逆行令嬢は何度でも繰り返す〜もう貴方との未来はいらない〜

みおな

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天秤にかけるまでもなく《イザヴェリ公爵視点》

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「我が娘であるルーナ・イザヴェリを、隣国ガラティア王国に留学させたいと思います」

 執務中の国王陛下へ、留学許可の書類を差し出す。
 陛下はサインをしていた書類から顔を上げると、訝しげに眉を顰めた。

「は?ガラティアに留学?」

「ええ。ですから、ここへ了承のサインをして下さい」

「いや、しかし・・・」

 陛下が渋るのは理解る。
国王陛下は、ルーナに魔力があることを知っている。

 ルーナはその魔力を使う術を知らないが、魔力を持つ者が国に居れば、その国は潤うという伝承がある。

 だからこそ、陛下は私を宰相にして他国に移住しないよう身近に置いた。

 そしておそらく、ルーナの言った通り、王太子殿下であるフィリップ殿下と婚約を結ばせようとするだろう。
 そうすれば、次代に魔力を持つ者が王家に生まれるかもしれないからだ。

 モーリス王国では、王族に嫁げるのは公爵家か侯爵家の令嬢に限られる。
 フィリップ殿下と年齢の近い令嬢がいるのは、公爵家では我がイザヴェリ家だけだが、確か侯爵家にも1歳年下のご令嬢がいるはずだ。

 ルーナが望むなら、フィリップ殿下とは絶対に婚約させない。

 何故、あの娘がそんなことを言い出したのかは分からない。
 フィリップ殿下とはまだ会ったこともないはずだ。

 だが、大切なルーナの希望だ。ならば、それを叶えるのが私の役目だ。

 私が黙ったまま書類を差し出すと、陛下は仕方なさそうにそれを受け取り、しかしサインをせずに書類と私の顔をチラチラと見る。

 ああ。これは交換条件として婚約を言い出しそうだな。

「留学は許可してもいい。いいが、そのかわり・・・」

「ええ。このまま宰相としてモーリス王国に貢献しましょう」

「え?いや、それはそう願いたいが、それだけでなくフィリップの・・・」

「ルーナには、ルーナの望む相手と婚姻させるつもりです。もし、無理強いをなさるようでしたら、我がイザヴェリ家は平民になってでもこのモーリス王国から出て行きます」

 王家からの申し込みを断ることは出来ない。下の者が上の者に否を唱えることは、貴族社会では許されないことなのだ。

 だが、そんなことは私には関係ない。
それを言うなら、国王陛下の言葉を遮っている時点で、私は不敬とみなされ、罰を受けなくてはならない。

 それを陛下が咎めないのは、私が魔力持ちで、このモーリス王国に富を与える存在だからだ。

 それは伝承として王家に伝わっていて、そのことを信じるが故に、王家にもガラティア王国王族を娶った過去がある。

 そして、ガラティア王国にかつて留学していた私は、それが単なる伝承ではなく真実であることを知っていたー


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