そこは獣人たちの世界

レクセル

文字の大きさ
275 / 303
第三章

幸せな時間

しおりを挟む
「ではこちらでよろしいでしょうか?」

「えっと、ありがとうございます。」

戻ってきた狐種の店員さんから握り部分がちゃんと双頭牛の革になったさっきのハンガーを受け取る。ちらっとガロのほう見たけど表情はあんま変えてない。変えてないけどさっきの様子からしてもやれやれって感じがひしひし伝わってくる。

「鞘のほうはどうしますか?こちらでご用意いたしましょうか?」

「あ、前の剣の鞘があるので・・・」

「少し長さも幅も違うから入らないぞ。」

「うっ、そっか。どうすればいい?」

「まぁ暴れ牛の革で鞘を作るのがいいだろ。できるか?」

「かしこまりました。サイズは取ってありますので明日にまたご来店ください。」

「よし、行くぞ。」

そのまま一階まで店員さんに見送られて店を出る。行くっていうのはたぶん、ギルドだろうなぁ。新しい剣だからもっとしっかり試し打ちと受け流し訓練になるだろう。

「やっぱりギルドに?」

「ん?何言ってるんだ?もう帰るんだよ。」

「え?」

「もう昼の時間だろ?まずはキオの作り立ての昼を食いたい。2日後には聖都に行く。あっちで料理が作れる環境が整うかわからないからな。悪いがサンドイッチでいいから用意してもらうぞ?」

「そっか、そうだよね。了解。」

聖都に行くってのはわかってたけど、王都と同じ都ってくらいだからガロの別荘があるもんだと思っちゃってた。滅多に行くところじゃないって言ってたしあるわけないよね。それにしてもポーチに入れればほぼ作り立てと同じ味がするっていうのに、作り立てがいいって、なんかうれしいな。

「まぁあと、夜は長くなるからな。」

「あ・・・うん。」

こんな街中でなんて思ったりもするけど、僕らのそれほどおおきくない会話だし、急接近して耳を済ませたりしなければ他の人辰の会話の雑音に消えちゃうだろう。
そもそも明確に何をするって言ってるわけじゃない。僕にはわかることで、勝手に恥ずかしくなっちゃってるだけ。ただ恥ずかしいけど、もう前みたいにいやって言ったりせず、すんなり受け入れちゃってる。離れてた後、急激に恋しくなっちゃってたから、もう今更かなと思えるようになってきた。

「それより何で革がよかったんだ?糸のままでもよかっただろ?」

「えぇ?あんな派手な赤は嫌だよ。握りで見えにくいとはいえ茶色とかがよかったの。別に革がよかったってわけじゃないから茶色の糸でっていえばよかったって思ったよ。」

「あぁ、なるほど、そっちか。知ってると思うが双頭牛は強い魔物というわけじゃないがあまりいない希少種だ。皮が丈夫で古い時代に乱獲されすぎたのが原因ともいわれてるし、そういう生態とも言われてるがな。」

「うぅ、余計にお金使っちゃう結果になってごめん。」

「いや、金はいいんだ。握りにこだわる必要はあまりないと思ってただけなんだが、色の好みならしょうがない。」

そう言って軽く僕にだけ見えるように笑ってくれた。すぐにいつもの外での表情に戻っちゃったけど、なんかうれしくなっちゃう。それだけで家までの帰り道がなんか楽しい。

「よし、じゃあ昼は唐揚げな。」

「やっぱりそれなんだね・・・まぁいいよ。作って上げる。塩?醤油?」

「醤油の気分だな。」

「了解。」

実は塔から帰ってきて次の日も何か食べたいものはって聞いたら唐揚げ。いつもならバランスがって思ってたけど、何日か離れてたのもあって結局作っちゃった。もちろん味を塩に変えて。でもそしたら昨日と味が違うけど美味いって騒ぎ始めて、また次の日も醤油と塩のからあげだった。ただそれでどっちがどっちの味かは覚えてもらえたみたい。
そしてやっぱり好きなのは醤油のようだ。まぁ味が濃いからなんだろうけど、僕と一緒でちょっとうれしい。二日開けたし唐揚げでもいいだろう。というか作り立てがいいっていうガロの食べたいものを作って上げたい。いやまぁ明日も最後だからって言ってガロは唐揚げっていうだろうけど。
なんというか塔以来からさらにのせられやすくなってる気がする。いやまぁ、そりゃ荒れするときはもっと載せられやすかった気もするけど・・・まぁ別にいっか。ガロになら。さぁ出来上がったからあげを持って行ってあげよう。もちろん付け合わせのサラダと一緒に食べるご飯もね。

「はい、おまたせ。」

「おぉ、やっぱこれはいい。匂いもこのジュワジュワと聞こえる音もな。よし、いただきます。」

「うん、いただきます。」

いただきますの合図とともに結構大量に積み上げた唐揚げがどんどんなくなっていく。そしてガロはご飯もバクバク食べていく。僕は昼からそれほどは食べられないからご飯も少なめ、唐揚げもちょっとつまむくらい。
でもこうして二人で机に向かってご飯を食べてる時間が当たり前のようで、いつ終わるかもわからないという不安感もある。もう完全に元の世界に帰りたいとは思ってない。でもこっちの世界に来た理由も原因もわからないままで、もしかしたらって頭によぎる。
まだこっちに着て一年もたってないのにこんなにも離れがたい存在ができちゃった。向こうにはもうそんな存在は誰一人としていない。僕はもう、戻りたくはないんだ・・・
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...