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その頃のイザヴェリ公爵家2《イザヴェリ公爵視点》
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リンクからの報告書に目を通した私は、大きくため息を吐いた。
そこに書かれていることは、はっきり言って愚行でしかない。
『ルーナ・イザヴェリ公爵令嬢を誘拐して、フィリップのお手付きにせよ』
モーリス王国国王陛下が、自分の息子であるフィリップ王太子に告げた『命令』である。
仮にも一国の国王が、その国の公爵令嬢を拐かし、しかも11歳の令嬢を凌辱せよとは。
まだ11歳の王子に、子をなすことはできない。
だが、その身を穢されればルーナは、修道院に行くか、それともどこかの後妻に入るしか選択肢はなくなる。
フィリップ王子の正妻となり、王太子妃になることすら叶わない。
穢した本人であろうと、王家に嫁げるのは、侯爵家以上の純潔の乙女でなければならないからだ。
側妃にすらなれないルーナは、愛妾扱いにされるか王家に幽閉される運命だろう。
そんなことがまかり通るような国に、これ以上いても仕方ない。
もちろん、ガラティア王国には伝令を飛ばしてある。
ルーナはすでに精霊との契約を終えているが、万が一のことがあってはいけない。
精霊とガラティア王家の護りがあれば、ルーナの方は大丈夫だろう。
私はリンクたちの力を借りて、このモーリス王国に制裁を下さなければならない。
「準備は?」
「万全に。フィリップ王子は、すでにガラティア王国に向かったそうです。影をつけてあります」
「王家の方は?」
「マミアが調査した通り、国王陛下には愛妾がいました。王妃殿下の従姉妹で、男爵家のご令嬢だった女性です」
王家でも側妃を持てるのは正妃が3年子供を授からなかった場合のみで、愛妾を持つことは許されているが、それも正妃が認めた場合のみである。
書類に記されている愛妾は、男爵家の未婚の令嬢で、当時まだ16歳だった。
自分の子供とさほど変わらない、しかも未婚の令嬢だ。
当然、王妃殿下に言えるわけがない。
しかも側近の婚約者だった。
自分の息子に拉致強姦を強いる男だ。おそらくは、その令嬢に対しても同じようなことをしたのだろう。
私も、そのご令嬢のことは覚えている。
突然王都の外れの湖に身を投げて命を落とした婚約者に、その側近は泣きながら縋りついていた。
王家の調査では、彼女が死を選んだ理由は分からず、結婚を控えていたことによるプレッシャーだろうという結論になったはずだ。
婚約者も、彼女が3ヶ月ほど前から急に様子がおかしくなっていたと言い、自分がもっと親身になっていればと悔やんでいた。
その時は何も思わなかったが、今回ルーナのこともあり、私はリンクに再調査を命じていたのだ。
そこに書かれていることは、はっきり言って愚行でしかない。
『ルーナ・イザヴェリ公爵令嬢を誘拐して、フィリップのお手付きにせよ』
モーリス王国国王陛下が、自分の息子であるフィリップ王太子に告げた『命令』である。
仮にも一国の国王が、その国の公爵令嬢を拐かし、しかも11歳の令嬢を凌辱せよとは。
まだ11歳の王子に、子をなすことはできない。
だが、その身を穢されればルーナは、修道院に行くか、それともどこかの後妻に入るしか選択肢はなくなる。
フィリップ王子の正妻となり、王太子妃になることすら叶わない。
穢した本人であろうと、王家に嫁げるのは、侯爵家以上の純潔の乙女でなければならないからだ。
側妃にすらなれないルーナは、愛妾扱いにされるか王家に幽閉される運命だろう。
そんなことがまかり通るような国に、これ以上いても仕方ない。
もちろん、ガラティア王国には伝令を飛ばしてある。
ルーナはすでに精霊との契約を終えているが、万が一のことがあってはいけない。
精霊とガラティア王家の護りがあれば、ルーナの方は大丈夫だろう。
私はリンクたちの力を借りて、このモーリス王国に制裁を下さなければならない。
「準備は?」
「万全に。フィリップ王子は、すでにガラティア王国に向かったそうです。影をつけてあります」
「王家の方は?」
「マミアが調査した通り、国王陛下には愛妾がいました。王妃殿下の従姉妹で、男爵家のご令嬢だった女性です」
王家でも側妃を持てるのは正妃が3年子供を授からなかった場合のみで、愛妾を持つことは許されているが、それも正妃が認めた場合のみである。
書類に記されている愛妾は、男爵家の未婚の令嬢で、当時まだ16歳だった。
自分の子供とさほど変わらない、しかも未婚の令嬢だ。
当然、王妃殿下に言えるわけがない。
しかも側近の婚約者だった。
自分の息子に拉致強姦を強いる男だ。おそらくは、その令嬢に対しても同じようなことをしたのだろう。
私も、そのご令嬢のことは覚えている。
突然王都の外れの湖に身を投げて命を落とした婚約者に、その側近は泣きながら縋りついていた。
王家の調査では、彼女が死を選んだ理由は分からず、結婚を控えていたことによるプレッシャーだろうという結論になったはずだ。
婚約者も、彼女が3ヶ月ほど前から急に様子がおかしくなっていたと言い、自分がもっと親身になっていればと悔やんでいた。
その時は何も思わなかったが、今回ルーナのこともあり、私はリンクに再調査を命じていたのだ。
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