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第十五話 アメリアの過去
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レオ様と一緒に出掛けた日から約一週間後、いつものように放課後に教室で集まった私達は、授業で行われた小テストの結果とにらめっこをしていた。
「以前教えさせていただいた時よりも、理解が深まっていますね。自主勉強をされたのですか?」
「うん、あの後帰って復習をしてね! おかげで家の人間に驚かれちゃってさ。失礼な人達だと思わないかい?」
口では悪態をついているけど、それが本心ではないのは表情を見ていればわかる。むしろ、とても楽しそうにも感じられる。
私とは……大違いだ。
私はあの日帰った後、お母様に遅くに帰ってくるような人間はいらないから出て行けとか言われ、シャーロットにはブサイクが着飾った所で無様なだけだと馬鹿にされたりと、正直散々だった。
予想通りだったといえばその通りなんだけど、せっかくレオ様と楽しく過ごした時間が台無しだわ。
まあ……レオ様が特別なだけで、人間なんてそんなものよね。
「アメリアは本当に教えるのが上手だね。もしかして、前に少し話してくれた、勉強している目的って、教師になりたいとか?」
「いえ、そういうわけではありません」
「そうなんだね。あの時も気になったんだけど、目的ってなんなんだい? 以前は家のためにやっていたのは聞いたけど」
そういえば、あの時はちゃんと話していなかったわね。別に隠すような内容ではないし、話してもいいかしら。
「それを話すには、ちょっと長い昔話を話さないといけませんが、それでもいいですか?」
「ああ、もちろん」
「わかりました」
私はレオ様が持ってきてくれた紅茶を飲んで喉を潤してから、ゆっくりと自分の過去について語り始めた――
****
私がまだ幼かった頃。家のために勉強の毎日を送っていた中、魔法の勉強をするために、遠くにある村へと滞在していた時期があった。
その村には、スフォルツィ家と縁のある高名な魔法使いがいて、その人の元にシャーロットと一緒に住み込みで魔法と勉強を教わりに行ったの。
ある日、自由時間に一人で近くの森を散歩していると、私と同じぐらいの歳の子に出会ったわ。
その子は体中が傷だらけで痩せ細り、服もボロボロの布一枚で座り込んでいた。私は放っておくことが出来ず、彼に話しかけたわ。
『あなた、大丈夫!? 体中にケガがあるわ!』
『うるさい……来るな……俺に近寄るな!!』
出会ったばかりの彼は、異様に怯えていたわ。自分以外の者は全て敵……そんな意志が強く感じられた。
自分で言うのもなんだけど、当時の私は正義感に溢れていた。だから、彼を放っておくことが出来なかった。
しかし、所詮は一人の少女でしかなかった私は、どうしてあげることも出来なかった。だから、急いで家に帰って大人の人を呼んだが……戻ってきた頃には、彼はもういなかった。
彼は一体何者だったのだろう。どうして子供一人で森の中にいたのだろう。どうしてあんなにボロボロだったのだろう。様々な疑問を持ちつつも、私は帰路についた。
それから数日。もしかしたらまた彼に会えるかもしれない。もし会えたら、このパンをあげようと思った私は、自由時間にまた森へと行った。
その甲斐があってか、私は再び彼に会うことが出来た。その日も初対面の時と同じ様に、ボロボロだったわ。
『またてめえか……俺に構うんじゃねえ……!』
『待って! 私はあなたをいじめに来たんじゃないの! これをあげに来たの!』
『……?』
なるべく怖くないように、私は持ってきたパンを彼に近くにおいてから、ゆっくりと遠ざかった。すると、彼は強奪するようにパンを拾うと、凄い足の速さで森の奥へと消えていった。
結局彼は何者なのか、その時は聞けなかったけど……これで彼のお腹が少しでも満たされると思ったら、それで満足だったのを鮮明に覚えている。
それからしばらくの間、私は自由時間に食べ物を持って、彼に会いに行く日々を送っていた。
彼は最初はずっと警戒していてまともに会話なんて出来なかったけど、何度も会ううちに会話をしてくれるようになった。栄養が取れたおかげか、ケガも段々と良くなってくれた。
『私、アメリアっていうの! あなたのお名前は?』
『名前は……捨てた。もう必要ないからな』
『そうなの? よくわからないけど……あなたはどうしてこんな森にいるの? 家族は?』
『……家族は病気で死んだ』
家族は死んだ。そう言う彼は、前髪で隠れた顔を俯かせていた。その表情を見なくても、彼が酷く悲しんでいるのは、幼い私でもわかったわ。
『そうだったのね……頼れる人もいないの?』
『いない。住んでた家も追い出されて、金も無い。ガキだからって理由で仕事もできなくて……色んな所を転々とした。盗みもしたし、動物だって殺した。そうじゃないと生きて来れなかった。それで、たまたま見つけたこの森で食料を探しながら、何とか生活していた。そうしたら、うっかりケガをして……お前に会った』
そう話した彼は、私があげたパンに噛り付きながら、深い溜息を漏らしていた。そんなのを見たら、更に彼のことを放っておけないって強く思ったわ。
『お前は普段何をしているんだ?』
『勉強よ。魔法とか、歴史とか数学とか……色々!』
『勉強? よくあんなつまらないことが出来るもんだ。俺なんて、お袋に勉強しろってよく言われてたぜ。あの時はうるさいって思ってた……あのうるさい日々が恋しい』
『…………』
『お前、何泣いてるんだ?』
その子の悲しい過去を聞いて、私は涙が止まらなくなっていた。
当時の私は、まだ親に見放される前の私だ。だから、辛い境遇を味わったことが無かった。だからなのか、彼の辛い過去がとても心に突き刺さってきたの。
『変な奴だな……そうだ。お前にこれをやる』
差し出されたものは、四つ葉クローバーだった。それは、今も大切に持ち歩いている四つ葉クローバーの栞に使われているものだ。
『これは……四つ葉のクローバー?』
『ああ。飯を探してる時に見つけた。その……散々飯を分けてもらった礼だ』
『いいの? ありがとう! とっても嬉しいわ!』
幼い頃の私は、満面の笑顔でお礼を言った。その時の、彼が気まずそうにそっぽ向いたのは、今でも不思議とよく覚えている。
ずっと私を警戒していた彼が、本当に私に心を開いてくれたと感じられた瞬間だった。それが……心の底から嬉しかった私は、この嬉しさを彼におすそ分けがしたくなったの。
『お、おい! なんで引き千切って……!』
『はい! こっちの葉はあなたにあげるわ!』
『意味がわからないんだが……?』
『私達が出会った記念よ!』
ちぎった二枚の葉っぱを彼に渡すと、困り顔ではあったけど、素直に受け取ってくれた。
今までは、私が食べ物を渡す時に、他の人に取られないようにしているのか、奪い取るかのように受け取っていたのに、この時は静かに手を出していた。
――この時の私は幸せだった。彼とは近いうちにお別れになってしまうのはわかってたけど、そんなのを忘れるくらい幸せで、楽しかった。
それからも、一緒にお喋りをしたり、持ってきた食べ物を一緒に食べたりしたり、とても穏やかで幸せな時間を過ごせた。
でも、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
どんよりとした空の下、私はその日も彼に会いに行っていた。でも、その足取りは少し重たかった。
なぜなら、私は数日後には実家に帰らなければならない日を迎えていたからだ。
『今日も来たのか。本当にお人好しだな』
『…………』
『なんだ、今日は元気ねえじゃん』
『実は……』
もうすぐ会えなくなるんだ。そう言おうとした時、異変は起きた。近くの草むらが、ガサガサと音を立て始めたの。
ウサギとかキツネが潜んでいたことは何度かあったから、こういう経験は初めてではないけど……明らかに音が大きすぎる。よほど大きな動物が潜んでいるに違いない。
そう思った時にはもう遅かった。私達の前には、私の身長よりも何倍も大きいクマが、唸り声を上げながら立ち上がっていたのだから。
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「うん、あの後帰って復習をしてね! おかげで家の人間に驚かれちゃってさ。失礼な人達だと思わないかい?」
口では悪態をついているけど、それが本心ではないのは表情を見ていればわかる。むしろ、とても楽しそうにも感じられる。
私とは……大違いだ。
私はあの日帰った後、お母様に遅くに帰ってくるような人間はいらないから出て行けとか言われ、シャーロットにはブサイクが着飾った所で無様なだけだと馬鹿にされたりと、正直散々だった。
予想通りだったといえばその通りなんだけど、せっかくレオ様と楽しく過ごした時間が台無しだわ。
まあ……レオ様が特別なだけで、人間なんてそんなものよね。
「アメリアは本当に教えるのが上手だね。もしかして、前に少し話してくれた、勉強している目的って、教師になりたいとか?」
「いえ、そういうわけではありません」
「そうなんだね。あの時も気になったんだけど、目的ってなんなんだい? 以前は家のためにやっていたのは聞いたけど」
そういえば、あの時はちゃんと話していなかったわね。別に隠すような内容ではないし、話してもいいかしら。
「それを話すには、ちょっと長い昔話を話さないといけませんが、それでもいいですか?」
「ああ、もちろん」
「わかりました」
私はレオ様が持ってきてくれた紅茶を飲んで喉を潤してから、ゆっくりと自分の過去について語り始めた――
****
私がまだ幼かった頃。家のために勉強の毎日を送っていた中、魔法の勉強をするために、遠くにある村へと滞在していた時期があった。
その村には、スフォルツィ家と縁のある高名な魔法使いがいて、その人の元にシャーロットと一緒に住み込みで魔法と勉強を教わりに行ったの。
ある日、自由時間に一人で近くの森を散歩していると、私と同じぐらいの歳の子に出会ったわ。
その子は体中が傷だらけで痩せ細り、服もボロボロの布一枚で座り込んでいた。私は放っておくことが出来ず、彼に話しかけたわ。
『あなた、大丈夫!? 体中にケガがあるわ!』
『うるさい……来るな……俺に近寄るな!!』
出会ったばかりの彼は、異様に怯えていたわ。自分以外の者は全て敵……そんな意志が強く感じられた。
自分で言うのもなんだけど、当時の私は正義感に溢れていた。だから、彼を放っておくことが出来なかった。
しかし、所詮は一人の少女でしかなかった私は、どうしてあげることも出来なかった。だから、急いで家に帰って大人の人を呼んだが……戻ってきた頃には、彼はもういなかった。
彼は一体何者だったのだろう。どうして子供一人で森の中にいたのだろう。どうしてあんなにボロボロだったのだろう。様々な疑問を持ちつつも、私は帰路についた。
それから数日。もしかしたらまた彼に会えるかもしれない。もし会えたら、このパンをあげようと思った私は、自由時間にまた森へと行った。
その甲斐があってか、私は再び彼に会うことが出来た。その日も初対面の時と同じ様に、ボロボロだったわ。
『またてめえか……俺に構うんじゃねえ……!』
『待って! 私はあなたをいじめに来たんじゃないの! これをあげに来たの!』
『……?』
なるべく怖くないように、私は持ってきたパンを彼に近くにおいてから、ゆっくりと遠ざかった。すると、彼は強奪するようにパンを拾うと、凄い足の速さで森の奥へと消えていった。
結局彼は何者なのか、その時は聞けなかったけど……これで彼のお腹が少しでも満たされると思ったら、それで満足だったのを鮮明に覚えている。
それからしばらくの間、私は自由時間に食べ物を持って、彼に会いに行く日々を送っていた。
彼は最初はずっと警戒していてまともに会話なんて出来なかったけど、何度も会ううちに会話をしてくれるようになった。栄養が取れたおかげか、ケガも段々と良くなってくれた。
『私、アメリアっていうの! あなたのお名前は?』
『名前は……捨てた。もう必要ないからな』
『そうなの? よくわからないけど……あなたはどうしてこんな森にいるの? 家族は?』
『……家族は病気で死んだ』
家族は死んだ。そう言う彼は、前髪で隠れた顔を俯かせていた。その表情を見なくても、彼が酷く悲しんでいるのは、幼い私でもわかったわ。
『そうだったのね……頼れる人もいないの?』
『いない。住んでた家も追い出されて、金も無い。ガキだからって理由で仕事もできなくて……色んな所を転々とした。盗みもしたし、動物だって殺した。そうじゃないと生きて来れなかった。それで、たまたま見つけたこの森で食料を探しながら、何とか生活していた。そうしたら、うっかりケガをして……お前に会った』
そう話した彼は、私があげたパンに噛り付きながら、深い溜息を漏らしていた。そんなのを見たら、更に彼のことを放っておけないって強く思ったわ。
『お前は普段何をしているんだ?』
『勉強よ。魔法とか、歴史とか数学とか……色々!』
『勉強? よくあんなつまらないことが出来るもんだ。俺なんて、お袋に勉強しろってよく言われてたぜ。あの時はうるさいって思ってた……あのうるさい日々が恋しい』
『…………』
『お前、何泣いてるんだ?』
その子の悲しい過去を聞いて、私は涙が止まらなくなっていた。
当時の私は、まだ親に見放される前の私だ。だから、辛い境遇を味わったことが無かった。だからなのか、彼の辛い過去がとても心に突き刺さってきたの。
『変な奴だな……そうだ。お前にこれをやる』
差し出されたものは、四つ葉クローバーだった。それは、今も大切に持ち歩いている四つ葉クローバーの栞に使われているものだ。
『これは……四つ葉のクローバー?』
『ああ。飯を探してる時に見つけた。その……散々飯を分けてもらった礼だ』
『いいの? ありがとう! とっても嬉しいわ!』
幼い頃の私は、満面の笑顔でお礼を言った。その時の、彼が気まずそうにそっぽ向いたのは、今でも不思議とよく覚えている。
ずっと私を警戒していた彼が、本当に私に心を開いてくれたと感じられた瞬間だった。それが……心の底から嬉しかった私は、この嬉しさを彼におすそ分けがしたくなったの。
『お、おい! なんで引き千切って……!』
『はい! こっちの葉はあなたにあげるわ!』
『意味がわからないんだが……?』
『私達が出会った記念よ!』
ちぎった二枚の葉っぱを彼に渡すと、困り顔ではあったけど、素直に受け取ってくれた。
今までは、私が食べ物を渡す時に、他の人に取られないようにしているのか、奪い取るかのように受け取っていたのに、この時は静かに手を出していた。
――この時の私は幸せだった。彼とは近いうちにお別れになってしまうのはわかってたけど、そんなのを忘れるくらい幸せで、楽しかった。
それからも、一緒にお喋りをしたり、持ってきた食べ物を一緒に食べたりしたり、とても穏やかで幸せな時間を過ごせた。
でも、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
どんよりとした空の下、私はその日も彼に会いに行っていた。でも、その足取りは少し重たかった。
なぜなら、私は数日後には実家に帰らなければならない日を迎えていたからだ。
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『…………』
『なんだ、今日は元気ねえじゃん』
『実は……』
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ウサギとかキツネが潜んでいたことは何度かあったから、こういう経験は初めてではないけど……明らかに音が大きすぎる。よほど大きな動物が潜んでいるに違いない。
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