逆行令嬢は何度でも繰り返す〜もう貴方との未来はいらない〜

みおな

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目覚め

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 意識がゆっくりと浮上します。
私は・・・確かフィリップ様に・・・

『首を刎ねろ』

 冷ややかな声が頭の中に響いて、私は思わず自分の首に手を当てました。

 そして、触れた自分の手の温かさに慌てて起き上がりました。

 え?私は確か、王立学園の卒業パーティーでフィリップ様に冤罪をかけられて、断頭台に連れて行かれたような。

 もちろん、死んだ瞬間のことは覚えていませんが、どう見てもこの首が刎ねられた様子はありません。

 そして、私は気付きました。自分の手の小ささに。

 え?どういうことでしょうか。どうしてこんなに手が小さいのでしょう?

 鏡に向かおうとして、ベッドの高さにびっくりしてしまいます。

 恐る恐る覗いた鏡には、幼い頃の私が映っていました。
 髪の長さから鑑みるに、おそらく10歳くらいではないでしょうか。

 意味が・・・わかりません。何故、首を刎ねられた私が、10歳くらいの子供の姿になっているのでしょうか?

 それとも、今までのことが全て夢だとでもいうのでしょうか。
 ですが、王太子妃教育も王妃教育も、記憶しているのに、それが夢だなんてあり得るのでしょうか?

 私が呆然としたまま鏡と向かい合っていると、部屋の扉がノックされ、年若い侍女が入ってきました。

「おはようございます、ルーナお嬢様。お目覚めだったんですね」

「マナ・・・?」

「はい。どうかされましたか?」

 目の前にいるのは、あの卒業パーティーに私を綺麗に着飾ってくれ、公爵邸から見送ってくれた私専属の侍女のミナの姉で、マナです。

 私より5歳年上のマナは、私が学園に入学した年に、妹のミナに後を任せてお嫁に行ったはずです。

 それなのに、どうして?
本当に、私は夢を見ていたのでしょうか?

 本当に夢だと言うのなら、どうしてあんなに悲しい夢を見てしまったのでしょう。

 フィリップ様に疎まれ、憎しみのこもった瞳で見られる夢なんて。

 あの苦しかった王妃教育も、会いにすら来てくれなくなったお茶会も、エスコートされなくて1人で向かった卒業パーティーも、全部全部、本当に夢なのでしょうか。

 フィリップ様の傍にいた男爵令嬢の名前も、ドレスの色も、全部覚えているのに?

 フィリップ様のあまり素行の良くないご友人に引きずられ、連れて行かれた断頭台の冷たさも、本当に夢だというのでしょうか。

 だけど、目の前にはお嫁に行ったはずなのマナがいて、私も10歳の姿で・・・

「ううん、なんでもないの。マナ、おはよう」

「はい、おはようございます。お着替えしましょうか」

 マナに促され、私はにっこりと微笑みました。
きっと、あれは夢だったのです。




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