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第二十八話 侍女の覚悟を胸に
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アルベール様に担がれて運ばれること数分、ようやく私はアルベール様に解放され、地面に降ろしてもらえた。
そのタイミングを見計らい、クラリスを助けに戻ろうとしたが、手を掴まれて止められてしまった。
「どこへ行くのですか?」
「クラリスを助けに戻るんです!」
「俺達が行くべき所は、この事件の元凶の場所です」
「そうですけど……!」
アルベール様にそう言われても、クラリスのことが気になって仕方がない。そんな私は、アルベール様に強く両肩を掴まれた。
「しっかりしろ!」
「っ……!!」
「あの状況で浄化をしても危険と隣り合わせなうえに、時間と体力を消耗するだけで、何の解決にもならないのは、あなたもわかってるでしょう!?」
「そ、それは……」
「クラリスはそれを瞬時に理解し、あなたを送りだした! クラリスが命を懸けてリーゼの背中を押したその勇気を、そして覚悟を……想いを無駄にするつもりなのか!?」
「私……私……は……!」
いつもの優しい口調とは正反対の、殴りつけるような強い言葉は、アルベール様の強い想いを感じた。
……アルベール様の言う通りだわ。私が間違ってた……クラリスのためにも、私がするべきことは、クラリスを助けに行くことじゃない。少しでも早く解決して、クラリスを迎えに行くことだ!
「……私、進みます。故郷と民を助けたいという私のワガママについてきてくれた、クラリスの想いに報いるために!」
「それでこそ、俺が心から愛したリーゼ嬢です」
厳しい表情からうって変わり、いつもの優しい表情に戻ったアルベール様は、私のことを優しく抱きしめてくれた。
鎧のせいで、アルベール様の熱は感じられないはずなのに、何故か私の体にじんわりと暖かさが広がっているように感じるのは、きっと気のせいじゃないだろう。
「では、行きましょう。うっ……瘴気のせいで、視界が悪すぎますね……周りに人はいませんし、仮面を取ってしまってもいいかしら?」
「良いと思いますよ。仮面に固執して、命を落としてしまったら、笑い話にもなりませんし」
では……と、前置きをしてから仮面を取ると、とても爽やかな風……なんて来るはずもなく、この嫌な瘴気の霧が、私の顔を出迎えた。
「あまり変わらないわね……うっ……」
「どうされましたか? 以前みたいに、気分が悪くなりましたか!?」
「そうみたいです。向こうから、強い瘴気の気配を感じました。もしかしたら……」
「わかりました。では俺が運ぶので、しっかり捕まっててください!」
ほら、アルベール様は私のことを、お姫様抱っこで運びはじめる。それなりに付き合いがあるから、何となく察していたわ。
「この辺りには、実家があるんです」
「実家ですか。なるほど、皆無事だと良いのですが」
「そうですね……」
アルベール様に運んでもらいながら、私は更にお城に向かって進んで行く。
私だって、家族や元婚約者には無事でいてもらいたいし、無事を心から祈っている。
しかし、この周りの惨状を目にしてしまうと……無事な可能性は限りなく低いと思わされてしまう。
「リーゼ嬢の実家は、この辺りなのですか?」
「はい。もう少し進んだ所にあります。通り道なので、生存者がいるかの確認だけしても……」
「わかりました。ではその時間を得るために、少し急ぎますよ!」
アルベール様は、瘴気のせいで体調が悪くなっているにもかかわらず、私を抱えたまま走りだす。そのおかげで、すぐに私の実家に到着することが出来た。
久しぶりに帰ってきた実家は、かつての美しさは一切なく、多くの茨によって浸食されてしまっていた。それだけに留まらず、すでに事切れてしまっていた使用人が、茨に吸収されてしまっている場面を見てしまった。
……ここは、まさに地獄というのが一番しっくりくるわ。
「なんて惨い……昔はもっと綺麗だったのに……それに、この瘴気の気配は……!」
「そんなに強いのですか?」
「はい。国の中心であるお城に元凶があると思ってましたが、もしかしたらここに元凶があるのかもしれません。それと……この嫌な気配は、以前の瘴気の塊と同じものを感じます」
「あの時の……とにかく調べてみましょう」
私はアルベール様に降ろしてもらうと、辺りを警戒しながら屋敷の玄関に向かうと、茨によってガチガチに固められた玄関に出迎えられた。
「茨で扉が塞がれてますね。リーゼ嬢、この剣に力を」
「お任せください」
アルベール様の剣に、聖女の力を注ぎこむ。それを見届けたアルベール様は、その剣を使って茨を斬り落とした。
「これで入れますね。リーゼ嬢、この先に何が出て来ても良いように、注意してください」
玄関を開けてくれたアルベール様に続いて、ゆっくりと屋敷の中に入る。
外と同様に、中も酷い荒れようだった。あちこちに茨が絡みつき、シャンデリアや飾ってあった絵は完膚なきまで破壊され、瓦礫の山も築かれている。
自分の実家が、こんなに荒れているのを見る日が来るだなんて……悲しすぎて、心が壊れてしまいそうだ。
……駄目よ、しっかりしなさい私。悲しむのは後でいくらでも出来る。今することは、この瘴気の気配の元がこの先にあるか、調査をすることだ。
「中は荒れていますが、茨以外には変わったものはありませんね……」
「そうですね。ですが、瘴気の気配は今までで一番濃いですわ……お父様、ジュリア、ジェクソン様……どうか無事でいて……」
アルベール様の背中にぴったりとくっつきながら、私は変わり果てた実家を進む。廊下や各部屋には、すでに息を引き取っている使用人達が沢山横たわっていた。
この様子では、お父様達も……いえ、まだ希望を捨てるのは早い。気をしっかり持たなきゃ。
「リーゼ嬢、足元にお気をつけてください」
「はい。アルベール様もお気をつけて……あれはなんでしょうか?」
瓦礫や茨で滅茶苦茶になった屋敷の中を歩いていると、何かが壁に張り付いているのを見つけた。
遠巻きにだから、なにが張り付いているのかはわからないけど……私がいた頃は、あんなものは無かったと断言できる。私がいなくなった後に、新しい家具でも置いたのだろうか?
とにかく調べておいた方が良さそうね。急に動き出して、不意打ちでもされたら大変だもの。
「これは……!? リーゼ嬢、見るな!!」
「えっ……お、お父様? ジェクソン様?」
壁に張り付いていたのは、変わり果てたお父様とジェクソン様だった。体を茨に貫かれ、その茨によって壁に磔にされていた。
その光景は、あまりにもショックすぎて……私はその場で丸まりながら、口を抑えた。
「リーゼ嬢、一度ここから離れましょう! ここに俺達が見るべきものはありません!」
自分の肉親と元婚約者の変わり果てた姿を見て、強いショックに襲われた私のことを、アルベール様がお姫様抱っこで二階まで運んでくれた。
うぅ、どうして二人があんな目に……お父様もジェクソン様も、私に酷いことをしていたのは確かだけど、あんな末路を辿ってほしかったわけじゃない。
「とりあえず、ここまで来れば大丈夫でしょう。少しだけここで休んでいきましょう」
「ありがとうございます……うっ……」
強いショックによる吐き気に耐えるために、必死に両手で口を抑えていると、アルベール様が私を抱きしめながら、背中をさすってくれた。
「あー……その……こういう時に、何て言ったらいいのか……くそっ、リーゼ嬢に本心を伝えるのは簡単なのに、こういう時に言葉が出ない自分が情けない……!」
何かを言おうとして、でも言葉を詰まらせるアルベール様。それは、私のことを気遣って言葉を選んでくれているのが、とてもよくわかった。
「こんな時でも、アルベール様はお優しいんですね。その気持ちだけで、私は救われていますわ」
「リーゼ嬢……」
「正直、ショックじゃないとは、口が裂けても言えません。でも……ここまで来て立ち止まっていたら、お父様達のような犠牲者が、さらに増えてしまいます。だから……進みましょう」
口では強がってみせたが、家族と元婚約者の変わり果てた姿を見たショックは、相当なものだ。少しでも気を抜いたら、気絶してしまいそうなくらいだ。
でも、ここで倒れているわけにはいかない。ここまで来たのだから、絶対に瘴気の元凶を浄化しなくちゃ……!
「あなたは強い方ですね。そういうところも愛しておりますよ」
「もう、そういうのは帰ってからにしてください」
どんな状況でも、私への褒め言葉を忘れないアルベール様に照れながら、瘴気の気配が強い場所へと進んで行く。
すると、たどり着いたのは……私がよく知る部屋だった。
「ここです。この先に瘴気の気配があります」
「誰かの部屋の様ですが、ここは?」
「……妹の……ジュリアの部屋ですわ」
「確か、リーゼ嬢と同じ聖女でしたよね?」
「はい」
あの子の身に、なにかあったのかしら……私のことを利用していたとはいえ、ジュリアは世界でたった一人の、大切な妹なのは違いない。放っておくなんて……出来ない。
「何が出るかわかりません。用心していきましょう」
「わかりました」
アルベール様に改めて念押しをされながら、ゆっくりとジュリアの部屋に入る。すると、中は多くの茨によって埋め尽くされ、中に入るのを拒んでいた。
「これはまた、随分と茨が多いですね……」
「あれェ……? 誰か来たと思ったら、想定外なお客様だなァ……」
「この声は……!」
「あの茨の中から聞こえましたね。リーゼ嬢、お気をつけて!」
嫌と言うほど聞いてきた声が、茨の中から聞こえてきた。それから間もなく、茨達が一斉にその場から消えた。
茨が消えた先にあったのは……優雅に椅子に座ってこちらを見ている、ジュリアの姿だった――
そのタイミングを見計らい、クラリスを助けに戻ろうとしたが、手を掴まれて止められてしまった。
「どこへ行くのですか?」
「クラリスを助けに戻るんです!」
「俺達が行くべき所は、この事件の元凶の場所です」
「そうですけど……!」
アルベール様にそう言われても、クラリスのことが気になって仕方がない。そんな私は、アルベール様に強く両肩を掴まれた。
「しっかりしろ!」
「っ……!!」
「あの状況で浄化をしても危険と隣り合わせなうえに、時間と体力を消耗するだけで、何の解決にもならないのは、あなたもわかってるでしょう!?」
「そ、それは……」
「クラリスはそれを瞬時に理解し、あなたを送りだした! クラリスが命を懸けてリーゼの背中を押したその勇気を、そして覚悟を……想いを無駄にするつもりなのか!?」
「私……私……は……!」
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「……私、進みます。故郷と民を助けたいという私のワガママについてきてくれた、クラリスの想いに報いるために!」
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厳しい表情からうって変わり、いつもの優しい表情に戻ったアルベール様は、私のことを優しく抱きしめてくれた。
鎧のせいで、アルベール様の熱は感じられないはずなのに、何故か私の体にじんわりと暖かさが広がっているように感じるのは、きっと気のせいじゃないだろう。
「では、行きましょう。うっ……瘴気のせいで、視界が悪すぎますね……周りに人はいませんし、仮面を取ってしまってもいいかしら?」
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では……と、前置きをしてから仮面を取ると、とても爽やかな風……なんて来るはずもなく、この嫌な瘴気の霧が、私の顔を出迎えた。
「あまり変わらないわね……うっ……」
「どうされましたか? 以前みたいに、気分が悪くなりましたか!?」
「そうみたいです。向こうから、強い瘴気の気配を感じました。もしかしたら……」
「わかりました。では俺が運ぶので、しっかり捕まっててください!」
ほら、アルベール様は私のことを、お姫様抱っこで運びはじめる。それなりに付き合いがあるから、何となく察していたわ。
「この辺りには、実家があるんです」
「実家ですか。なるほど、皆無事だと良いのですが」
「そうですね……」
アルベール様に運んでもらいながら、私は更にお城に向かって進んで行く。
私だって、家族や元婚約者には無事でいてもらいたいし、無事を心から祈っている。
しかし、この周りの惨状を目にしてしまうと……無事な可能性は限りなく低いと思わされてしまう。
「リーゼ嬢の実家は、この辺りなのですか?」
「はい。もう少し進んだ所にあります。通り道なので、生存者がいるかの確認だけしても……」
「わかりました。ではその時間を得るために、少し急ぎますよ!」
アルベール様は、瘴気のせいで体調が悪くなっているにもかかわらず、私を抱えたまま走りだす。そのおかげで、すぐに私の実家に到着することが出来た。
久しぶりに帰ってきた実家は、かつての美しさは一切なく、多くの茨によって浸食されてしまっていた。それだけに留まらず、すでに事切れてしまっていた使用人が、茨に吸収されてしまっている場面を見てしまった。
……ここは、まさに地獄というのが一番しっくりくるわ。
「なんて惨い……昔はもっと綺麗だったのに……それに、この瘴気の気配は……!」
「そんなに強いのですか?」
「はい。国の中心であるお城に元凶があると思ってましたが、もしかしたらここに元凶があるのかもしれません。それと……この嫌な気配は、以前の瘴気の塊と同じものを感じます」
「あの時の……とにかく調べてみましょう」
私はアルベール様に降ろしてもらうと、辺りを警戒しながら屋敷の玄関に向かうと、茨によってガチガチに固められた玄関に出迎えられた。
「茨で扉が塞がれてますね。リーゼ嬢、この剣に力を」
「お任せください」
アルベール様の剣に、聖女の力を注ぎこむ。それを見届けたアルベール様は、その剣を使って茨を斬り落とした。
「これで入れますね。リーゼ嬢、この先に何が出て来ても良いように、注意してください」
玄関を開けてくれたアルベール様に続いて、ゆっくりと屋敷の中に入る。
外と同様に、中も酷い荒れようだった。あちこちに茨が絡みつき、シャンデリアや飾ってあった絵は完膚なきまで破壊され、瓦礫の山も築かれている。
自分の実家が、こんなに荒れているのを見る日が来るだなんて……悲しすぎて、心が壊れてしまいそうだ。
……駄目よ、しっかりしなさい私。悲しむのは後でいくらでも出来る。今することは、この瘴気の気配の元がこの先にあるか、調査をすることだ。
「中は荒れていますが、茨以外には変わったものはありませんね……」
「そうですね。ですが、瘴気の気配は今までで一番濃いですわ……お父様、ジュリア、ジェクソン様……どうか無事でいて……」
アルベール様の背中にぴったりとくっつきながら、私は変わり果てた実家を進む。廊下や各部屋には、すでに息を引き取っている使用人達が沢山横たわっていた。
この様子では、お父様達も……いえ、まだ希望を捨てるのは早い。気をしっかり持たなきゃ。
「リーゼ嬢、足元にお気をつけてください」
「はい。アルベール様もお気をつけて……あれはなんでしょうか?」
瓦礫や茨で滅茶苦茶になった屋敷の中を歩いていると、何かが壁に張り付いているのを見つけた。
遠巻きにだから、なにが張り付いているのかはわからないけど……私がいた頃は、あんなものは無かったと断言できる。私がいなくなった後に、新しい家具でも置いたのだろうか?
とにかく調べておいた方が良さそうね。急に動き出して、不意打ちでもされたら大変だもの。
「これは……!? リーゼ嬢、見るな!!」
「えっ……お、お父様? ジェクソン様?」
壁に張り付いていたのは、変わり果てたお父様とジェクソン様だった。体を茨に貫かれ、その茨によって壁に磔にされていた。
その光景は、あまりにもショックすぎて……私はその場で丸まりながら、口を抑えた。
「リーゼ嬢、一度ここから離れましょう! ここに俺達が見るべきものはありません!」
自分の肉親と元婚約者の変わり果てた姿を見て、強いショックに襲われた私のことを、アルベール様がお姫様抱っこで二階まで運んでくれた。
うぅ、どうして二人があんな目に……お父様もジェクソン様も、私に酷いことをしていたのは確かだけど、あんな末路を辿ってほしかったわけじゃない。
「とりあえず、ここまで来れば大丈夫でしょう。少しだけここで休んでいきましょう」
「ありがとうございます……うっ……」
強いショックによる吐き気に耐えるために、必死に両手で口を抑えていると、アルベール様が私を抱きしめながら、背中をさすってくれた。
「あー……その……こういう時に、何て言ったらいいのか……くそっ、リーゼ嬢に本心を伝えるのは簡単なのに、こういう時に言葉が出ない自分が情けない……!」
何かを言おうとして、でも言葉を詰まらせるアルベール様。それは、私のことを気遣って言葉を選んでくれているのが、とてもよくわかった。
「こんな時でも、アルベール様はお優しいんですね。その気持ちだけで、私は救われていますわ」
「リーゼ嬢……」
「正直、ショックじゃないとは、口が裂けても言えません。でも……ここまで来て立ち止まっていたら、お父様達のような犠牲者が、さらに増えてしまいます。だから……進みましょう」
口では強がってみせたが、家族と元婚約者の変わり果てた姿を見たショックは、相当なものだ。少しでも気を抜いたら、気絶してしまいそうなくらいだ。
でも、ここで倒れているわけにはいかない。ここまで来たのだから、絶対に瘴気の元凶を浄化しなくちゃ……!
「あなたは強い方ですね。そういうところも愛しておりますよ」
「もう、そういうのは帰ってからにしてください」
どんな状況でも、私への褒め言葉を忘れないアルベール様に照れながら、瘴気の気配が強い場所へと進んで行く。
すると、たどり着いたのは……私がよく知る部屋だった。
「ここです。この先に瘴気の気配があります」
「誰かの部屋の様ですが、ここは?」
「……妹の……ジュリアの部屋ですわ」
「確か、リーゼ嬢と同じ聖女でしたよね?」
「はい」
あの子の身に、なにかあったのかしら……私のことを利用していたとはいえ、ジュリアは世界でたった一人の、大切な妹なのは違いない。放っておくなんて……出来ない。
「何が出るかわかりません。用心していきましょう」
「わかりました」
アルベール様に改めて念押しをされながら、ゆっくりとジュリアの部屋に入る。すると、中は多くの茨によって埋め尽くされ、中に入るのを拒んでいた。
「これはまた、随分と茨が多いですね……」
「あれェ……? 誰か来たと思ったら、想定外なお客様だなァ……」
「この声は……!」
「あの茨の中から聞こえましたね。リーゼ嬢、お気をつけて!」
嫌と言うほど聞いてきた声が、茨の中から聞こえてきた。それから間もなく、茨達が一斉にその場から消えた。
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