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第十九話 心配かけて……!
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「サイラス様!!」
「えっ……エリシア!?」
やっと見つけたサイラス様は、体のあちこちを怪我していて、とても痛々しい姿になっていた。
早くサイラス様のところに行って、治療をしたいのに、グリムベアが私の前に立ちはだかり、サイラス様との接触を阻んでくる。
「逃げろ、エリシア! 俺は大丈夫だ!」
「そんなボロボロの体で言うセリフじゃないわよ! すぐに行くから待ってなさい!」
「グルルル……」
額に大きな傷があるグリムベアは、私のことを敵と認識はしているみたいだけど、得体の知れない相手にいきなり突進してくるほど、無謀ではないようだ。
しかし、逆にそれが私のことを殺すために、いつでも動けるように観察しているようにも見えた。
……怖い。一歩間違えれば、私の四肢は裂かれ、体中が食い荒らされるかもしれない。あの大きな体に踏みつぶされ、ぐちゃぐちゃにされるかもしれない。
考えれば考える程、悪いことが頭に過ぎり、恐怖で体がすくむ。
でも……絶対に逃げたりなんてしない。私がここで逃げたら、誰がカロ君のおじいちゃんを治すの? 誰が……あそこで傷ついている、無鉄砲なお人好しを助けるの!?
「こっちに来なさい!」
「ガアァァァァァ!!」
あんな大きな図体なのに、襲い掛かってくる勢いは、驚くほど速い。そのせいで、私は本来やるはずだった行動をしないで、頭を抱えながら避けてしまった。
改めてグリムベアの恐ろしさを見せつけられて、恐怖はさらに倍増してしまった。
それと同時に、ここで逃げてしまえばいいと、頭の中で悪魔が囁き始めた。
……こんなところで死んだら、苦しんでいる人達を救うという目標も、マグナス様に復讐をするという目標も、何も達成できない。ギルドなんて、探せばいくらでもあるのだから、別に固執する必要はないのかもしれない。
でも、私にはもう一つの新しい目標……サイラス様のギルドを、一緒に世界一にするというものがある!
そして……目の前で苦しんでいる人が……大切な人がいるのに、助けられないんじゃ、私の目標なんて絶対に達成できるわけないじゃない!!
「エリシアぁぁぁぁぁ!!!!」
もう怪我でボロボロのはずなのに、サイラス様は地鳴りがしそうなくらいの雄たけびを上げる
そして、グリムベアを思い切り蹴飛ばして怯ませると、私の前に立った。
「な、なにをしているの!? そんな怪我で、無理をしないで!」
「俺のせいで……! 目の前で愛する女性に死なせるわけにはいかないんだよ!」
怪我をしているのにあんな激しい動きをしたせいで、傷から更に出血している。その痛みは、私の想像なんて足元にも及ばないだろう。
現に、サイラス様はうめき声を上げながら、その場で膝をついてしまった。
「く、くそっ……情けねぇ……動けよ、俺の体! ここでやらなきゃ、いつやるってんだ!」
「無理をしないで、あなたは下がって!」
「馬鹿を言うな! エリシアじゃあいつには勝てない!」
ええ、そうね。私が腕力でグリムベアと殴り合ったら、私が千人いても足りないでしょうね。
でも、わざわざ私が相手の得意な状況に行く必要は無いわ!
「サイラス様、耳を塞いで!!」
完全に私に意識が向き、襲い掛かってきた瞬間に、私は森に来てすぐに取ってきた木の実を、思い切りグリムベアに叩きつけながら、自分の耳を塞いだ。
すると、まるでパンパンに膨れ上がった袋に針を刺した時に起こるような、甲高い大きな音が、辺り一帯に響き渡った。
この木の実は、勢いよく破裂させると、凄い大きな音が鳴る。それを利用して、グリムベアを追い払っていたという旨が書かれた本を読んで、この作戦を取り入れたの。
「ガ……ア……」
私達人間ですら耳が痛くなるような大きな音を、聴力が非常に優れているグリムベアが耐えられるはずもなく……驚いて逃げていった。
よかった、うまくいったわ。あの子には何の罪も無いし、驚かすのは心苦しいけど……こうするしかなかったの。
「サイラス様、大丈夫!?」
「ああ……エリシアこそ、怪我は無いか?」
「私の心配なんていいから! すぐに手当てをするから、痛くてもジッとしているのよ!」
「わ、わかっ――い、痛い!? もうちょっと優しくしてくれ!」
なにか騒いでいるけど、そんなものを気にしている暇など無い。とにかく早く手当てをしないと。
……見た目に反して、傷はそこまで深くは無さそうね。これなら命に別状は無さそうだけど、あまり長距離の移動をさせたら、傷口が悪化してしまいそう。
「サイラス様、ここから移動するわよ!」
私はサイラス様に肩を貸しながら立ち上がると、近くにあった巨木のうろの中に入り、その入り口を辺りにあった葉っぱを沢山敷き詰めて、見つかりにくいようにカモフラージュをした。
代わりにうろの中が暗くなってしまったけど、葉っぱの隙間から入ってくる光で、何とかなっている。
「おお、さすがエリシア。手当ても完璧だな……ありがとう」
「…………」
「い、いやぁ! グリムベアに出会っちゃったから、なんとかぶん殴って追い返そうと思ったんだけど、思った以上に頑丈でさ! おかげでサリューがあるところになかなか行けなくて、気づいたら夜が明けてたよ!」
「…………」
「でも、エリシアのおかげで何とかなりそうだな。さあ、早くサリューを――」
人がどれだけ心配したかもしれないで、いつものように明るく振舞うサイラス様の頬を、思い切りビンタした。
「え……エリシア……?」
私にビンタをされた驚きの声を漏らすサイラス様。それに対して、私は目から涙を流しながら、サイラス様の胸ぐらを掴んだ。
「みんなに心配をかけて、こんなに傷だらけになって! もし何かあったらどうするのよ! それに、なによその態度! 私に心配をかけないように、わざと明るく振舞って誤魔化そうって魂胆!? 冗談じゃないわ!!」
「エリシア……」
「私の……私の、気持ちも知らないで……そんなに、傷だらけになって……ばかぁ……し、心配……したんだからぁ……あなたがいなくなったら、私……わたしぃ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
相手は体中を怪我しているというのに。大きな音を出したら、グリムベアにまた見つかってしまうかもしれないのに。私はサイラス様に強く抱きつきながら、子供のように泣きじゃくった。
そんな私に、サイラス様は一切痛がったり怒ったりする素振りなど見せず、私のことを優しく抱きしめてくれた。
「……ごめん。俺が馬鹿だった……反省してる。もうこんな無茶はしない」
「やくそく、してよぉ……!」
「ああ、約束だ」
教師をしていた時の威厳なんてどこへやら……私はそのままサイラス様の腕の中で、しばらく泣き続けた――
「えっ……エリシア!?」
やっと見つけたサイラス様は、体のあちこちを怪我していて、とても痛々しい姿になっていた。
早くサイラス様のところに行って、治療をしたいのに、グリムベアが私の前に立ちはだかり、サイラス様との接触を阻んでくる。
「逃げろ、エリシア! 俺は大丈夫だ!」
「そんなボロボロの体で言うセリフじゃないわよ! すぐに行くから待ってなさい!」
「グルルル……」
額に大きな傷があるグリムベアは、私のことを敵と認識はしているみたいだけど、得体の知れない相手にいきなり突進してくるほど、無謀ではないようだ。
しかし、逆にそれが私のことを殺すために、いつでも動けるように観察しているようにも見えた。
……怖い。一歩間違えれば、私の四肢は裂かれ、体中が食い荒らされるかもしれない。あの大きな体に踏みつぶされ、ぐちゃぐちゃにされるかもしれない。
考えれば考える程、悪いことが頭に過ぎり、恐怖で体がすくむ。
でも……絶対に逃げたりなんてしない。私がここで逃げたら、誰がカロ君のおじいちゃんを治すの? 誰が……あそこで傷ついている、無鉄砲なお人好しを助けるの!?
「こっちに来なさい!」
「ガアァァァァァ!!」
あんな大きな図体なのに、襲い掛かってくる勢いは、驚くほど速い。そのせいで、私は本来やるはずだった行動をしないで、頭を抱えながら避けてしまった。
改めてグリムベアの恐ろしさを見せつけられて、恐怖はさらに倍増してしまった。
それと同時に、ここで逃げてしまえばいいと、頭の中で悪魔が囁き始めた。
……こんなところで死んだら、苦しんでいる人達を救うという目標も、マグナス様に復讐をするという目標も、何も達成できない。ギルドなんて、探せばいくらでもあるのだから、別に固執する必要はないのかもしれない。
でも、私にはもう一つの新しい目標……サイラス様のギルドを、一緒に世界一にするというものがある!
そして……目の前で苦しんでいる人が……大切な人がいるのに、助けられないんじゃ、私の目標なんて絶対に達成できるわけないじゃない!!
「エリシアぁぁぁぁぁ!!!!」
もう怪我でボロボロのはずなのに、サイラス様は地鳴りがしそうなくらいの雄たけびを上げる
そして、グリムベアを思い切り蹴飛ばして怯ませると、私の前に立った。
「な、なにをしているの!? そんな怪我で、無理をしないで!」
「俺のせいで……! 目の前で愛する女性に死なせるわけにはいかないんだよ!」
怪我をしているのにあんな激しい動きをしたせいで、傷から更に出血している。その痛みは、私の想像なんて足元にも及ばないだろう。
現に、サイラス様はうめき声を上げながら、その場で膝をついてしまった。
「く、くそっ……情けねぇ……動けよ、俺の体! ここでやらなきゃ、いつやるってんだ!」
「無理をしないで、あなたは下がって!」
「馬鹿を言うな! エリシアじゃあいつには勝てない!」
ええ、そうね。私が腕力でグリムベアと殴り合ったら、私が千人いても足りないでしょうね。
でも、わざわざ私が相手の得意な状況に行く必要は無いわ!
「サイラス様、耳を塞いで!!」
完全に私に意識が向き、襲い掛かってきた瞬間に、私は森に来てすぐに取ってきた木の実を、思い切りグリムベアに叩きつけながら、自分の耳を塞いだ。
すると、まるでパンパンに膨れ上がった袋に針を刺した時に起こるような、甲高い大きな音が、辺り一帯に響き渡った。
この木の実は、勢いよく破裂させると、凄い大きな音が鳴る。それを利用して、グリムベアを追い払っていたという旨が書かれた本を読んで、この作戦を取り入れたの。
「ガ……ア……」
私達人間ですら耳が痛くなるような大きな音を、聴力が非常に優れているグリムベアが耐えられるはずもなく……驚いて逃げていった。
よかった、うまくいったわ。あの子には何の罪も無いし、驚かすのは心苦しいけど……こうするしかなかったの。
「サイラス様、大丈夫!?」
「ああ……エリシアこそ、怪我は無いか?」
「私の心配なんていいから! すぐに手当てをするから、痛くてもジッとしているのよ!」
「わ、わかっ――い、痛い!? もうちょっと優しくしてくれ!」
なにか騒いでいるけど、そんなものを気にしている暇など無い。とにかく早く手当てをしないと。
……見た目に反して、傷はそこまで深くは無さそうね。これなら命に別状は無さそうだけど、あまり長距離の移動をさせたら、傷口が悪化してしまいそう。
「サイラス様、ここから移動するわよ!」
私はサイラス様に肩を貸しながら立ち上がると、近くにあった巨木のうろの中に入り、その入り口を辺りにあった葉っぱを沢山敷き詰めて、見つかりにくいようにカモフラージュをした。
代わりにうろの中が暗くなってしまったけど、葉っぱの隙間から入ってくる光で、何とかなっている。
「おお、さすがエリシア。手当ても完璧だな……ありがとう」
「…………」
「い、いやぁ! グリムベアに出会っちゃったから、なんとかぶん殴って追い返そうと思ったんだけど、思った以上に頑丈でさ! おかげでサリューがあるところになかなか行けなくて、気づいたら夜が明けてたよ!」
「…………」
「でも、エリシアのおかげで何とかなりそうだな。さあ、早くサリューを――」
人がどれだけ心配したかもしれないで、いつものように明るく振舞うサイラス様の頬を、思い切りビンタした。
「え……エリシア……?」
私にビンタをされた驚きの声を漏らすサイラス様。それに対して、私は目から涙を流しながら、サイラス様の胸ぐらを掴んだ。
「みんなに心配をかけて、こんなに傷だらけになって! もし何かあったらどうするのよ! それに、なによその態度! 私に心配をかけないように、わざと明るく振舞って誤魔化そうって魂胆!? 冗談じゃないわ!!」
「エリシア……」
「私の……私の、気持ちも知らないで……そんなに、傷だらけになって……ばかぁ……し、心配……したんだからぁ……あなたがいなくなったら、私……わたしぃ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
相手は体中を怪我しているというのに。大きな音を出したら、グリムベアにまた見つかってしまうかもしれないのに。私はサイラス様に強く抱きつきながら、子供のように泣きじゃくった。
そんな私に、サイラス様は一切痛がったり怒ったりする素振りなど見せず、私のことを優しく抱きしめてくれた。
「……ごめん。俺が馬鹿だった……反省してる。もうこんな無茶はしない」
「やくそく、してよぉ……!」
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