そこは獣人たちの世界

レクセル

文字の大きさ
上 下
268 / 303
第三章

やっぱり唐揚げ

しおりを挟む
ガディアに連れられてキッチンスペースへ。49階までは塔の階層丸ごとが部屋一つだったけど、50階は部屋を分けてあるようだ。まぁ全部ひとくくりだとちょっと生活しづらいもんね。

「キッチンのものは好きに使ってくれて構わない。それじゃあ主についていたいのでこれにて。」

「え?」

ほんとに案内するだけしてガロと一緒に置いていかれてしまった。設備はかなりいいみたいだし、何を作るにしても不便はしない。とはいえこんな深夜な時間帯に何を作ろうかと悩んでいると、ガロからの熱い視線を感じる。

「キオの作ったからあげサンドは初日に食っちまったんだ。いいだろ?」

「こんな時間にから揚げ?太るよ?」

「しっかり動いてれば太ることはないぞ?なぁ頼む。きっとディバンさんもゴウさんも気に入るぞ?」

「はぁ、まぁいいよ。ただコーン油の用意はお願いね?」

「おう、まかせろ。」

結局ガロに押されて鶏のから揚げを作ることに。備え付けの魔道具の冷蔵庫をウモロコシと飛来鶏を指定して開ければちゃんと入ってたので使わせてもらう。ガロに油を搾ってもらって鶏肉を一口大に。
醤油とにんにくも冷蔵庫の中に入ってる。多分お金はあるだろうからほぼ何でもそろってるんだろうな。ちょっとオリーブオイルを見てみたけどいっぱい入ってた。まぁ高いものだし、もう油絞っちゃったし、見なかったことにしよう。
肉と調味料をボールに入れて揉み込んで味付け。衣をつけたら油で揚げていく。深夜でもきっと3人はがっつり食べるだろう。後僕も多分魔素の使い過ぎからか、作ってたらお腹すいてきた。いっぱい作っちゃおう。残っても瓶箱に入れてポーチに入れればいい。
それほど時間かからずに完成してお皿にたっぷり盛り付けてガロと一緒に持っていく。あ、たっぷり作ったけどそういえばガディアの分を作り忘れてた。決してさっきの戦闘でやられ気味だったお返しとかじゃなく、なんか従者感がでてきてて数に入れ忘れてしまった・・・まぁ数はあるから食べれはするだろう。

「お待たせしました。」

「おー、えぇ匂いがする。ん?なんやこれ?始めてみる食い物やな。そして油を使ってるみたいやな。でも、オリーブオイルじゃないみたいだな。」

「さすが貴族として美食家でもあるゴウよくわかるな。この匂い、もしかしたらトウモロコシの匂いか?にしてもほんと俺様も見たことないものだな。この料理はなんていうんだ?使った肉は?」

「えっと、鶏のから揚げです。使ったのは飛来鶏ですね。」

出来上がった鶏のから揚げ見てディバンさんもゴウさんも油を使った料理だとわかったようだ。恐ろしい洞察力、そしてトウモロコシを油にしたこともばれたっぽい。別に隠してるってわけじゃなかったけどさ。

「飛来鳥かぁ。もっとえぇ肉も入ってたやろ?まぁえぇか。ほら、ガロもキオ君も座って食うぞ。」

「では俺もご一緒にいただきます。」

「はい、僕も一緒にいただきます。」

「その、手を合わせてるのは何や?」

「確かキオ君がガロに教えた食事前の挨拶だったかな。水竜とかにも少し広がってるようで、ギルドに少し報告が上がってる。


「カレントのやつ・・・まぁディバンさんの言う通り食事前の挨拶です。ずっとキオと一緒にやっているうちに無意識にやるようになってしまいました。」

「ふぅん、まぁええか。んじゃくうか。」

持ってきたフォークで唐揚げの一つを刺してゴウさんの鰐の口が大きく開いてぱくりと一口でほおばってしまう。うん、すごく豪快な人だ。対してディバンさんも大きいのに、わざわざ半分だけをかみちぎって食べてる。

「うん、これは美味い。すごいなキオ君。」

「こりゃうめぇ。ほれガディア、お前も食え。」

「はい、ではいただきます。」

ゴウさんが後ろに立つガディアに指した唐揚げをちらつかせると、近づいてきてほおばった。ただ口は大きくないわけで一口でも四分の一くらいしか食べれてない。でもその一口食べた残りの唐揚げはゴウさんが自分で食べてしまった。なんというか、見せつけられてるって感じ。

「キオは食わないのか?」

「あ、うん、僕も食べる。」

ガロに言われてみてるだけじゃなく僕も食べ始めるけど、5,6個食べる間にあっという間にほとんどをガロとディバンさんとゴウさんで平らげてしまった。ガディアはゴウさんから時折もらったのをかんでたから2個分も食べてなさそうだけど、いいのかな?

「はぁー、こんな時間なのに結構食っちまったわ。飛来鶏でこのうまさだとはな。」

「主が満足したのならよかったです。ですが明日は少しヘルシーなものにしましょう。」

「がっつり盛られてたけど、あっという間だったな。あとでセリスに怒られそうだ。」

「キオのからあげは最高でしょう?」

「それに惚れちまったってか?確かにメシウマい相方ってのは代えがたいよなぁ。」

「俺様はセリスがあんま作らないからわからないが、そんなもんか。今度作ってもらわねぇとな。」

「満足していただいたようで、何よりです。」

みんないろいろ思うところがあるみたいだけど、僕の料理を気に入ってもらえてよかった。なんて気楽な気持ちだったのは一瞬で、ゴウさんがこっちにギラリとした目を向けてきて、ガロもちょっと臨戦的になる。な、何事?

「飯の礼や、キオ君に武器の稽古つけたる。腹ごなしにもなるしな。」

「それは、ありがたいです。キオ受けておけ。俺も受けたがゴウさんの建設武器の腕は俺なんかよりも圧倒的に上だ。」

「え?えっと、では、よろしくお願いします。」

別に使った素材はゴウさんのもので、礼なんて必要ないと言いたかったけど、言える雰囲気じゃなかった。というか滅多にない機会だから受けたほうがいいんだろう。ただガロ以上の腕ってのはいいけど、稽古がきつかったりしないだろうか?ちょっと不安だ・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

苦労性の俺は、異世界でも呪いを受ける。

TAKO
BL
幼い頃に両親と死別し苦労しながらも、真面目に生きてきた主人公(18)。 それがある日目覚めたら、いきなり異世界に! さらにモンスターに媚薬漬けにされたり、魔女に発情する呪いを掛けられていたり散々な目に合ってんだけど。 しかもその呪いは男のアレを体内に入れなきゃ治まらない!?嘘でしょ? ただでさえ男性ホルモン過多な異世界の中で、可憐な少女に間違えられ入れ食い状態。 無事に魔女を捕まえ、呪いを解いてもらうことはできるのか? 大好きな、異世界、総愛され、エロを詰め込みました。 シリアスなし。基本流される形だけど、主人公持ち前の明るさと鈍感力により悲壮感ゼロです。 よくあるテンプレのが読みたくて、読みつくして、じゃあ仕方ないってことで自分で書いてみました。 初投稿なので読みにくい点が多いとは思いますが、完結を目指して頑張ります。 ※ たぶんあると思うので注意 ※ 獣人、複数プレイ、モンスター ※ゆるフワ設定です ※ムーンライトノベル様でも連載中です

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

【R-18】僕のえっちな狼さん

衣草 薫
BL
内気で太っちょの僕が転生したのは豚人だらけの世界。 こっちでは僕みたいなデブがモテて、すらりと背の高いイケメンのシャンはみんなから疎まれていた。 お互いを理想の美男子だと思った僕らは村はずれのシャンの小屋で一緒に暮らすことに。 優しくて純情な彼とのスローライフを満喫するのだが……豚人にしてはやけにハンサムなシャンには実は秘密があって、暗がりで満月を連想するものを見ると人がいや獣が変わったように乱暴になって僕を押し倒し……。 R-18には※をつけています。

処理中です...