そこは獣人たちの世界

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第二章

*狙い

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あからさまに焦るように急ぎながらまさかカレントの紹介した宿に入っていくとは。まさかとは思うが起きた後に即行為なのか?トランス状態に陥ったキオにとっては負担になりそうだが、他に何か考えがあるのだろうか。

「ったくよぉ、オレの気も知らねぇで堂々聞いてきやがって、なぁ?」

「なぁ、といわれても、なんてことなく教えたのもカレントだ。」

「まぁそうなんだけどよ、ちょっと妬けちまうぜ。」

気丈にはふるまっているが今回のがだいぶ決め手になったようで、あからさまに落ち込んでいる。ガロとパートナーになるといきんでいたからな。同じこの宿をとっているところを見るに、おそらくガロとパートナーがより深くパートナーとなる行為を求めていたんだろう。

「まぁそれはそうとだ。まさかドラドがこの宿に来るとはな。」

「誘ったのはカレントだろ?」

「いや、それはそうなんだけどよ、ほんとに来るとは思わねぇじゃねぇか。」

「なんだ?冗談で誘ったのか?」

「いや、そういうわけじゃねぇんだけどよ。なんというか、堅物ってイメージがあるからこういうことペアくらいじゃしねぇのかなってな。」

堅物か。そういう風にふるまってきていたともいえるが、性格としゃべり方が一番の原因だろうな。最も確かに発情もしていないのにあまり交友の無いものと行為をしたいとは思わない。

「確かに、行為の経験は発情期に何度か通った店くらいなものだ。」

「なんだ店に入ったことあんのか。ちょっと意外だ。」

「そういうカレントはどうなんだ?」

「オレか?俺も店には入ったことあるぜ。でもペアとやったりはさすがにねぇよ。」

それもそうか、ガロとのパートナーを目的としているならば他に組んだペアと行為をしたりはしないだろう。だからこそ誘われたのは意外だった。いや、ガロがすでにパートナーを組んで、行為するための宿をとったのならばもういいのか。

「ならばこの部屋に誘ったがしないということか?それとも自暴自棄でだれでもいいのか?」

「誰でもいいってわけじゃねぇよ!でもな、ドラドとペア組んでクラーケン倒した時、いろいろ俺を止めてくれただろ?リヴァイアサンでもやっちまったように先走っちまうこと多いんだよ。ガロはそれをしっかりカバーしてくれた初めてのペアだったんだ。」

あぁ、ペアやパートナーを求めるDランクごろの話か。そのころならば前に出たがる者も多い。カレントのようなのも普通だ。普通だが、ペア同士がお互いにカバーしない戦いをするといつもよりも戦いが不利になることも多い。それでソロばかりになりCどまりというやつもよくいる話だ。
そういう時期に先走った者をしっかりとカバーしてくれる相手がいるとパートナーになりたいと思うのは当然だ。良いほうでも前に出過ぎたペアをただ叱るものや冷静に抑えようとするものくらいだからな。

「だがガロはパートナーにはならなかったと。」

「そうなんだよ、あいつはソロ希望だったらしくてな。だからこそよ、何度も誘った俺より、ぽっと出の低ランクをペアにしたと思うと、ちょっとな。」

パートナーになりたいものを奪われる感覚か。自分は奪われたわけではないが、少しその気持ちには理解できる。

「少しだけわかる。」

「あん?あぁ、ドラドもそういえばパートナー居ないんだよな。色んな奴とペアを組んでSランクにまで上り詰めてる。何度か組んだ相手と誰かパートナーにしたいやつはいなかったのか?」

「いたことにはいたんだが、別のものとパートナーになりたいと懇願していた。自分から誘える雰囲気ではなかったな。」

「オレみたいなやつがいたってことか。そいつはしっかりパートナー組めたのかね。」

やはり気が付かないか。そういうところがガロがパートナーに選ばなかった理由なのかもしれないな。

「いや、組めてはいない。」

「オレと同じ境遇か。他の奴に奪われたと。」

「はぁ、これでも気が付かないのか?」

「ん、何がだ?」

だいぶ感の薄いやつだな。戦闘面では先走ることはあるものの感もさえていたというのに。あぁ、そうか。そういう風に思われているとは思っていないということか。ならば少し恥ずかしいがしっかりといってやるしかない。

「カレント、君のことだ。自分がパートナーにしたいと思ったのは。」

「え、オレ!?な、なんでオレ?組んだのだってこれが3度目だろ。」

「あぁ、はじめに組んだ時だな。君の水龍砲に目を奪われた。自分の浮島とはわけが違う。美しくも破壊力のあるあの技に。」

これは紛れもない言葉だ。自分は初めて他人の魔法で美しいと思った。それを打ち出す本人すらも美しく見せるほどに。パートナーになりたいと思った。動きに村があったのは確かだが磨けば光ると。
だが、カレントにパートナー候補がいないかと聞いたときにガロの名が出た。絶対にパートナーにしたいと。そこで自分は冷静になれた。カレントとはペアで終わるのしかないのだと。

「い、いやいやいや、何言いだすんだよ。」

「カレント、君が自分に対して少し思ってくれたように、こちらが何も思っていないのにこの宿にのこのこついてくると思っていたのか?」

「そ、それは・・・確かにそうだな。ってことは、今の話、本当なのか。」

「最も君がよければだな。パートナーとなるか?」

そう、卑怯者はカレントではなく自分なのだ。初めにドーパーの依頼が来たのはカレントだった。ペア候補を探してるところに自分が入った。すでにその時にはガロが誰かとパートナーを組んだという話を耳に入れていた。
こうなることを求めていたのは紛れもなく自分。こんな卑怯な自分をさらけ出していない。弱くなったカレントに付け込んだと言えない。ただ、強く青き竜を真剣に見つめる。誘ってきたのはそちらだと、まるで言い聞かせるように。
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