そこは獣人たちの世界

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第二章

思い出す

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気が付くと鉄のすすけたにおいがしてくる。体を動かそうとしたけど冷たい鉄の感触がしただけで全く動かなくて一気に意識が覚醒する。
手首も足首も枷で繋がれてるのか。自分自身をうまく見れるわけじゃないけど、壁につながれてるってことはわかった。足も少し地面から浮かされてる。通りで腕も足もいたいわけだ。
どうにもこうなった時の記憶がつながらない。ガロからも言われた。万が一があった時は慌てたり騒いだりせず、とにかく冷静な自分でいろと。
まず置かれた状況の再確認。周りがすべて鉄の壁、窓もなく、唯一の出入り口の扉も鉄製、とにかくここから出す気もないし、ここがどこだか悟らせないって感じの部屋だ。
繋がれてる枷もただの鉄じゃないようだ。魔法を使おうとするけどまったく発動する気配がない。枷じゃなくって部屋自体が魔法を使えないようにしてる可能性もあるか。
そして服は剥がされて全裸。もふもふの体になってなければ寒さで凍えてたかな。恥ずかしさよりも怒りのほうがこみあげてくる。せっかくガロのおさがりの服なのに、破かれたりしてないだろうか。
で、肝心のこうなっちゃった記憶を思い出す。時間的に昨日なのか、まだ今日なのかはわからないけど、あの屋敷を出た後、屋敷近くでガロが人の気配を探りながらも、かなり小さな声で村の外で寝るか宿をとるかで少し話し合ったんだった。

「外で寝れば何かされても対応しやすいが、反面、キオが攫われる事態になった時にもしかすると俺が村に入れないよう工作される可能性がある。」

「そんなことまでするの?」

「可能性の話だ。どんなふうに攻めてくるかもわからない。守りきると言いたいが、確実にとは言い切れない。巨白虎に後ろから襲われたときのようにな。」

「うっ、僕の不注意な行動が不安定要素ってこと?」

「まぁ、それもあるが、多対一もできるが、キオとの場所を離されたら守るも何もないってことだ。」

「そっか・・・」

ガロがずっと離れなければいいといってたのはつまるところそこだ。ガロの魔素纏いによる強化した走りは雷のような速さだけど、魔物と違って攫いにきたのは人で、離れてからめ手をされれば処理に時間がかかり、僕と離れたら攫われちゃったわけだ。

「ちなみに、何もしてこないってことはない?」

「・・・ないだろうな。」

「うーん、外でも宿でも一緒なら、宿のほうがいいんじゃない?」

「ま、そうだろうな。」

そんな調子で村の宿をとることになった。屋敷から遠いほうがいいかとか近いほうがいいかとかもガロと話し合ったけど、攫ったとしてもすぐに屋敷には連れていかれないで、どこか別の場所だろうと、村の大通りに出てすぐにあった宿屋に入ったんだ。
というか村でも宿はあるんだなとちょっと感心したけど、一人部屋しか用意がないといわれた。ガロはわかっていたらしく隣同士の二部屋分を借りてとりあえずいったんガロの部屋に二人で入ったけど、すさまじく狭かったのを思い出す。思わず何これって言っちゃったくらいだ。
扉じゃなく遮るのはふすまで、しかも目の前にシングルサイズよりちょっと狭いんじゃないかっていう敷パッドみたいのが敷かれてるだけ、寝れるだけましといえるか、寝るにも狭すぎるというか、そんな感じだった。

「ここ以外の宿はないの?」

「ない。ここだけだ。以前もここに泊ったことがある。言っとくが、村宿なんてこんなもんだぞ?町とくらべちゃいけない。」

「そうなんだ・・・」

それを聞いてちょっと今後の遠征依頼がおっくうになったっけ。あぁ、それはどうでもいいんだった。今はつながれてるんだよ。冷静になるのはいいけど気を緩めるべきじゃない。
そのあと日も高いけど、僕がまだ本調子じゃないから寝ていろと無理やり隣の部屋に詰められたんだった。何かあるかもと不安だったけど、横になったら結局寝ちゃったんだよね。万が一の対策にって渡されたのもあったし。
そのままここに?いや、その前になんかあったはず。そう、一回目を覚ましたはずなんだ。一応鍵は中につけられていて、受付でもらった線の入った四角い木板を差し込んでロックができるようになってた。ちゃんと差し込んで閉めてたはずなのにふすまの開く小さな音がして目を覚ましたんだ。

「誰!?」

「ほう、起きれるのか。まさか効いていない?いや、あのガロにも効いたものだったんだが、まぁいい。手間はかかるが一緒だ。」

上体を起こして確認すると部屋に入って来てたのはやっぱりガロじゃなく、黒ずくめの何かだった。確かその時の外はまだ薄明るかったけど、ちゃんとどんな姿なのかをとらえられなかった。そういう魔法なのかもしれないなあれ。
昼時から眠くなったのは疲れから来たのかと思ってたけど、部屋に何か盛られたからみたいだった。言葉的に睡眠ガスみたいなのだろうか?わからないけどガロのほうの部屋の壁をどんどんと叩いても返事の一つもなかった。

「おっと、それ以上はやめてもらおうか。効いているとはいえ衝撃で起きる可能性は高い。君のようにな。」

ふすまから僕までの距離はほとんどない。かけてたうっすい布団をバッと翻して上体だけじゃなくしっかり式パットの上に立ったはずだったけど、そっからの記憶がない。反撃する間もなくやられちゃったんだな、僕・・・
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