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第十一話 お母様の愛
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――私のお母様は、人間の父と、精霊の女性の間に生まれた人だ。
一口に精霊といっても、種類はたくさん存在する。お母様からは、人族と見た目がさほど変わらず、そして高い魔力を待ち合わせた人だったと聞いている。
人間と精霊のハーフ……そんな珍しい存在を知ったお父様は、無理やりお母様の誘拐し、住んでいた森を焼き払い、そして……その日から、お母様に子供を孕ませるために、徹底的な管理がされた。
管理とはいっても、優遇されていたわけではない。むしろ、酷い仕打ちを受けていたそうだ。お父様は、お母様のことを、子供を産むための道具としか思っていなかった。
来る日も来る日も、お父様に言い寄られて、重ねたくもない肌を重ねたお母様は、ついに私を身籠った。
私は無事に生まれ、お父様も使用人達も大喜び。しかし、すぐに行われた魔力と加護の検査で、驚くべきことが分かった。
私は、精霊のクオーターということもあってか、精霊の加護は凄まじいものだったが、魔力がほぼゼロに近い量しかないと言われてしまった。
いくら加護があっても、魔力がなければ何の意味もない――結果、私は生まれて早々に無能扱いされ、お母様も失望されて無能扱いをされ、親子揃って汚い小屋に押し込まれた。
その後、お父様は別の女性に手を出し、魔法の才能に優れた子供……マーガレットが生まれ、大切に育てた。
一方で、お母様は今の私と同じように、汚い仕事や、つらい仕事をさせられたが、お母様は私のために愚痴の一つもこぼさずにやってくれていた。
しかし、ついに限界が来てしまって……お母様は寝て過ごすことが多くなった。体を壊してしまったの。
幼い私は、付きっきりで看病したが、まだ幼い自分には、どうすることも出来なかった。助けを呼ぼうにも、誰も助けてくれない。
私は絶望した。生きる気力も湧かなくて、このままお母様が死んだら、自分も死んじゃえばいいやと考えていた。そんな矢先、とんでもない知らせが飛び込んできた。
なんと、国内にある広大な森で、精霊たちが怒り狂っていて、大変なことになっているという知らせだった。
これは後から知ったのだが、我が家を含めたいくつかの貴族や王家が、必要以上に狩りをしたり、物を捨てたり、自然を破壊したせいで、精霊が怒ってしまったそうだ。
このままでは、その森だけじゃなく、他の地域にも被害が出てしまう。それを静めるために選ばれたのは、同じ精霊の力を持つ、私とお母様だった。役目の名は……精霊の怒りを収めるための、生贄。
こうして、私はお母様と一緒に、突風が吹き荒れる森の入口に連れて来られた。
大きな木ですら、簡単になぎ倒しそうな風を相手に、私なんて成す術もなく飛ばされそうになったが、お母様が抱っこをしてくれたおかげで、何とかなった。
そんな森を必死に進んでいると、森の中心で暴れる何かがいた。風のコア……みたいな感じの、不思議な精霊だった。
『お願いいたします。怒りを静めてください! 私達は、深く反省しております!』
お母様がいくらお願いしても、精霊は聞いてくれなかった。それどころか、私達に攻撃してきた。
『えっ……』
『シャーロット、あぶない!』
突然すぎて動けなかった私が次に目にしたのは、風の刃がお母様の胸を貫き、片腕を吹き飛ばした場面だった。
『あ……あ、ああ……』
『……大丈夫? 怪我は……無い?』
『う、うん……でも、お母様が……!』
『私は……大丈夫!』
嘘だ。お母様の体は、攻撃してきた精霊の力のせいか、貫かれた部分から、どんどんと崩壊が始まっていた。
『やだ、お母様……死なないでよぉ! ひとりぼっちはやだよぉ……!』
『大丈夫よ……私の愛しいシャーロット。私が……ずっとずっと、あなたのことを見守り、支えるわ』
そう言ったお母様の体は、眩い光に包まれていった。そして、その光はお母様の手に集まっていき、大きな杖へと姿を変えた。
『これを……あなたに……!』
『つ、杖……?』
『これはね……私の精霊の力を集めた杖なの。きっとあなたを……守ってくれるわ』
『こんなのいらない! 杖よりも、お母様と一緒にいたいもん!』
『ごめんね、本当はもっと一緒にいたかった。いつか二人で屋敷を出て、幸せに暮らそうって話してたのに……ごめんね……ごめんね……つらい思いばかりさせて、ごめんね……』
お母様の体はどんどんと崩れてまるで、砂のようになっていく。
『おかあさま……やだ、いかないで……』
『ごめんね……こんなお母さんでごめんね……あなたは、自分の思う通りに生きて……しあわせ、に、なって……シャー……ット……あ、いし、て……る……』
きっと想像を絶する痛みと苦しみがあるはずなのに、お母様は最後まで私に笑顔を向けて……そのまま崩れ落ち、灰となって消えていった。
その後、私は精霊と何とか対話して落ち着いてもらい、無事に家に帰ることが出来た。
無事に精霊を静めたことの功績は、お父様のものとなり、国家に表彰されるまでになった。自分達が原因なのに……事態が収束したのも、お母様のおかげなのに。
その時、私は静かに涙を流しながら、心に誓った。罪もないお母様をこんな目に合わせた家族に……長年に渡って自分達を苦しめた家族に、復讐をしようと。
その後、私は家族にいくら虐げられても、歯を食いしばって過ごしていた。理不尽な暴力を受けても、罵声を浴びせられても、露骨な贔屓をされても、必死に耐えた。
そんな私の元に、ヨルダン様から婚約を結びたいと申し出があった。
その婚約の条件として、お父様は両家の良縁と、杖の権利は結婚しても自分達の物にしたいと提案した。イグウィス家は、それを了承した。
どうやら、イグウィス家は私の杖にはさほど興味がなく、当時のヨルダン様も、私の容姿を気に入って妻にしたがっていただけだった。
とはいっても、すぐに私はヨルダン様に興味を持たれなくなり、ただのお飾りの婚約者になってしまうのだが……。
なんにせよ、私はベルナール家とイグウィス家の両家を結ぶ、都合の良い人柱として、そして杖の所有者として、つらく苦しい日々を更に過ごすこととなり――今に至るというわけだ。
一口に精霊といっても、種類はたくさん存在する。お母様からは、人族と見た目がさほど変わらず、そして高い魔力を待ち合わせた人だったと聞いている。
人間と精霊のハーフ……そんな珍しい存在を知ったお父様は、無理やりお母様の誘拐し、住んでいた森を焼き払い、そして……その日から、お母様に子供を孕ませるために、徹底的な管理がされた。
管理とはいっても、優遇されていたわけではない。むしろ、酷い仕打ちを受けていたそうだ。お父様は、お母様のことを、子供を産むための道具としか思っていなかった。
来る日も来る日も、お父様に言い寄られて、重ねたくもない肌を重ねたお母様は、ついに私を身籠った。
私は無事に生まれ、お父様も使用人達も大喜び。しかし、すぐに行われた魔力と加護の検査で、驚くべきことが分かった。
私は、精霊のクオーターということもあってか、精霊の加護は凄まじいものだったが、魔力がほぼゼロに近い量しかないと言われてしまった。
いくら加護があっても、魔力がなければ何の意味もない――結果、私は生まれて早々に無能扱いされ、お母様も失望されて無能扱いをされ、親子揃って汚い小屋に押し込まれた。
その後、お父様は別の女性に手を出し、魔法の才能に優れた子供……マーガレットが生まれ、大切に育てた。
一方で、お母様は今の私と同じように、汚い仕事や、つらい仕事をさせられたが、お母様は私のために愚痴の一つもこぼさずにやってくれていた。
しかし、ついに限界が来てしまって……お母様は寝て過ごすことが多くなった。体を壊してしまったの。
幼い私は、付きっきりで看病したが、まだ幼い自分には、どうすることも出来なかった。助けを呼ぼうにも、誰も助けてくれない。
私は絶望した。生きる気力も湧かなくて、このままお母様が死んだら、自分も死んじゃえばいいやと考えていた。そんな矢先、とんでもない知らせが飛び込んできた。
なんと、国内にある広大な森で、精霊たちが怒り狂っていて、大変なことになっているという知らせだった。
これは後から知ったのだが、我が家を含めたいくつかの貴族や王家が、必要以上に狩りをしたり、物を捨てたり、自然を破壊したせいで、精霊が怒ってしまったそうだ。
このままでは、その森だけじゃなく、他の地域にも被害が出てしまう。それを静めるために選ばれたのは、同じ精霊の力を持つ、私とお母様だった。役目の名は……精霊の怒りを収めるための、生贄。
こうして、私はお母様と一緒に、突風が吹き荒れる森の入口に連れて来られた。
大きな木ですら、簡単になぎ倒しそうな風を相手に、私なんて成す術もなく飛ばされそうになったが、お母様が抱っこをしてくれたおかげで、何とかなった。
そんな森を必死に進んでいると、森の中心で暴れる何かがいた。風のコア……みたいな感じの、不思議な精霊だった。
『お願いいたします。怒りを静めてください! 私達は、深く反省しております!』
お母様がいくらお願いしても、精霊は聞いてくれなかった。それどころか、私達に攻撃してきた。
『えっ……』
『シャーロット、あぶない!』
突然すぎて動けなかった私が次に目にしたのは、風の刃がお母様の胸を貫き、片腕を吹き飛ばした場面だった。
『あ……あ、ああ……』
『……大丈夫? 怪我は……無い?』
『う、うん……でも、お母様が……!』
『私は……大丈夫!』
嘘だ。お母様の体は、攻撃してきた精霊の力のせいか、貫かれた部分から、どんどんと崩壊が始まっていた。
『やだ、お母様……死なないでよぉ! ひとりぼっちはやだよぉ……!』
『大丈夫よ……私の愛しいシャーロット。私が……ずっとずっと、あなたのことを見守り、支えるわ』
そう言ったお母様の体は、眩い光に包まれていった。そして、その光はお母様の手に集まっていき、大きな杖へと姿を変えた。
『これを……あなたに……!』
『つ、杖……?』
『これはね……私の精霊の力を集めた杖なの。きっとあなたを……守ってくれるわ』
『こんなのいらない! 杖よりも、お母様と一緒にいたいもん!』
『ごめんね、本当はもっと一緒にいたかった。いつか二人で屋敷を出て、幸せに暮らそうって話してたのに……ごめんね……ごめんね……つらい思いばかりさせて、ごめんね……』
お母様の体はどんどんと崩れてまるで、砂のようになっていく。
『おかあさま……やだ、いかないで……』
『ごめんね……こんなお母さんでごめんね……あなたは、自分の思う通りに生きて……しあわせ、に、なって……シャー……ット……あ、いし、て……る……』
きっと想像を絶する痛みと苦しみがあるはずなのに、お母様は最後まで私に笑顔を向けて……そのまま崩れ落ち、灰となって消えていった。
その後、私は精霊と何とか対話して落ち着いてもらい、無事に家に帰ることが出来た。
無事に精霊を静めたことの功績は、お父様のものとなり、国家に表彰されるまでになった。自分達が原因なのに……事態が収束したのも、お母様のおかげなのに。
その時、私は静かに涙を流しながら、心に誓った。罪もないお母様をこんな目に合わせた家族に……長年に渡って自分達を苦しめた家族に、復讐をしようと。
その後、私は家族にいくら虐げられても、歯を食いしばって過ごしていた。理不尽な暴力を受けても、罵声を浴びせられても、露骨な贔屓をされても、必死に耐えた。
そんな私の元に、ヨルダン様から婚約を結びたいと申し出があった。
その婚約の条件として、お父様は両家の良縁と、杖の権利は結婚しても自分達の物にしたいと提案した。イグウィス家は、それを了承した。
どうやら、イグウィス家は私の杖にはさほど興味がなく、当時のヨルダン様も、私の容姿を気に入って妻にしたがっていただけだった。
とはいっても、すぐに私はヨルダン様に興味を持たれなくなり、ただのお飾りの婚約者になってしまうのだが……。
なんにせよ、私はベルナール家とイグウィス家の両家を結ぶ、都合の良い人柱として、そして杖の所有者として、つらく苦しい日々を更に過ごすこととなり――今に至るというわけだ。
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