゅろう
恋愛
マリー・ルゥにはわからない。
夫の心がわからない。
初夜で意識を失い、当日の記憶も失っている自分を、体調がまだ万全ではないからと別邸に押しとどめる夫の心がわからない。
本邸には昔から側に置く女性と住んでいるらしいのに、マリー・ルゥに愛を告げる夫の心がサッパリわからない。
というかまず、昼夜逆転してしまっている自分の自堕落な(翻訳業のせいだけど)生活リズムを改善したいマリー・ルゥ18歳の春。
※性描写はありませんが、ヒロインが職業柄とポンコツさ故にエチィワードを口にします。
下品が苦手な方はそっ閉じを推奨いたします。
いつもながらのご都合主義、誤字脱字パラダイスでございます。
(許してチョンマゲ←)
小説家になろうさんにも時差投稿します。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる