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第七話 非人道的な王子
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■カーティス視点■
翌朝。愛しのバネッサとの熱い一夜を過ごし、心身共に満たされていた僕は、朝日を体に浴びながら、エリンを今後どうするか考えていた。
とりあえずは、昨夜言った通り、鎖でつないでおくのは決定として……僕達を侮辱した罪で処刑してやるのも一興か。
確かにやつは聖女としての利用価値はあるが、別に薬なんて他の薬師でも作れるし、祈りを捧げるのだって出来る。貴族の連中はバカしかいないから、これは聖女の薬だって言っておけば騙されるだろう。
「どいつもこいつもバカばかりだな。やはり世界に選ばれし僕こそが天才であり、至高の存在というわけだ」
「うぅん……もう、朝から何を騒いでおられるのですか?」
「ああバネッサ。すまない、起こしてしまったね」
まだベッドの上で眠っていたバネッサは、眠気眼を擦りながらも、薄い掛け布団で前を隠しながら起き上がった。
「もう、そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいですわ」
「君の体は美しいのだから、恥ずかしがることはないだろう」
昨晩だって散々見ているものなのだから、恥ずかしがる必要もないだろうに。
それにしても、夜の暗闇の中、ほんのりとランプの明かりで照らされるバネッサの体もいいけど、朝日で眩しく照らされる体も美しい。
……いっそのこと、ここで掛け布団を奪い取ってしまえばいいじゃないか。まだ朝食まで時間があるし、それまでたっぷりとバネッサの美しい体を堪能――
「カーティス様、大変でございます!」
——しようとした矢先、無粋な兵士がノックも無しに部屋の中に飛び込んできた。
「なにごとだ、朝から騒がしい。バネッサと過ごしているのに、貴様のせいで台無しだ」
「申し訳ございません! ですが、大至急ご報告しなければならないことが!」
「なんだ? どうでもいいことなら、極刑にするぞ」
「エリン様が……エリン様がいなくなりました!」
なんだと、エリンが? そんなはずはない。エリンの部屋には見張りが付いているし、城の中も夜間でも常に見張りはいる。逃げられるはずがない。
まさか、僕の邪魔をするための嘘じゃないだろうな? 仮にそうだとしたら、極刑どころの騒ぎではないぞ。
「とにかく離宮にお越しくださいませ!」
「はあ、わかった。バネッサ、ちょっと行ってくるよ」
「わかりましたわ。お気をつけて」
部屋に入ってきた兵士と共に離宮に行くと、いつもの様に部屋の前にはハウレウが立っていた。朝早くからご苦労なことだ。
「おはようございます、カーティス様」
「そこを退け」
律義に挨拶をしてくるハウレウを押しのけて部屋の中に入ると、確かにそこにエリンの姿はなかった。
バカな、本当に逃げられたというのか? 一体どうやって?
「おい、ハウレウ! エリンはどこにいった!?」
「申し訳ございません。私がちょっと目を離した隙に、これを残して出て行かれたようで」
ハウレウが僕に渡してきた紙切れには、エリンが残した言葉が書いてあった。
「生きていくのがつらくなった、私は外の世界を一目見てから命を絶ちます、いままでありがとうございました……だと?」
何を勝手に自分の死ぬタイミングを決めているんだ、あのバカ女が。それを決められるのは、次世代の神である僕だけだというのに。まったく忌々しい!
「ハウレウ、貴様はこの部屋の見張りだろう!? あのバカが告発してきた時もそうだったが、貴様は一体何をしている!?」
「申し訳ございません。私も年ですので、どうにも注意力が散漫になってしまいまして」
「くだらない言い訳をするな、死にぞこないの老いぼれが!」
自分のしでかした罪の重さを理解していないのか、ハウレウは全く反省の色を見せず、淡々と話していた。
僕はそれがあまりにも腹立たしくて、全力でハウレウの顔面を殴りつけた。
相手が年寄りだとか、長年城に勤めている人間とか、そんなことは僕には一切関係ない。なぜなら、僕は王族で次世代の神だから、何をしても許される。
「おい貴様、至急国で腕の良い薬師を探せ!」
「え、エリン様を探されないのですか?」
「死人を探しても意味が無いだろう! やつらはバカだから、普通の薬師でもバレやしない! それと、ハウレウを牢屋に入れておけ!」
「ハウレウ殿をでございますか!?」
「そうだ。僕の玩具を逃がした罪は重いからな!」
「し、しかし……」
「どいつもこいつも、僕をこれ以上イライラさせるな! 貴様らは僕の言うことを聞いていればいいんだよ!」
ここまで僕を連れてきた兵士を殴りつけて、無理やりハウレウを地下にある牢屋へと連れていかせた。
あの老いぼれめ、どうしてくれようか。重罰は当然として……そうだ、エリンに出来なかった分、あいつでたっぷり遊んでから罰を下してやろう。
「エリン様、どうかご無事で……さようなら」
翌朝。愛しのバネッサとの熱い一夜を過ごし、心身共に満たされていた僕は、朝日を体に浴びながら、エリンを今後どうするか考えていた。
とりあえずは、昨夜言った通り、鎖でつないでおくのは決定として……僕達を侮辱した罪で処刑してやるのも一興か。
確かにやつは聖女としての利用価値はあるが、別に薬なんて他の薬師でも作れるし、祈りを捧げるのだって出来る。貴族の連中はバカしかいないから、これは聖女の薬だって言っておけば騙されるだろう。
「どいつもこいつもバカばかりだな。やはり世界に選ばれし僕こそが天才であり、至高の存在というわけだ」
「うぅん……もう、朝から何を騒いでおられるのですか?」
「ああバネッサ。すまない、起こしてしまったね」
まだベッドの上で眠っていたバネッサは、眠気眼を擦りながらも、薄い掛け布団で前を隠しながら起き上がった。
「もう、そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいですわ」
「君の体は美しいのだから、恥ずかしがることはないだろう」
昨晩だって散々見ているものなのだから、恥ずかしがる必要もないだろうに。
それにしても、夜の暗闇の中、ほんのりとランプの明かりで照らされるバネッサの体もいいけど、朝日で眩しく照らされる体も美しい。
……いっそのこと、ここで掛け布団を奪い取ってしまえばいいじゃないか。まだ朝食まで時間があるし、それまでたっぷりとバネッサの美しい体を堪能――
「カーティス様、大変でございます!」
——しようとした矢先、無粋な兵士がノックも無しに部屋の中に飛び込んできた。
「なにごとだ、朝から騒がしい。バネッサと過ごしているのに、貴様のせいで台無しだ」
「申し訳ございません! ですが、大至急ご報告しなければならないことが!」
「なんだ? どうでもいいことなら、極刑にするぞ」
「エリン様が……エリン様がいなくなりました!」
なんだと、エリンが? そんなはずはない。エリンの部屋には見張りが付いているし、城の中も夜間でも常に見張りはいる。逃げられるはずがない。
まさか、僕の邪魔をするための嘘じゃないだろうな? 仮にそうだとしたら、極刑どころの騒ぎではないぞ。
「とにかく離宮にお越しくださいませ!」
「はあ、わかった。バネッサ、ちょっと行ってくるよ」
「わかりましたわ。お気をつけて」
部屋に入ってきた兵士と共に離宮に行くと、いつもの様に部屋の前にはハウレウが立っていた。朝早くからご苦労なことだ。
「おはようございます、カーティス様」
「そこを退け」
律義に挨拶をしてくるハウレウを押しのけて部屋の中に入ると、確かにそこにエリンの姿はなかった。
バカな、本当に逃げられたというのか? 一体どうやって?
「おい、ハウレウ! エリンはどこにいった!?」
「申し訳ございません。私がちょっと目を離した隙に、これを残して出て行かれたようで」
ハウレウが僕に渡してきた紙切れには、エリンが残した言葉が書いてあった。
「生きていくのがつらくなった、私は外の世界を一目見てから命を絶ちます、いままでありがとうございました……だと?」
何を勝手に自分の死ぬタイミングを決めているんだ、あのバカ女が。それを決められるのは、次世代の神である僕だけだというのに。まったく忌々しい!
「ハウレウ、貴様はこの部屋の見張りだろう!? あのバカが告発してきた時もそうだったが、貴様は一体何をしている!?」
「申し訳ございません。私も年ですので、どうにも注意力が散漫になってしまいまして」
「くだらない言い訳をするな、死にぞこないの老いぼれが!」
自分のしでかした罪の重さを理解していないのか、ハウレウは全く反省の色を見せず、淡々と話していた。
僕はそれがあまりにも腹立たしくて、全力でハウレウの顔面を殴りつけた。
相手が年寄りだとか、長年城に勤めている人間とか、そんなことは僕には一切関係ない。なぜなら、僕は王族で次世代の神だから、何をしても許される。
「おい貴様、至急国で腕の良い薬師を探せ!」
「え、エリン様を探されないのですか?」
「死人を探しても意味が無いだろう! やつらはバカだから、普通の薬師でもバレやしない! それと、ハウレウを牢屋に入れておけ!」
「ハウレウ殿をでございますか!?」
「そうだ。僕の玩具を逃がした罪は重いからな!」
「し、しかし……」
「どいつもこいつも、僕をこれ以上イライラさせるな! 貴様らは僕の言うことを聞いていればいいんだよ!」
ここまで僕を連れてきた兵士を殴りつけて、無理やりハウレウを地下にある牢屋へと連れていかせた。
あの老いぼれめ、どうしてくれようか。重罰は当然として……そうだ、エリンに出来なかった分、あいつでたっぷり遊んでから罰を下してやろう。
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