そこは獣人たちの世界

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第一章

ウォーターショット

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「さて、それではキオ君、さっそくやるとするかの?」

「はい、お願いします。」

「では見ているがよい。」

ビャクラクさんが右手を前に突き出すと、そこに僕が作ったピンポン玉くらいの大きさと同じ大きさの水の球体ができる。僕のいびつな塊と違ってきれいな球体だけど。
さらにその周りに水が集まっていく、僕に見えやすいように作ってるからわかるけど、どうやら筒のような形になってるみたいだ。

「この筒状にしている部分じゃが、ここは魔素放出の実で作ってくれて構わないぞ?今は見やすいように形を見せているのじゃ。」

「さすがに器用だなじじい。俺じゃそうやって見せれる気がしねぇぞ。」

「そうかの?魔素はかなり余計に使うじゃろうが、できないことはないと思うがの。」

「そうか、じゃあ少しやってみるか。」

あれ、僕に見せてくれるためにわざわざ作った筒のほうをなぜかガロが作ってみる流れになってるけど、これはどうすればいいんだろ?ガロができるかどうかを見てる流れかな?

「キオ君、では放つのでよく見ているように。」

「あ、はい。」

どうやらガロのほうは見れないみたいだ。ちょっと残念。でもビャクラクさんの放つ魔法をしっかりと見たいという気持ちもあるので今はちゃんと集中する。

「ではいくぞ。ウォーターショット。」

水の筒の部分からさっきの水の球がすさまじい勢いで発射される。的も何もないけど、まっすぐに飛んで行ったから、的があったら粉砕しているんじゃないだろうか?そう思うほどの勢いだったけど、水の球を受けても訓練所の壁はへこんだりもしなかった。

「すごい勢いでしたけど、壁がへこんだり壊れたりはしなかったですね。」

「そうじゃの、今は障壁を張っておるからの。そうでなければ壁に穴が開いてしまっていたじゃろうな。」

なんてことなくそういうビャクラクさん。ちょっと怖いかも。でもそれだけの威力が出る魔法を、今の僕なら使えると判断して教えてくれるんだよね?こりゃやるっきゃない!

「早速やってみたいです!」

「ほほ、その調子じゃの。そこまでの威力を出すには鍛錬が必要じゃろうが、まずは先ほど見せた筒を作るところからじゃ。もちろんキオ君は属性を含めず魔素のみで作るのじゃぞ?大きくなくてよい。小さく短くまずは作るのじゃ。」

「はい。」

たしかにビャクラクさんみたいに初めから長い筒ができるとは思ってない。魔素の形を変えるっていうのはたぶん体に魔素を纏わせるのと同じ要領なんだろう。
ただ、今回は魔素を広げる、纏わせるじゃなく、形を作るだ。自分の体っていう固形物に纏うわせるわけでも、ただ広げるわけでもない。イメージ自体は見せてもらったおかげでできるけど。
とにかくやってみるしかない。とりあえず筒、というよりはもはや指輪のようなもので作ってみよう。それなら体全体じゃなく、指だけに魔素纏いする要領で作れるかもしれない。
そう思ってやってみたけど、やっぱり体に触れてない状態でできるのはただ延ばすくらいな感覚だ。見えてないけど自分で出した魔素だからわかるんだろうな。

「さすがのキオ君も難しいかの?」

「そうですね、でもこういう風に、魔素纏いで指につけるなら何とかできますよ。」

やっぱりガロにも感覚で分かっていたように、ビャクラクさんも魔素の放出の仕方がわかるというか見えてるみたい。それならと、指の根元に指輪みたいに魔素纏いさせる。多分見えてるんだ居ろうと思って、自分の指からビャクラクさんのほうに目をやると、すさまじく驚いたようで、毛の間から目と口がぽかんと開いていた。

「さ、さすがキオ君じゃの。部分的に魔素纏いができるようになっていたとは。」

「え?えっと、ガロとの打ち合いの時にもたまにやってたんですけど、一分だけを厚くとかしてたら、部分的にできるようになりました。」

そういえば部分的にぶ厚く白とは言われたけど、部分的に魔素纏いはガロにも見せてなかったっけ?いつの間にかできるようにはなってたけど。

「それのイメージは指輪というイメージかの?」

「そうですね。一応イメージは指輪です。」

「ならばそのイメージのまま魔素の指輪をつかんで外したりできるかもしれないの。やってみるといい。」

指輪のイメージのまま外すといわれてちょっと変な顔しちゃったかもしれない。でも確かに指輪ならつけ外しもできるなと思って、纏った魔素を言われた通り外してみると、そのままの形状を保ったまま外せたみたいだ。さらに指を離れても、そのまま宙に残ってるようにできた。

「できました!さすがビャクラクさん、いいアドバイスです。」

「うぬ、このアドバイスで本当にできるとは、さすがキオ君じゃの。」

あれ、もしかして普通はこんなアドバイスでできるようなもんじゃなかったり?常識外れと暗に言われているような気分になったけど、まぁできたもんはできたんだしいいだろう。

「後は筒状にするだけじゃが、指の途中までを纏うようにすれば筒はできるじゃろう。ただ、本来は筒はすべてまっすぐ作るのじゃ。指に合わせたら少しいびつにはなるかもしれんの。」

「なるほど、この方法も万能じゃなさそうですね。でも、この指輪くらいなら結構まっすぐですよね?」

「うむ、これは中の部分もそれほどいびつではない。それがどうかしたかの?」

「それなら、これをぶ厚くして、薄く延ばせば。うぬぬ、お、できた!」

見えないけどずっと宙にある僕の作った魔素の指輪をぶ厚くする。そして薄くまっすぐ伸ばせば、大きくないし短いけど、筒状になった。

「キオ君、その、さすがじゃの。」

あ、やっぱりこれもすごいことなんだ。でもつまり、魔素の扱いだけはかなりうまくなってるってことだよね?これで属性を含めたのもいろいろできればよかったんだけどなぁ。

「ではキオ君。その筒に合うように水を作り出し、筒から一気に押し出すように魔素を放出するのじゃ。それでウォーターショットとなる。的は儂のこの水に当てるのじゃ。」

「わかりました。」

自分の指の大きさだから粒は小さくなるけど、小さい分にはすぐにできる。そしてビャクラクさんが出したのは腰ほどの高さもある水壁だった。いや、壁というにはぶ厚すぎるし、箱という方が正しいかも?
普通の的じゃないのはなんでなんだろうか?とにかくそれに向かって魔素の筒に詰めた水の粒を発射する。

「ウォーターショット!」

小さく、ドンッという音がした気がした。僕の放った水の粒はビャクラクさんの水の箱の半分ほどを抉った。確かな威力がありそうでうれしかったけど、ちらっと見たビャクラクさんはちょっと険しい表情になっていた気がした。
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