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愚か者たち《ソル視点》

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 イザヴェリ公爵から、モーリス王国の動きについて伝達があったと連絡を受けた。
 父上からお聞きした内容に、僕は呆れ返って言葉もなかった。

『ソル!そんな馬鹿は消しちゃおう!』

「駄目だよ、アルビナ。そんなこと言っちゃ」

『どーして?大切なルーナを傷つけようとしてるのよ!そんな人間は必要ないじゃない』

 アルビナの言いたいことは理解る。
僕だって大切なルーナに手出ししようとする相手を許したくはない。

 だけど、ルーナはそれを望むだろうか。
仮にもかつて婚約していた相手を、消してしまいたいと思うだろうか。

 たとえそれが自分を殺した相手でも、ルーナは赦しを与えるのではないだろうか。

「ルーナがそれを望まない限り、シンにもアルビナにも手を穢して欲しくない」

『・・・ソルだって知ってるじゃない。私たち精霊は、人間の生き死になんてどうでもいいと思ってるって。私たちが大切なのは、仲間と契約をした相手だけだって。私たちには善悪なんて関係ないのに』

「分かってる。だけど、ルーナはシンのこともアルビナのことも大切に思っている。その2人が、自分のために手を汚したと知ったら、ルーナは傷つくような気がするんだ」

 アルビナやシンだけでなく、精霊たちは基本、人間に対して特別な感情は抱いていない。

 自分たちに害がなければ、生きていようと死のうと関係ないと考えている。

 彼らが大切なのは、自分たちの仲間と、そして契約した相手のことだけだ。

 アルビナがルーナを大切に思ってくれているのは、自分の対となるシンの契約者であるということ。そしてそれは、かつて自分たちを助けてくれた神の生まれ変わりであるということだからだ。

 だから精霊たちは、ルーナを害そうとするモノを全力で排除しようとするだろう。

 たとえ、人間全てを敵に回しても、僕とルーナのことは守ろうとしてくれる。

 その気持ちは嬉しい。
だけど、僕はルーナにカケラの憂いも抱いて欲しくない。
 たとえどんな相手でも、自分のせいで人が死ねば、ルーナは傷つくだろう。

『もう!仕方ないなぁ。分かったわ。ルーナのためだものね。他の精霊たちに、アイツらの監視をさせるわ。このガラティアに入って来たらすぐにわかるようにする』

「ありがとう、アルビナ。騎士団は待機させておく。不法入国だからね、拘束することができる」

 強制送還して、国としての抗議をする程度しかできないが、2度とガラティア王国には入国できないようになる。

 それにどうやら、モーリス王国王族に関しては、イザヴェリ公爵が何か対策しているようだ。
 公爵にお任せしておけば良いだろう。


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