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入寮
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ガラティア王国を初めて見た感想は、「美しい国」でした。
花が咲き、小鳥が囀り、小川がキラキラと輝いていて、まるで物語の中の世界のようで、私は馬車の中から見えるその景色に、釘付けになってしまいました。
王都に入ると、そこもまた違った意味で美しい街並みでした。
活気溢れる人々に、同じではないのに、どこか統一感のある石造りの建物。そびえる鐘楼。街路樹は日差しを浴びて輝いていて、街道は整えられています。
そして、その街道の先にあった一際大きな門。それがガラティア王国魔法学園の正門でした。
門の先には、幾つもの学舎に寮、池や小さな森まであるらしいのです。
私、迷わないかしら?
モーリス王国の学園も立派だと思っていましたけど、ガラティアの魔法学園はその比ではありません。王宮並みの広さのようです。
「私・・・迷わないかしら?」
思わず、漏れてしまった不安に、ミナがしっかりと手を握ってくれます。
「大丈夫ですよ」
「ミナ。あの・・・ごめんなさいね?私の我儘でミナをマミアたちから引き離してしまって」
「お嬢様に選んでいただけて、私は嬉しかったです。お姉様をお選びになると思っていましたから」
確かに今の私の侍女はマナですから、そう思うのも無理はありませんね。
ですが、マナは2年後には結婚するのです。あと少ししか、マミアとリンクはマナと一緒にいれませんからね。親孝行してもらいたいと思います。
ですが、親元から引き離されたミナは寂しかったはずです。そう思って、謝罪したのですが、嬉しかったと言ってもらえてほんの少し気が楽になりました。
「ありがとう、ミナ」
「いいえ。私こそありがとうございます」
「ふふっ、ついて来てもらったのは私なのに、変なミナ」
2人で笑い合っていると、寮の前に馬車が停まりました。
普段は、寮まで馬車を付けることはできないそうです。
それはそうですね。全寮制ですし、帰省の時などでないと馬車を使うことはないと思います。
ですが、入寮の際はどうしても荷物が多くなってしまいますから、専属の侍従侍女とは別に、実家から荷物を運んでくれる使用人も同伴しています。
我が公爵家の馬車以外は、停まっていないようですから、今日の入寮は私だけなのかもしれません。
馬車で混雑するのを防ぐために、入寮日は1週間の余裕があるみたいですから。
荷物を積んだ馬車の扉が開いて、降りて来た人物に、私は目を見はりました。
「お父様。何をなさっているの?」
そこにいたのは、モーリス王国で別れの挨拶をしたはずのお父様、ルーファス・イザヴェリ公爵家当主だったのです。
花が咲き、小鳥が囀り、小川がキラキラと輝いていて、まるで物語の中の世界のようで、私は馬車の中から見えるその景色に、釘付けになってしまいました。
王都に入ると、そこもまた違った意味で美しい街並みでした。
活気溢れる人々に、同じではないのに、どこか統一感のある石造りの建物。そびえる鐘楼。街路樹は日差しを浴びて輝いていて、街道は整えられています。
そして、その街道の先にあった一際大きな門。それがガラティア王国魔法学園の正門でした。
門の先には、幾つもの学舎に寮、池や小さな森まであるらしいのです。
私、迷わないかしら?
モーリス王国の学園も立派だと思っていましたけど、ガラティアの魔法学園はその比ではありません。王宮並みの広さのようです。
「私・・・迷わないかしら?」
思わず、漏れてしまった不安に、ミナがしっかりと手を握ってくれます。
「大丈夫ですよ」
「ミナ。あの・・・ごめんなさいね?私の我儘でミナをマミアたちから引き離してしまって」
「お嬢様に選んでいただけて、私は嬉しかったです。お姉様をお選びになると思っていましたから」
確かに今の私の侍女はマナですから、そう思うのも無理はありませんね。
ですが、マナは2年後には結婚するのです。あと少ししか、マミアとリンクはマナと一緒にいれませんからね。親孝行してもらいたいと思います。
ですが、親元から引き離されたミナは寂しかったはずです。そう思って、謝罪したのですが、嬉しかったと言ってもらえてほんの少し気が楽になりました。
「ありがとう、ミナ」
「いいえ。私こそありがとうございます」
「ふふっ、ついて来てもらったのは私なのに、変なミナ」
2人で笑い合っていると、寮の前に馬車が停まりました。
普段は、寮まで馬車を付けることはできないそうです。
それはそうですね。全寮制ですし、帰省の時などでないと馬車を使うことはないと思います。
ですが、入寮の際はどうしても荷物が多くなってしまいますから、専属の侍従侍女とは別に、実家から荷物を運んでくれる使用人も同伴しています。
我が公爵家の馬車以外は、停まっていないようですから、今日の入寮は私だけなのかもしれません。
馬車で混雑するのを防ぐために、入寮日は1週間の余裕があるみたいですから。
荷物を積んだ馬車の扉が開いて、降りて来た人物に、私は目を見はりました。
「お父様。何をなさっているの?」
そこにいたのは、モーリス王国で別れの挨拶をしたはずのお父様、ルーファス・イザヴェリ公爵家当主だったのです。
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