13 / 16
第十三話 復活の儀式
しおりを挟む
アルバート様と一緒に亀を採取しに行ってから数日後、私は例の地下室へと向かって歩いていた。その隣には、お義母様の姿もある。
「ねえフェリーチェ。一体ここは何なの? 急に来てくれと言われて来たけど、ちょっと予想外だわ」
「大丈夫です。私を信じてください」
妹さんが眠るあの部屋へと続く階段を降りる中、事情を知らないお義母様は少し不安そうな雰囲気を醸し出していた。
ついて来てと言われてきたら、こんなよくわからない不気味な階段に連れて来られたら、誰だって警戒するに決まっているわ。
「着きましたよ」
「ここは……随分と広い部屋ね……しかも、こんな大きな魔方陣……え、アルバート?」
「お待ちしてました、母上。ようやく完成したので、ぜひ母上にも同席していただきたくて」
アルバート様は、お義様と一緒に部屋の中心に向かう。そこには、今日も静かに眠る妹さんの姿があった。
「え……め、メア……!? どうしてここにメアが!?」
「驚くのも無理はありません。僕が順番に説明をします」
動揺を隠せないお義母様に、アルバート様は今までの研究をしていた内容や、自分の気持ち、妹さん……いや、メアさんがどうしてここにいるのかといった、全ての事を説明をした。
最初は驚いていたお義母様だったけれど、話を聞いていくうちに少しずつ冷静さを取り戻してくれたわ。
「そ、そうだったの……いまだに状況を飲み込めないのだけれど……」
「心配をかけて申し訳ない。僕は妹を……メアとまた一緒に……」
「本当にあなたは優しい子ね。って……もしかして、フェリーチェもこの件を知っていたの?」
「はい。事故でこの部屋の事を知ってからは、微力ながらお手伝いをしてました」
「そうだったの……急に図書館に通いだしたり、二人で遠出したのも、これが関わってるのかしら」
「仰る通りです、お義母様」
「アルバートの為に、そして私のお願いを聞いてくれて、本当にありがとう」
お義母様は少し涙声になりながら、私の事をそっと抱きしめてくれた。その抱擁は、とても安心できるもので……これが母親の愛情なんだと思った。
「フェリーチェ、屋敷の使用人達には声をかけてくれたかな?」
「はい。仕事でどうしても抜けれない人達以外は、来てくれるそうです」
「そうか。彼らにも沢山迷惑をかけたし、妹を大切にしてくれた人も多い。だから、事情説明と再会の場にいてほしかったが……」
「もう少し待っていましょう」
私がそう言うと、二人は頷いてから、メアさんの事を優しく撫で始めた。その行動だけでも、とても愛していたんだなというのがわかるわ。
「またあなたに触れられるなんてね……本当に綺麗な顔で……私ね、まだあなたが亡くなったのが信じられないのよ」
「大丈夫です、母上。僕が必ず……」
「頑張ってって言いたいけど、無理だけはしないで。自分の身を滅ぼしてでも復活させたところで、メアは喜ばないわよ」
「肝に銘じておきます」
そんな事をしている間に、来れる使用人達が全員部屋に集まった。そこで、お義母様と同じような説明をしてから、アルバート様はスッと右手を上げた。
「では……これより儀式を執り行う!」
アルバート様が指をパチンっと鳴らすと、魔方陣が内側から外側に向かって、徐々に光りだし始めた。
上手く行くと良いんだけど……結果を見るまで、不安感を拭う事は出来なさそうね。
「ここから一気にやるから、みんな気を付けていてくれ!」
忠告をしてから、アルバート様は液体が入った瓶を取り出すと、その液体を地面に垂らした。すると、さっきまでとは比べ物にならないくらいの強い光と、凄まじい風が吹き荒れ始めた。
こ、これは本当に気を付けていて正解だわ! 目を開けているのもやっとだし、風で吹き飛ばされてしまいそう!
「くっ……外部から魔力を補っているのに、こんなに一気に消耗するだなんてね……だが!!」
光の向こうから、アルバート様の声が聞こえてくる。きっと魔法を完璧に発動させる為に頑張っているんだろう。
こんな時ですら、私には見守る事しか出来ないの……? 私にも何か出来る事は……!
「アルバート! あまり無茶をしては……!」
「大丈夫ですよ母上! この程度……メアを失った時の痛みに比べれば、可愛いものです!」
「っ……! あなたって子は……私にも手伝わせなさい! 母親として、息子が頑張っているのを見ているだけなんて出来ないわ!」
「母上……ありがとうございます! では、僕の隣で一緒に魔法陣に魔力を送ってください!」
「アルバート様、我々にもお手伝いをさせてください!!」
お義母様を皮切りに、集まってくれた使用人達も続々とアルバート様の元へと集まり、限界まで魔力の供給を行う。
私には大それた魔力も無いし、使える魔法も弱くて話にならないけど、これならきっとアルバート様の力になれるわ!
「フェリーチェ……!」
「私も、最後まで……いえ、今も昔も、そしてこれからも! あなたを隣で支えさせてください!」
私はアルバート様の手を取りながら、まるで愛の誓いをするかのような言葉を伝えると、アルバート様は力強く頷いた。
ずっと不幸だった私を救ってくれたアルバート様やお義母様……そして使用人の人達に恩返しをする為に、後先の事なんて考えずに魔力を渡すんだ!
「くっ……はぁぁぁぁぁぁ!!」
アルバート様の雄たけびと共に、今までで一番の光が辺り一面を覆いつくした。それはあまりにも眩しくて、目を開けているのは困難を極める程だった。
魔法は成功したのか? それとも失敗したのか? そんな事を考えていると、光はいつの間にか収まっていた。
「凄い光だったわね……みんな、怪我はないかしら?」
「私は大丈夫です、お義母様」
「僕もなんとか……魔力を消費しすぎて倒れそうですが……それよりも、メアは!?」
みんなの注目が集まる中、メアさんの体に光が吸い込まれるように消えていき……彼女はゆっくりと目を開けた。
「ねえフェリーチェ。一体ここは何なの? 急に来てくれと言われて来たけど、ちょっと予想外だわ」
「大丈夫です。私を信じてください」
妹さんが眠るあの部屋へと続く階段を降りる中、事情を知らないお義母様は少し不安そうな雰囲気を醸し出していた。
ついて来てと言われてきたら、こんなよくわからない不気味な階段に連れて来られたら、誰だって警戒するに決まっているわ。
「着きましたよ」
「ここは……随分と広い部屋ね……しかも、こんな大きな魔方陣……え、アルバート?」
「お待ちしてました、母上。ようやく完成したので、ぜひ母上にも同席していただきたくて」
アルバート様は、お義様と一緒に部屋の中心に向かう。そこには、今日も静かに眠る妹さんの姿があった。
「え……め、メア……!? どうしてここにメアが!?」
「驚くのも無理はありません。僕が順番に説明をします」
動揺を隠せないお義母様に、アルバート様は今までの研究をしていた内容や、自分の気持ち、妹さん……いや、メアさんがどうしてここにいるのかといった、全ての事を説明をした。
最初は驚いていたお義母様だったけれど、話を聞いていくうちに少しずつ冷静さを取り戻してくれたわ。
「そ、そうだったの……いまだに状況を飲み込めないのだけれど……」
「心配をかけて申し訳ない。僕は妹を……メアとまた一緒に……」
「本当にあなたは優しい子ね。って……もしかして、フェリーチェもこの件を知っていたの?」
「はい。事故でこの部屋の事を知ってからは、微力ながらお手伝いをしてました」
「そうだったの……急に図書館に通いだしたり、二人で遠出したのも、これが関わってるのかしら」
「仰る通りです、お義母様」
「アルバートの為に、そして私のお願いを聞いてくれて、本当にありがとう」
お義母様は少し涙声になりながら、私の事をそっと抱きしめてくれた。その抱擁は、とても安心できるもので……これが母親の愛情なんだと思った。
「フェリーチェ、屋敷の使用人達には声をかけてくれたかな?」
「はい。仕事でどうしても抜けれない人達以外は、来てくれるそうです」
「そうか。彼らにも沢山迷惑をかけたし、妹を大切にしてくれた人も多い。だから、事情説明と再会の場にいてほしかったが……」
「もう少し待っていましょう」
私がそう言うと、二人は頷いてから、メアさんの事を優しく撫で始めた。その行動だけでも、とても愛していたんだなというのがわかるわ。
「またあなたに触れられるなんてね……本当に綺麗な顔で……私ね、まだあなたが亡くなったのが信じられないのよ」
「大丈夫です、母上。僕が必ず……」
「頑張ってって言いたいけど、無理だけはしないで。自分の身を滅ぼしてでも復活させたところで、メアは喜ばないわよ」
「肝に銘じておきます」
そんな事をしている間に、来れる使用人達が全員部屋に集まった。そこで、お義母様と同じような説明をしてから、アルバート様はスッと右手を上げた。
「では……これより儀式を執り行う!」
アルバート様が指をパチンっと鳴らすと、魔方陣が内側から外側に向かって、徐々に光りだし始めた。
上手く行くと良いんだけど……結果を見るまで、不安感を拭う事は出来なさそうね。
「ここから一気にやるから、みんな気を付けていてくれ!」
忠告をしてから、アルバート様は液体が入った瓶を取り出すと、その液体を地面に垂らした。すると、さっきまでとは比べ物にならないくらいの強い光と、凄まじい風が吹き荒れ始めた。
こ、これは本当に気を付けていて正解だわ! 目を開けているのもやっとだし、風で吹き飛ばされてしまいそう!
「くっ……外部から魔力を補っているのに、こんなに一気に消耗するだなんてね……だが!!」
光の向こうから、アルバート様の声が聞こえてくる。きっと魔法を完璧に発動させる為に頑張っているんだろう。
こんな時ですら、私には見守る事しか出来ないの……? 私にも何か出来る事は……!
「アルバート! あまり無茶をしては……!」
「大丈夫ですよ母上! この程度……メアを失った時の痛みに比べれば、可愛いものです!」
「っ……! あなたって子は……私にも手伝わせなさい! 母親として、息子が頑張っているのを見ているだけなんて出来ないわ!」
「母上……ありがとうございます! では、僕の隣で一緒に魔法陣に魔力を送ってください!」
「アルバート様、我々にもお手伝いをさせてください!!」
お義母様を皮切りに、集まってくれた使用人達も続々とアルバート様の元へと集まり、限界まで魔力の供給を行う。
私には大それた魔力も無いし、使える魔法も弱くて話にならないけど、これならきっとアルバート様の力になれるわ!
「フェリーチェ……!」
「私も、最後まで……いえ、今も昔も、そしてこれからも! あなたを隣で支えさせてください!」
私はアルバート様の手を取りながら、まるで愛の誓いをするかのような言葉を伝えると、アルバート様は力強く頷いた。
ずっと不幸だった私を救ってくれたアルバート様やお義母様……そして使用人の人達に恩返しをする為に、後先の事なんて考えずに魔力を渡すんだ!
「くっ……はぁぁぁぁぁぁ!!」
アルバート様の雄たけびと共に、今までで一番の光が辺り一面を覆いつくした。それはあまりにも眩しくて、目を開けているのは困難を極める程だった。
魔法は成功したのか? それとも失敗したのか? そんな事を考えていると、光はいつの間にか収まっていた。
「凄い光だったわね……みんな、怪我はないかしら?」
「私は大丈夫です、お義母様」
「僕もなんとか……魔力を消費しすぎて倒れそうですが……それよりも、メアは!?」
みんなの注目が集まる中、メアさんの体に光が吸い込まれるように消えていき……彼女はゆっくりと目を開けた。
27
お気に入りに追加
499
あなたにおすすめの小説
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
死にたくないので私を嫌う侯爵様と結婚しましたが実は溺愛されていたようです
イトカワジンカイ
恋愛
その日は最悪だった。
婚約者の浮気発覚、婚約破棄、突然のトラブル。しまいには自分を嫌っているライオネスに書類を提出すればミスを指摘されて叱責されてしまう。
落ち込みつつも残業していると廊下から物音がしてみて見れば、ライオネスが立ち去って行くのが見えた。
その時、ライオネスが落として行った赤い宝石のアクセサリーをエアリスが拾うと眩い光が!
気づけばエアリスは不気味な場所にいた。
どういうことか戸惑っていると「不法侵入者め!」と言う声と共にに襲われるのだが、その声の主はライオネスだった。
曰く、ここは魔界で、迷い込んだ人間は死ぬしかないという。
動揺するエアリスに実は魔族だったライオネスは一つの提案をする。
「私と結婚しないか?」
魔界で生きるためにはライオネスと結婚する必要があるとのこと。
ライオネスは宝玉を落とした責任を取るというのだ。
自分を嫌う男性と結婚するしかなない!?結婚しないと死んでしまう!?
美形だけど中身ポンコツ純情乙女な魔族×自立系不運貴族令嬢のラブコメディ
※ノベルバでも掲載しています
辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです
茜カナコ
恋愛
辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです
シェリーは新しい恋をみつけたが……
何も出来ない妻なので
cyaru
恋愛
王族の護衛騎士エリオナル様と結婚をして8年目。
お義母様を葬送したわたくしは、伯爵家を出ていきます。
「何も出来なくて申し訳ありませんでした」
短い手紙と離縁書を唯一頂いたオルゴールと共に置いて。
※そりゃ離縁してくれ言われるわぃ!っと夫に腹の立つ記述があります。
※チョロインではないので、花畑なお話希望の方は閉じてください
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる