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第二章
*探しあてるまで
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くそっ!完全に不覚だった!宿に何か仕掛けはあると思っていたが、睡眠ガスだけじゃなく、俺とキオの部屋の間だけ断音の魔道具の壁だったとは。
万が一眠らされたりしても向こうの音ですぐに起きる自信があった。しかも俺が意識のあるうちはキオのほうから軽く寝息も聞こえていたくらいだ。それで安心感で軽く眠気が来て、座ったまま軽く寝ちまって、起きたら隣にはいないとか、何が守るだ。何が大丈夫だ。くそっ!
町に入る前からつけておいた追跡の魔道具の効果は続いているはずだが、今は完全にその反応が消えている。途中まではあるようだからいい。問題はその反応が3つもあるってことだ。
ひとつは宿から一番近い南の端、今向かっているところだ。南側の家はとにかく小さいのがおおい。反応が切れた建物も、一見すると周りと同じ普通の小さな民家だ。剣を手に入りたいところだが、万が一本当に民家だった時がやばい。魔素感知もするが中には入ってすぐのとこあたりに知らない反応が二つ。とはいえキオはおそらく魔素感知のできないような部屋に閉じ込めてるだろう。
とにかく直接乗り込むしかない。日付の変わるほど寝るような俺じゃない。日の傾きからそれほどたってはいないはずだが、早く助け出さなくちゃいけないことくらいわかる。
入り口のドアが開いている。この村にしては不用心なことだ。不審に思ったが、中にいたのは猫種のやせ細った老夫婦だった。そして俺が入ってきてもちらっとうつろな目で見るだけで、すぐに机の上のぼろい皿に注がれた少ないミルクを飲み始めた。
「・・・邪魔するぞ。」
ちっ、やはり貧困層か、厄介な。金さえ積まれれば何をするかわからないようなやつもいる。そういう気配のある夫婦ではないが、こればかりはわからない。中に入り、床に手をついて、家じゅうの床、壁に魔素感知を広げていく。変な場所があればこれでさすがにわかる。だが、外れのようだな。
「ちっ!ここじゃないか!失礼する!」
「お客さん、お待ちなさい。礼もないのかえ?」
「これで我慢しておけ!」
かすれた老婆の声に一瞬足を止めて、家から出る前に金貨の一枚を投げ放った。多いほどだったろうが関係ない。とにかく次の場所に行く。次は東、一番あの宿からも、そしてあの館からも遠い場所になる。
東に入ると廃屋が目につき始める。魔素探知的に人のいる建物もあるようだが、何より気配的に鼠種が多い。かなりきつい場所だな。ここがあたりか?
反応の消えた建物も廃屋の一つだった。壁も一部なく、中から人の反応はない。ドアが壊れて動かないので、遠慮なく大剣でなくポーチから出した小ぶりな剣を抜いて崩れた壁から中に入るが、もぬけの殻で外れだとわかる。
問題は、集まってきた人の反応のほうか。簡単には抜けられそうにないが、相手してもろくでもないことしかない。魔素纏いで身体強化し、一気に抜けるしかない。
次の場所、北側に向かう途中に3匹ほど待ち伏せていたが、なんてことの無い鼠だったために軽く雷を纏わせた剣でいなす。これでしびれて動けないだろう。
一番ないと思っていた北側だったか。あそこは比較的普通なやつらが多いと思っていたんだが、そういうところにこそ何か隠すのか。反応が途切れていたのはいわゆる弓屋。ヘビーボア狩用の弓を取り扱う店だった。
「いらっしゃい!おっと、外のお客さんかい?何をお探しで?」
並んだ弓はどれも同じようなつくりばかりだが、探しているのは弓なんかではない。温厚そうな普通の犬種の店員だが、つながりがあるんだろうか。それとも知らぬうちに使われているか。
「ちょっとな。冒険者だ。悪いが魔素探知させてもらうぞ。」
「え?あ、はい。ど、どうぞ。」
俺が冒険者だとすぐにはわからなかったようで、脅すように言えばそそくさと受付テーブルの後ろに隠れてしまった。どうやら無関係の奴のようだ。だがこの店、地下に空間がある。
その場所自体は魔素感知されないようにしているが、土を感じ取ればすぐにわかる。すこし手抜きに感じるが、俺への時間稼ぎとしては十分いろいろしてくれたな。入り口は、おそらく店の外か。
「少し外を荒らすぞ。」
「え、あ、あの・・・」
よく反応の途切れたところを調べると店の横の隣の家戸の隙間で切れている。覗くだけでは何もないが、足元の土を払うと明らかにいびつな鉄の床扉が現れる。
「そ、そんなところに床扉が!?」
「黙ってろ。ここの調査の任務だ。降りたら閉めておけ。」
小ぶりの剣を取り出して、軽く犬種の店主を脅しておく。悪いが、キオが最優先だ。床扉を引き開ければ梯子が見えたが、そんなものは使わずに一気に下に飛び降りる。
予想通り魔法阻害はかけられているが、外からの魔素感知妨害をしていても、中までは魔素妨害していないようだ。あっけなく鉄扉の先に二つの気配を感じる。キオがはりつけにされているのも、すぐにわかった。
鍵もかかっていない鉄扉を開けた瞬間、裸の黒い鼠が、その尾をキオの下腹部に突き立てているのが見えた。全裸で張り付けられているキオが見えた。次の瞬間には俺は黒い鼠の首を跳ね飛ばしていた。
万が一眠らされたりしても向こうの音ですぐに起きる自信があった。しかも俺が意識のあるうちはキオのほうから軽く寝息も聞こえていたくらいだ。それで安心感で軽く眠気が来て、座ったまま軽く寝ちまって、起きたら隣にはいないとか、何が守るだ。何が大丈夫だ。くそっ!
町に入る前からつけておいた追跡の魔道具の効果は続いているはずだが、今は完全にその反応が消えている。途中まではあるようだからいい。問題はその反応が3つもあるってことだ。
ひとつは宿から一番近い南の端、今向かっているところだ。南側の家はとにかく小さいのがおおい。反応が切れた建物も、一見すると周りと同じ普通の小さな民家だ。剣を手に入りたいところだが、万が一本当に民家だった時がやばい。魔素感知もするが中には入ってすぐのとこあたりに知らない反応が二つ。とはいえキオはおそらく魔素感知のできないような部屋に閉じ込めてるだろう。
とにかく直接乗り込むしかない。日付の変わるほど寝るような俺じゃない。日の傾きからそれほどたってはいないはずだが、早く助け出さなくちゃいけないことくらいわかる。
入り口のドアが開いている。この村にしては不用心なことだ。不審に思ったが、中にいたのは猫種のやせ細った老夫婦だった。そして俺が入ってきてもちらっとうつろな目で見るだけで、すぐに机の上のぼろい皿に注がれた少ないミルクを飲み始めた。
「・・・邪魔するぞ。」
ちっ、やはり貧困層か、厄介な。金さえ積まれれば何をするかわからないようなやつもいる。そういう気配のある夫婦ではないが、こればかりはわからない。中に入り、床に手をついて、家じゅうの床、壁に魔素感知を広げていく。変な場所があればこれでさすがにわかる。だが、外れのようだな。
「ちっ!ここじゃないか!失礼する!」
「お客さん、お待ちなさい。礼もないのかえ?」
「これで我慢しておけ!」
かすれた老婆の声に一瞬足を止めて、家から出る前に金貨の一枚を投げ放った。多いほどだったろうが関係ない。とにかく次の場所に行く。次は東、一番あの宿からも、そしてあの館からも遠い場所になる。
東に入ると廃屋が目につき始める。魔素探知的に人のいる建物もあるようだが、何より気配的に鼠種が多い。かなりきつい場所だな。ここがあたりか?
反応の消えた建物も廃屋の一つだった。壁も一部なく、中から人の反応はない。ドアが壊れて動かないので、遠慮なく大剣でなくポーチから出した小ぶりな剣を抜いて崩れた壁から中に入るが、もぬけの殻で外れだとわかる。
問題は、集まってきた人の反応のほうか。簡単には抜けられそうにないが、相手してもろくでもないことしかない。魔素纏いで身体強化し、一気に抜けるしかない。
次の場所、北側に向かう途中に3匹ほど待ち伏せていたが、なんてことの無い鼠だったために軽く雷を纏わせた剣でいなす。これでしびれて動けないだろう。
一番ないと思っていた北側だったか。あそこは比較的普通なやつらが多いと思っていたんだが、そういうところにこそ何か隠すのか。反応が途切れていたのはいわゆる弓屋。ヘビーボア狩用の弓を取り扱う店だった。
「いらっしゃい!おっと、外のお客さんかい?何をお探しで?」
並んだ弓はどれも同じようなつくりばかりだが、探しているのは弓なんかではない。温厚そうな普通の犬種の店員だが、つながりがあるんだろうか。それとも知らぬうちに使われているか。
「ちょっとな。冒険者だ。悪いが魔素探知させてもらうぞ。」
「え?あ、はい。ど、どうぞ。」
俺が冒険者だとすぐにはわからなかったようで、脅すように言えばそそくさと受付テーブルの後ろに隠れてしまった。どうやら無関係の奴のようだ。だがこの店、地下に空間がある。
その場所自体は魔素感知されないようにしているが、土を感じ取ればすぐにわかる。すこし手抜きに感じるが、俺への時間稼ぎとしては十分いろいろしてくれたな。入り口は、おそらく店の外か。
「少し外を荒らすぞ。」
「え、あ、あの・・・」
よく反応の途切れたところを調べると店の横の隣の家戸の隙間で切れている。覗くだけでは何もないが、足元の土を払うと明らかにいびつな鉄の床扉が現れる。
「そ、そんなところに床扉が!?」
「黙ってろ。ここの調査の任務だ。降りたら閉めておけ。」
小ぶりの剣を取り出して、軽く犬種の店主を脅しておく。悪いが、キオが最優先だ。床扉を引き開ければ梯子が見えたが、そんなものは使わずに一気に下に飛び降りる。
予想通り魔法阻害はかけられているが、外からの魔素感知妨害をしていても、中までは魔素妨害していないようだ。あっけなく鉄扉の先に二つの気配を感じる。キオがはりつけにされているのも、すぐにわかった。
鍵もかかっていない鉄扉を開けた瞬間、裸の黒い鼠が、その尾をキオの下腹部に突き立てているのが見えた。全裸で張り付けられているキオが見えた。次の瞬間には俺は黒い鼠の首を跳ね飛ばしていた。
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