逆行令嬢は何度でも繰り返す〜もう貴方との未来はいらない〜

みおな

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対の存在《ソル視点》

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 真実が王族にしか伝わっていないのには、理由がある。

 太陽の精霊王と月の精霊王が対の存在であるのと同じように、その愛し子たちも対の存在であるということだ。

 愛し子たちは、太陽と月の精霊王たちにとって、自分たちと同胞を救った神と同じ存在である。

 自分たちが譲り受けた神の力の一部を注いでも、人として決して驕らず清廉に生きていける、そんな特別な器と魂を持った存在が愛し子として生まれてくるのだ。

 そんな存在だと知られれば、権力争いや諍いに巻き込まれる。

 太陽の精霊王の愛し子は、王族男子に生まれることが決まっている。だから、それを退けることもできるが、対の愛し子がどこに生まれるのかはわからない。

 愛し子が月の精霊王と契約を結ぶまで、彼女を守らなければならない。
 それゆえの伝承なのだ。
人が驕ることのないように。精霊王の愛し子の存在を知ることのないように。

 ソル・ガラティアは、太陽の精霊王アルビナの愛し子として生を受けた。
 アルビナの愛し子である証、金の瞳と髪を持って。

 生まれた時からアルビナの存在を感じていたソルは、5歳の年にアルビナと契約を結んだ。
 そして、その時に父王から真の伝承を伝えられたのだ。

 自分には、対となる存在がいる。
月の精霊王の愛し子と呼ばれる、銀の髪と瞳をした女の子が。

 だが、ガラティア国内に銀の髪と瞳の女児は生まれていなかった。

 愛し子は、同じ日に生を受ける。
だが、ソルと同年代の子供に、銀の髪と瞳の女の子はいなかったのだ。

「ねぇ、アルビナ。僕のお嫁さんはどこにいるのかなぁ」

 そう呟いた5歳の僕に、アルビナは困ったような笑みを浮かべた。

 緩やかに波を描く金の髪は足元まであって、ふわふわと揺らいでいる。
 僕と同じ金の瞳を伏せると、アルビナは首を振った。

『ごめんね、ソル。シンが契約を終えないと、私もわからないの。でも、今までこのガラティア以外で愛し子が生まれたことなんてなかったのに。どうしたのかしら』

「そっか。もしかして、僕のお嫁さんは僕と会うのが嫌で、どこか他の国に生まれちゃったのかなぁ」

『そんなわけないわ』

 アルビナはそう言ってくれるけど、僕はとは違うということに、少なからずショックを受けていた。

 もしかしたら、勝手に対となる存在がいることが嫌なのかもしれない。
 だって、それは貴族の政略結婚と大差ないことだから。本人たちの意思なんか意味をなさない。

 僕は王族として生まれたから、最初から自分の生きるべき道を受け入れたけど、まだ見ぬ彼女は嫌なのかもしれない。

 もしそうなのなら、僕はどうしたらいいのだろう。
 

 
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