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第四十一話 魔法完成!!
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レオ様と一緒に過ごせない日々が始まってから、もう数ヶ月が経った。季節は既に秋になり、二学期も始まっていた。
あれから私は、細々した嫌がらせはされてきたものの、大騒ぎになるようなことはされずに過ごせていた。
一方のレオ様はずっと忙しそうで、屋敷にいないことも多くなり、屋敷にいても部屋に引きこもって、魔法の練習に明け暮れていた。
それに、いつからか私と目を合わせると、不自然に視線を逸らしてどこかに行くようになってしまったの。
私、なにかレオ様に避けられるようなことをしてしまったのだろうか? だって、一緒に過ごせなくなっても、屋敷で顔を合わせれば笑顔を向けてくれるし、会話だってしてくれてたのよ?
「はぁ、寂しい……せっかくの夏休みも、全然一緒に過ごせなかったし……代わりに勉強は捗ったけど……」
夏休みは、自分の好きな勉強ができる楽しい期間。それは今年も変わらないはずなのに、レオ様のことで頭がいっぱいで、捗りはしたけど楽しくはなかった。
改めて気づいたけど、私って本当にレオ様のことが好きになっていたのね。もちろん昔から好きだったのもあるけれど、再会してからずっと一緒だったのが、想像以上に影響が大きいみたい。
「アメリア殿、ルークです」
「どうぞ」
「失礼します」
私の部屋となった客間の窓から、夕焼けに染まる外を眺めながら、溜息を漏らしていると、ルーク先生が部屋の中に入ってきた。
そっか、帰ってきてからボーっとしてたら、もうルーク先生が来る時間になっていたのね。
「勉強を始める前に、この前行った小テストを返却します。一緒に復習しましょう」
「はい。うーん、さほど点数は高くないですね……」
「点数だけ見れば平均点程度に見えますが、アドミラル学園の学力に合わせて制作しているので、全国的に見ればかなり高いのですよ」
返された回答用紙を見ながら、私はぽつりと弱音を吐いてしまった。
ルーク先生の言う通り、全国で見れば良い方なのかもしれないけど、毎日勉強ばかりしているのに、シャーロットのようにトップレベルになれないのは、さすがにちょっと心に来る。
「あれ、魔法薬学の回答用紙はどうされたんですか?」
「もちろん持ってきていますよ。これは最後に渡そうと思っておりまして」
ルーク先生は、いつもの様に淡々と話しながら、私に魔法薬学の回答用紙を渡す。そこには……回答用紙全体を覆う、大きな花丸がついていた。
「アメリア殿はダメじゃありませんよ。この花丸がその証拠です」
「これって……!」
「はい。初めての満点です」
「満点……!」
満点と聞いて、さっきまでの落ち込んだ気持ちはどこかにいってしまった。それどころか、嬉しくて思わず飛び跳ねたくなってしまった。
だって、今まで学園やルーク先生のテストをいくつもやってきて、満点なんて生まれて初めて取ったのよ! 嬉しいに決まってるじゃない!
「本当に素晴らしい結果です。まだ学生とは思えない理解力です。この調子で勉強を続ければ、立派な魔法薬師になれるでしょう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
ルーク先生にそんなことを言っていただけるなんて、本当に嬉しい。これに驕らずに勉強して、立派な魔法薬師にならなきゃ。
そうすれば、あの時のレオ様みたいなことになっても、大切な人を助けられるわよね。
「では、間違えた所の復習を――」
「アメリア!!」
「ひゃい!?」
ルーク先生と一緒に回答用紙を見ようとした瞬間、大声で私を呼ぶ声と共に、部屋の扉が勢いよく開かれた。そこには、息を切らせたレオ様が立っていた。
び、ビックリしすぎて私まで大きな声を出してしまったわ……胸がドキドキしてるし……。
「やっとだ!」
「何がですか??」
「やっと魔法が完成したんだ! これでアメリアと一緒にいられる!」
私の傍へとやってきたレオ様は、私の両手を強く掴んで力説する。その目は宝石のように耀いている。
魔法って、確かレオ様が習得しようとしていた魔法のことよね? ずっと勉強していたのは知っていたけど、ようやくその努力が実を結んだのね!
「レオ殿、今は授業の最中ですので」
「こ、これは申し訳ない……だが、どうしてもアメリアに伝えたいことと話したいことがあって、いてもたってもいられず……」
「しかしですね……むっ」
「ど、どうかしたんですか?」
「失礼、急に腹痛が。少々席を外します」
ルーク先生はそう言うと、お腹をさすりながら部屋を出て行った。
こんなタイミングでお腹が痛くなるなんて、都合がよすぎる。きっと気を利かせてくれたに違いない。後でお礼を言わなくちゃ。
「まずは魔法の習得、おめでとうございます。それで、これから一緒にいられるというのは?」
「言葉の通りの意味さ。もう魔法習得のための勉強は必要ないから、屋敷で一緒にいられるし、学園でも一緒だ」
屋敷でも学園でも? それじゃあ、今まで一緒にいられなかった分、レオ様に沢山甘えても良いのよね?
って……甘えるだなんて、私ったら恥ずかしい……どれだけ一緒にいられなかったのが寂しかったのよ。これではまるで子供だわ。
「あの、一緒にいられるのは嬉しいですけど、大丈夫なのでしょうか? 学園で一緒にいると、シャーロット達が……」
「わかってる。そこで相談なんだけど、放課後だけは少し一人で行動してほしいんだ」
「え? それでは、尚更シャーロット達に目を付けられるのでは?」
「そこもわかっている。俺を信じて、一人で行動してほしい。そして、絡まれたら助けを呼びながら逃げてほしい。そうしたら、俺がすぐに助けに行くから」
レオ様は、私にプレゼントしてくれたネックレスを軽く触って見せる。
確かにこれがあれば、私が危険な時に知らせが行くから大丈夫よね。知らせが行けば、レオ様は足を速く出来るから、すぐに来てくれるだろう。
それは良いとして、どうして私に一人で行動してほしいなんて提案したのかがわからない。まるで、シャーロット達をおびき寄せるみたいな……?
「よくわかりませんが、レオ様のことです。何か考えがあってのお願いなんですよね?」
「ああ、もちろん。大丈夫、アメリアが傷つくようなことには、絶対にさせない!」
「……わかりました、レオ様を信じます」
これが他の人だったら、全く信じずに話を終わらせるだろうけど、レオ様やシャフト先生、ローガン様にレイカ様にルーク先生、そしてフィリス家の屋敷の人達なら信じられるわ。
……改めて考えると、一人ぼっちで過ごしていて、シャフト先生なら少し信じられるって程度だった私が、沢山の人を信じられるようになったわ。
それに、自分で言うのはちょっと恥ずかしいけど、笑顔も増えたような気がするし……なんだか色々と良い方向に向かってる気がする。
「もう少しで片が付くから……そうしたら一緒に学園で生活して、卒業したら結婚しよう」
「もう、気が早いですよレオ様。まだ一年以上先の話じゃないですか」
「何を言っているんだい!? 君と過ごす日々は楽しくて、愛おしくて仕方がないんだよ! そんな状態の一年なんて、あっという間に終わってしまうよ! あぁ、アメリアと過ごすためだけの時間を、あと五億年は増やしてほしい!!」
まるで世界の終わりを目前にしたような表情を浮かべるレオ様。コロコロと表情が変わるから、見ててちょっぴり面白い。
「ふふっ……」
「はぁ~……アメリアの笑顔、久しぶりにゆっくり見られた……俺の人生に悔いはない……」
「笑顔を見ただけで、旅立とうとしないでください!」
「し、仕方ないだろう……自分で決めたこととはいえ、アメリアとずっと一緒にいられなかったのだから!」
両手を頭にやりながら、天を仰いでいたレオ様だったが、突然私の方を向くと、深々と頭を下げた。
一方の私は、色々と忙しいレオ様についていけず、その場で立ち尽くすことしかできなかった。
「ごめん。俺が勝手に決めたことで盛り上がって……アメリアだって寂しかったよね」
「寂しかったです。だから、寂しさを穴埋めしてほしいです」
「えっと、これでいいかな?」
レオ様に甘えたくて出したお願いを、レオ様は抱きしめるという回答を返してくれた。
レオ様の温もり、鼓動、息遣い。全てが身近に感じられるこの瞬間が、とても安心できて、とても好きだ。
「相談したいことはわかりました。言われた通りにしますね」
「ああ、ありがとう!」
「それじゃあ、そろそろルーク先生が戻るでしょうし、私は勉強を……あ、そうだ」
「どうかしたのかい?」
ずっと聞きたかったことがあったのを思い出した私は、顔を上げてレオ様の顔を見つめた。
「最近のレオ様、私のことを変に避けてませんでしたか……? 声をかけると、顔を赤くして、まるで逃げるように……」
「……っ!?!?」
私の質問に対して、みるみる顔が赤くなっていくレオ様は、乾いた笑い声を絞り出しながら、ゆっくりと私から離れた。
やっぱり何かが変だ。視線が定まってないし、体中が赤いし、汗も凄いし……。
「そう、その表情です!」
「あ、いや……その……あはは……お、思い出させないでくれー!! 恥ずかしさと申し訳なさで病んでしまうー!!」
「れ、レオ様ー!?」
レオ様は、足が速くなる魔法を使って全力でその場を逃走してしまった。
一体、なにがあったのかしら……私には何も覚えが無いのだけど……うぅ、凄く気になるわ! こんなんで、この後のルーク先生の授業を受けられるかしら。
「そういえば、ルーク先生遅いわね……」
お手洗いに行ったきり帰ってこないルーク先生を探しに部屋を出ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
なんと……ルーク先生が大の字になって倒れていたの。
「え、ちょ、ルーク先生!? 大丈夫ですか!?」
「ええ……ケガはありません。外で待っていたら……凄い速度で出てきたレオ殿にぶつかって……」
「あ……もしかしてさっきの……」
レオ様が全速力で逃げていった時のあれに、巻き込まれたってこと……? そ、それはなんというか……凄く申し訳ないわね……。
「ふっ……ついにこの老いぼれにも迎えが来たか……妹よ、すぐにそっちに行くからな……」
「ケガは無いって言ってたじゃないですか! ダメです、戻ってきてくださいー!」
必死に声をかけたり、揺さぶったり、ビンタまでした甲斐があり、ルーク先生は何とか正気に戻ってくれた。
もう、レオ様ってば……ちゃんと前も見ないで走るなんていけないのよ? 後でちゃんと言っておかないとね。
あれから私は、細々した嫌がらせはされてきたものの、大騒ぎになるようなことはされずに過ごせていた。
一方のレオ様はずっと忙しそうで、屋敷にいないことも多くなり、屋敷にいても部屋に引きこもって、魔法の練習に明け暮れていた。
それに、いつからか私と目を合わせると、不自然に視線を逸らしてどこかに行くようになってしまったの。
私、なにかレオ様に避けられるようなことをしてしまったのだろうか? だって、一緒に過ごせなくなっても、屋敷で顔を合わせれば笑顔を向けてくれるし、会話だってしてくれてたのよ?
「はぁ、寂しい……せっかくの夏休みも、全然一緒に過ごせなかったし……代わりに勉強は捗ったけど……」
夏休みは、自分の好きな勉強ができる楽しい期間。それは今年も変わらないはずなのに、レオ様のことで頭がいっぱいで、捗りはしたけど楽しくはなかった。
改めて気づいたけど、私って本当にレオ様のことが好きになっていたのね。もちろん昔から好きだったのもあるけれど、再会してからずっと一緒だったのが、想像以上に影響が大きいみたい。
「アメリア殿、ルークです」
「どうぞ」
「失礼します」
私の部屋となった客間の窓から、夕焼けに染まる外を眺めながら、溜息を漏らしていると、ルーク先生が部屋の中に入ってきた。
そっか、帰ってきてからボーっとしてたら、もうルーク先生が来る時間になっていたのね。
「勉強を始める前に、この前行った小テストを返却します。一緒に復習しましょう」
「はい。うーん、さほど点数は高くないですね……」
「点数だけ見れば平均点程度に見えますが、アドミラル学園の学力に合わせて制作しているので、全国的に見ればかなり高いのですよ」
返された回答用紙を見ながら、私はぽつりと弱音を吐いてしまった。
ルーク先生の言う通り、全国で見れば良い方なのかもしれないけど、毎日勉強ばかりしているのに、シャーロットのようにトップレベルになれないのは、さすがにちょっと心に来る。
「あれ、魔法薬学の回答用紙はどうされたんですか?」
「もちろん持ってきていますよ。これは最後に渡そうと思っておりまして」
ルーク先生は、いつもの様に淡々と話しながら、私に魔法薬学の回答用紙を渡す。そこには……回答用紙全体を覆う、大きな花丸がついていた。
「アメリア殿はダメじゃありませんよ。この花丸がその証拠です」
「これって……!」
「はい。初めての満点です」
「満点……!」
満点と聞いて、さっきまでの落ち込んだ気持ちはどこかにいってしまった。それどころか、嬉しくて思わず飛び跳ねたくなってしまった。
だって、今まで学園やルーク先生のテストをいくつもやってきて、満点なんて生まれて初めて取ったのよ! 嬉しいに決まってるじゃない!
「本当に素晴らしい結果です。まだ学生とは思えない理解力です。この調子で勉強を続ければ、立派な魔法薬師になれるでしょう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
ルーク先生にそんなことを言っていただけるなんて、本当に嬉しい。これに驕らずに勉強して、立派な魔法薬師にならなきゃ。
そうすれば、あの時のレオ様みたいなことになっても、大切な人を助けられるわよね。
「では、間違えた所の復習を――」
「アメリア!!」
「ひゃい!?」
ルーク先生と一緒に回答用紙を見ようとした瞬間、大声で私を呼ぶ声と共に、部屋の扉が勢いよく開かれた。そこには、息を切らせたレオ様が立っていた。
び、ビックリしすぎて私まで大きな声を出してしまったわ……胸がドキドキしてるし……。
「やっとだ!」
「何がですか??」
「やっと魔法が完成したんだ! これでアメリアと一緒にいられる!」
私の傍へとやってきたレオ様は、私の両手を強く掴んで力説する。その目は宝石のように耀いている。
魔法って、確かレオ様が習得しようとしていた魔法のことよね? ずっと勉強していたのは知っていたけど、ようやくその努力が実を結んだのね!
「レオ殿、今は授業の最中ですので」
「こ、これは申し訳ない……だが、どうしてもアメリアに伝えたいことと話したいことがあって、いてもたってもいられず……」
「しかしですね……むっ」
「ど、どうかしたんですか?」
「失礼、急に腹痛が。少々席を外します」
ルーク先生はそう言うと、お腹をさすりながら部屋を出て行った。
こんなタイミングでお腹が痛くなるなんて、都合がよすぎる。きっと気を利かせてくれたに違いない。後でお礼を言わなくちゃ。
「まずは魔法の習得、おめでとうございます。それで、これから一緒にいられるというのは?」
「言葉の通りの意味さ。もう魔法習得のための勉強は必要ないから、屋敷で一緒にいられるし、学園でも一緒だ」
屋敷でも学園でも? それじゃあ、今まで一緒にいられなかった分、レオ様に沢山甘えても良いのよね?
って……甘えるだなんて、私ったら恥ずかしい……どれだけ一緒にいられなかったのが寂しかったのよ。これではまるで子供だわ。
「あの、一緒にいられるのは嬉しいですけど、大丈夫なのでしょうか? 学園で一緒にいると、シャーロット達が……」
「わかってる。そこで相談なんだけど、放課後だけは少し一人で行動してほしいんだ」
「え? それでは、尚更シャーロット達に目を付けられるのでは?」
「そこもわかっている。俺を信じて、一人で行動してほしい。そして、絡まれたら助けを呼びながら逃げてほしい。そうしたら、俺がすぐに助けに行くから」
レオ様は、私にプレゼントしてくれたネックレスを軽く触って見せる。
確かにこれがあれば、私が危険な時に知らせが行くから大丈夫よね。知らせが行けば、レオ様は足を速く出来るから、すぐに来てくれるだろう。
それは良いとして、どうして私に一人で行動してほしいなんて提案したのかがわからない。まるで、シャーロット達をおびき寄せるみたいな……?
「よくわかりませんが、レオ様のことです。何か考えがあってのお願いなんですよね?」
「ああ、もちろん。大丈夫、アメリアが傷つくようなことには、絶対にさせない!」
「……わかりました、レオ様を信じます」
これが他の人だったら、全く信じずに話を終わらせるだろうけど、レオ様やシャフト先生、ローガン様にレイカ様にルーク先生、そしてフィリス家の屋敷の人達なら信じられるわ。
……改めて考えると、一人ぼっちで過ごしていて、シャフト先生なら少し信じられるって程度だった私が、沢山の人を信じられるようになったわ。
それに、自分で言うのはちょっと恥ずかしいけど、笑顔も増えたような気がするし……なんだか色々と良い方向に向かってる気がする。
「もう少しで片が付くから……そうしたら一緒に学園で生活して、卒業したら結婚しよう」
「もう、気が早いですよレオ様。まだ一年以上先の話じゃないですか」
「何を言っているんだい!? 君と過ごす日々は楽しくて、愛おしくて仕方がないんだよ! そんな状態の一年なんて、あっという間に終わってしまうよ! あぁ、アメリアと過ごすためだけの時間を、あと五億年は増やしてほしい!!」
まるで世界の終わりを目前にしたような表情を浮かべるレオ様。コロコロと表情が変わるから、見ててちょっぴり面白い。
「ふふっ……」
「はぁ~……アメリアの笑顔、久しぶりにゆっくり見られた……俺の人生に悔いはない……」
「笑顔を見ただけで、旅立とうとしないでください!」
「し、仕方ないだろう……自分で決めたこととはいえ、アメリアとずっと一緒にいられなかったのだから!」
両手を頭にやりながら、天を仰いでいたレオ様だったが、突然私の方を向くと、深々と頭を下げた。
一方の私は、色々と忙しいレオ様についていけず、その場で立ち尽くすことしかできなかった。
「ごめん。俺が勝手に決めたことで盛り上がって……アメリアだって寂しかったよね」
「寂しかったです。だから、寂しさを穴埋めしてほしいです」
「えっと、これでいいかな?」
レオ様に甘えたくて出したお願いを、レオ様は抱きしめるという回答を返してくれた。
レオ様の温もり、鼓動、息遣い。全てが身近に感じられるこの瞬間が、とても安心できて、とても好きだ。
「相談したいことはわかりました。言われた通りにしますね」
「ああ、ありがとう!」
「それじゃあ、そろそろルーク先生が戻るでしょうし、私は勉強を……あ、そうだ」
「どうかしたのかい?」
ずっと聞きたかったことがあったのを思い出した私は、顔を上げてレオ様の顔を見つめた。
「最近のレオ様、私のことを変に避けてませんでしたか……? 声をかけると、顔を赤くして、まるで逃げるように……」
「……っ!?!?」
私の質問に対して、みるみる顔が赤くなっていくレオ様は、乾いた笑い声を絞り出しながら、ゆっくりと私から離れた。
やっぱり何かが変だ。視線が定まってないし、体中が赤いし、汗も凄いし……。
「そう、その表情です!」
「あ、いや……その……あはは……お、思い出させないでくれー!! 恥ずかしさと申し訳なさで病んでしまうー!!」
「れ、レオ様ー!?」
レオ様は、足が速くなる魔法を使って全力でその場を逃走してしまった。
一体、なにがあったのかしら……私には何も覚えが無いのだけど……うぅ、凄く気になるわ! こんなんで、この後のルーク先生の授業を受けられるかしら。
「そういえば、ルーク先生遅いわね……」
お手洗いに行ったきり帰ってこないルーク先生を探しに部屋を出ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
なんと……ルーク先生が大の字になって倒れていたの。
「え、ちょ、ルーク先生!? 大丈夫ですか!?」
「ええ……ケガはありません。外で待っていたら……凄い速度で出てきたレオ殿にぶつかって……」
「あ……もしかしてさっきの……」
レオ様が全速力で逃げていった時のあれに、巻き込まれたってこと……? そ、それはなんというか……凄く申し訳ないわね……。
「ふっ……ついにこの老いぼれにも迎えが来たか……妹よ、すぐにそっちに行くからな……」
「ケガは無いって言ってたじゃないですか! ダメです、戻ってきてくださいー!」
必死に声をかけたり、揺さぶったり、ビンタまでした甲斐があり、ルーク先生は何とか正気に戻ってくれた。
もう、レオ様ってば……ちゃんと前も見ないで走るなんていけないのよ? 後でちゃんと言っておかないとね。
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