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婚約者になる理由

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「僕と婚約して欲しい」

「はい?」

 王太子殿下の言葉に、思わず問い返してしまいましたわ。

 え?え?国王陛下が自分でお願いしなさいって言ってたの、このことですか?

 お父様、絶対知ってましたわよね?
どうして前もっていっておいて下さいませんの?

 お仕置きですわ!口をきかない刑ですわ!

「あ、あの王太子殿下、婚約と聞こえたのですが」

「うん。そう言ったよ。ルーナ嬢はまだ婚約者はいないんだよね?僕では駄目かな?」

 大国の王太子殿下をダメだと言う人がいるなら会ってみたいです。

 しかも、ソル殿下はとても見目麗しい方です。
 きっと、ガラティア王国のご令嬢方は王太子殿下のことをお好きなのではないでしょうか。

「それ・・・は、私が月の精霊王様の愛し子だからですか?」

 というか、それ以外なわけありませんわよね。

 太陽の精霊王様と月の精霊王様は、対の存在だとおっしゃっていました。
 だから、その愛し子である私を婚約者にと言われるんですよね。

 わかっています。
貴族として生まれた私は、政略結婚をすることに文句を言える立場ではありません。

 でも、何度も・・・
政略結婚の相手であるフィリップ様に殺された私は、できることなら今度こそは心から好きになった方と結ばれたいと思っていたのです。

 私がそう尋ねると、王太子殿下は少し困ったように微笑まれました。

「違うって言っても信じてもらえないんじゃないかな。確かにルーナ嬢に興味を持ったのは、君が月の精霊王の愛し子だからだよ。でも、婚約者にと望むのは、そればかりではないんだ」

 私の手をぎゅっと握りしめて、王太子殿下が私を見つめます。

「僕は、アルビナからルーナ嬢が婚約者に処刑されたことを聞いて、胸が潰れそうだった。君のお父上であるイザヴェリ公爵から君の話を聞いて、会いたいと思った。僕は君を一目見て惹かれたんだ」

 顔に熱がたまっていきます。
こんな言葉、フィリップ様に一度も言われたことがありません。

 11歳の年に婚約して、学園に入るまではそれなりに交流はありました。
 エリアナ様と出会うまでは、婚約者として何度もお会いしました。

 でも、こんな風に想いを打ち明けられたことはありません。

 やっぱり・・・
フィリップ様は政略結婚の相手として、私のことを婚約者としていただけだったのですね。
 だから、想い思われる相手であるエリアナ様と出会ってからは、私のことを疎ましい者を見るようにご覧になっていたのでしょう。

 私はこの方と婚約したい。
こんな風に思ってくださる方と婚約したいと思います。
 
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