そこは獣人たちの世界

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第三章

塔48階の戦い

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ちょっとだけ休憩をはさんで48階へつくと、下の階で見たような炎の柱が部屋の両脇をしめるように轟々と燃え上がっている。そして部屋の中央でこちらを見つめるように寝そべるまっかな鬣のライオンの顔と胴をもち背中にはまっかだけど鷲のような整った大きい羽根、そしてまっかな蛇が尾となっているいわゆるキマイラが鎮座していた。
まだ部屋に入ってないけど明らかにこっちを認識している。襲ってこないのは部屋に入るのを待っているのか?ここから攻撃してもいいだろうか?いや、多分階段前に入るためだけ用の障壁が張られてるんだろうな。じゃなきゃ向こうから攻撃がきてる。

「レッドキマイラって僕でも戦える相手、なんだろうか。いや、行くしかないか。」

正直さっきの白鬼熊がかわいく見えるくらいの相手だ。ちょっとでも油断すればあっという間に噛み殺されるか引き裂かれるだろう。それでも進む、頂上にいるはずのガロに会うために。
僕が部屋に入ると寝そべっていた体を起こすキマイラだったけど、四つ足なのに3メートルはあるように見える。頭から尻尾までは5メートルくらいはあるだろうか。見下すようにライオンの顔と尻尾の蛇の顔が見つめてくるが、襲ってくる気配がない。

「まさかだけど、こっちからしかけるのをまってる、のか?」

僕がそう呟いたのを聞いていたかのようにちょっと意外そうな顔をしたように見えた。まさかと思ってたらさらにニッと顔を変えたように見えた。やばい、来る!
一瞬ライオンの足に力が入るように見えてすぐに剣にまで魔素纏いして受け流せる体制に入った。たった一歩で羽の力も合わさってか詰め寄ってきた。大きなライオンの爪が薙ぎ払われるが、それをきれいに受け流した。
そこまではよかったけど受け流した方向がよくなかった。キマイラに向かうように体を動かしてしまったせいで、僕の目の前に尻尾の蛇の顔の口がガバッと開いていた。このままだとあっけなく食い貫かれて終わる。そう思った瞬間、ほぼ無意識に剣が前に出ていた。
かなり無理に動かしたかもしれななこれ、腕が痛い。だけど蛇の牙を直撃せずに剣で防げたからよかった。ただ受け流せずにただはじくだけになってしまった。すごい腕がしびれる。でもすぐに次の攻撃が来る。
キマイラはちょっと体の向きを変えるだけで僕にと向きなおれる位置だ。受け流して少し離れることができなかったのが響いてる。それでももう一度キマイラの爪を受け流すしかない。
剣は前にでていたけど、攻撃は爪ではなかった。キマイラのライオンの顔の口が大きく開く。何が来るか一瞬で分かった。すぐさま左後方にと飛びのいたけど、口の中の発火が始まり、ゴウっと炎が吐き出される。
その炎に剣を合わせ始める。炎を受け流すのは初めてだけど、雷ならばガロの訓練で受け流ししていた。要領は同じだと自分に言い聞かせて必死に魔素を剣に流す。その魔素の流れで魔法を打ち流すらしい。あんまり得意ではなくて全然うまくいかなかったけど、この土壇場の本番で、かなりうまく受け流せた。炎が右にと大きくそれる。
キマイラは僕を下に見てこの攻撃をしたようで一瞬の隙ができた。炎を吐き終え閉じるというほんの一瞬の隙。そこに合わせて反射的に腕を突き出して魔素纏いの魔素も捨てうち一か所に集めていた。

「サンダーガン!」

今できうる最大威力で打ち出すサンダーガン。魔素纏いを一瞬といてまで打ち込み、よけていた途中で体勢も悪かったのもあって軽く吹っ飛ぶ。ただそこまでしたかいあって今までの速度とは比べ物にならない速さで飛んでいく。
それでもレッドキマイラならば炎を吐いてなどいなければ多分、完全回避とは言わずとも直撃などしなかっただろう。ほんとに一瞬のスキを突く。それはガロとの戦闘訓練でたまたま一回だけできたガロの雷を打ち流し、無意識に反撃した時に似ていた。

「ガァァ!」

キマイラも少しはよけたが眉間あたりを狙ったのが額にあったた形になり、キマイラを雷撃が貫き、叫びながら軽く後ろに下がっていく。

「グ、グガァァ!」

「余裕がなくなったってかんじ?でも、だいぶ鈍ってるよ!サンダーガン!」

再びこっちに突っ込んできたけどさっきよりも全然遅い。今の一撃はかなり効いていたらしい。合わせるようにもう一発サンダーガンを打ち込んだが、それを見てこちらに突っ込むのをやめ、ステップで大きくよけた。
なるほど、やけになって突っ込むだけの熊とは違うってわけだ。額の傷から紫の血が出てきている。もう一撃当てられれば倒せそうだけど、今のを見るとサンダーガンに警戒が強くて当てれそうにない。それならしょうがない。

「ほら、もう一発!サンダーガン!続けざまにもう一発!」

できうる限りサンダーガンを乱発する。大きいから出しながらすべてよけてくる。ただしかすりもしないように大きくよけている。それでいてちゃんとこっちに寄ってきやがってる。でもそれも狙い通り。
僕に爪が届く距離になってやっぱり仕掛けてきた。サンダーガンを打ち込む速度まで計算してるかのような攻撃だ。こちらが防ぐしかない攻撃で当然受け流す。キマイラも受け流されるのはわかっていたのかさらに受け流す先に尻尾の蛇が迫る。
残念、その尻尾が狙いだ!来るのがわかってさえいればこのくらいの速さなら体をねじらせてよけれないこともない。そして剣で蛇の尻尾を切り捨てた。そして素早く飛びのいてキマイラと距離をとる。

「ガァァァ!!」

「さっきと同じパターン、やっぱり、余裕なさそうだね。」

「グルルル・・・」

ライオンの顔が悔しそうにそして辛そうにゆがむ。やっぱり言葉がわかるのか。上位の魔物は言葉がわかるどころか、魔族となって喋れるようにまでなるらしいけど、このキマイラは魔族レベルに片足突っ込むほどの奴ってことだ。それともレッドキマイラはみんなそうなんだろうか?
ただそんなやつでも尻尾からもだらだらと紫の血を流し、額からも血を流していれば、消耗も激しいようで再び突っ込んでくるがもう完全に勢いが失せていた。もう熊の一撃よりも受け流しやすいくらいだ。わき腹に陣取り最後の一撃をくらわす。

「サンダーガン。」

雷がキマイラの体を貫くと、キマイラはその場にドスンと倒れ込む。同時に体が霧のように霧散していき地面にと吸われていった。勝った、けれど肩で息している。魔素の消耗が激しすぎる。このまま49階には行けない。また休憩を入れるしかないか。
ふと背後が熱いことに気が付く。それもそうだ。炎の柱の場所まで追い詰められていたようだ。完全に忘れてたな。こんな調子で49階を突破できるのだろうか。この部屋よりもやばいんだろうからな・・・
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