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第一章
兎を仕留めて
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さっきとは違ってちゃんとあんまり音を立てないようにゆっくり近づく。もっと感知能力の高い魔物ならこんなんじゃ気づかれるだろうけど、角兎なら今の僕でも大丈夫。
さすがに僕のウォーターバレットの射程範囲にまで近づくと気づかれるけど、ここまで寄られると角兎は逃げれないと判断して逆に向かってくる。
そのまま突っ込まれたら防具はまだいつもの服のままだから相当痛いことになる。ガロのおさがりの皮鎧は逆に早いってなぜか言われたんだよね。でも確かに、兎の動きは逃げていくよりも遅くて対処できる程度だ。すぐに手に水の粒を集めるように集中し、勢いよく放つ!
「ウォーターバレット!」
勢いよく僕の手元から放たれた4つの水の礫は、まっすぐ向かってくる兎に一粒だけ当たって、兎は自分の勢いと水の勢いでころっと倒れる。
よし、って思ったのもつかの間、よろけながらだけど兎は立ち上がってきた。くっ、僕の水礫一発じゃ倒れないってか。
「キオ!今の水礫だと消耗に比べて効果が弱い!今みたいにひるませたらすぐに剣で処理するのがいいぞ!」
「えっ、う、うん!」
ちょっとさっき見た剣に突き刺さった兎を思い出して躊躇しちゃったけど、確かによろけてる今がチャンスなのは間違いない。ぎゅっと強く剣を握って、すぐに兎の首元目掛け、切り伏せる!
ザシュっ!という音とともに、刃から手に伝わる鈍い感覚。首から頭が切り落ちた兎。うっ、やば、気持ち悪いかもしれない。でも、これからのことぉ考えたら、こんなことでひるんでられない。
「大丈夫か?」
「う、うん。なんとかね。」
「そうか。でもしっかり仕留められたじゃないか。」
「まぁさすがに剣を使えば行けるって言われてたからね。でもウォーターバレットせっかく当たったのにあんまだったのがなぁ。」
「いや、そうでもない。あれでひるませたことで剣であっけなく倒すことができたわけだからな。相手が角兎なら剣だけでも戦えただろうが、この戦い方は他の魔物相手にも通用するぞ。」
「うーん、そうはいわれても、ガロは角兎くらい初めのころでも魔法で倒せたんじゃない?」
あれだけやってた魔法がひるませる程度だったのってのがやっぱり残念だ。まぁバレットの魔法ってもともとひるませるのが主だってのはわかってるんだけど。
「俺のは雷属性で殺傷性が高いからな。雷礫でも威力が出やすかった。水は汎用性は高いが魔素を多く使わなければ威力が出にくいという点もあるからな。もし魔法をもっと主体にするなら他属性の訓練をそろそろ始めるのもいいかもしれないな。」
「なるほど、他属性か。」
言われてみると水って災害とかではすごいイメージもあるけど、逆にただ流れてるだけとかたまってるだけじゃ影響力は少ない感じもある。あんな兎でもあれだけひるませるだけの威力出てるんだから、ウォーターバレットは満足するべきなのかもしれない。
「とりあえず今は仕留めた兎をこの袋に入れてくれ。本来はこういう袋だけで持ち歩くが、俺の場合は袋に入れた後ポーチにしまっちまうがな。」
「う、うん。了解。」
よく見ると紫色の血を流す兎の頭と体をどっちももらった袋に詰める。ただ仕留めるだけじゃなく、きちんと素材として使ってあげるためだ。
とりあえず僕が一匹狩れたことで、ガロ的には旅慣れの一段階として満足したようで町にと戻ることになった。そして町の出入り口のすぐのところ。行きにもちらっと見た大きな建物にと入る。
中には数人の冒険者らしき人が受付にガロから受け取ったような袋を渡している。そして換金してもらったり素材そのものを貰ったりしている。ここは解体場と呼ばれるギルドの施設の一つだ。
「いらっしゃい。ご用件は?」
「角兎二匹だ。肉も皮もいらないから換金でいい。」
「あいよ。解体費用から引いて4輪だけどいいのかい?」
「かまわない。」
僕たちの番になって袋を渡しながらそんな会話をしてる。受付の三毛猫のおばちゃんはガロのことをどうということもなく、袋を受け取るとすぐにギルドカードを合わせてお金のやり取りをしてそれで終わってしまった。
むしろおばちゃんよりも周りの冒険者にちらちらと目線を向けられてた気がする。あと隣の受付のラブラドールのような犬種のお兄さんにも。
「注目されてるけど、あの人は特に何も言ってこなかったね。」
「あぁ。あの人はみんなに対等だからな。ビャクラクのじいさんと同じようなもんだ。」
「え、そう?」
ビャクラクさんは結構ガロのこと気にしてるような気もするけど、あれでもみんなに対等なのかな?それだとしたらみんなに時間を作ってるってことだろうから大変だろうな。
「もちろんキオにはことさら時間を割いてもらっているから、なにかはお礼しなきゃと思ったんだが、向こうから断られたからな。」
「そ、そっか。」
一応僕が人間だからというところもあるんだろうけど、やっぱりそれってガロが連れてきたからってのも大きいと思うんだけど、余計なことは言わなくていいかな。
さすがに僕のウォーターバレットの射程範囲にまで近づくと気づかれるけど、ここまで寄られると角兎は逃げれないと判断して逆に向かってくる。
そのまま突っ込まれたら防具はまだいつもの服のままだから相当痛いことになる。ガロのおさがりの皮鎧は逆に早いってなぜか言われたんだよね。でも確かに、兎の動きは逃げていくよりも遅くて対処できる程度だ。すぐに手に水の粒を集めるように集中し、勢いよく放つ!
「ウォーターバレット!」
勢いよく僕の手元から放たれた4つの水の礫は、まっすぐ向かってくる兎に一粒だけ当たって、兎は自分の勢いと水の勢いでころっと倒れる。
よし、って思ったのもつかの間、よろけながらだけど兎は立ち上がってきた。くっ、僕の水礫一発じゃ倒れないってか。
「キオ!今の水礫だと消耗に比べて効果が弱い!今みたいにひるませたらすぐに剣で処理するのがいいぞ!」
「えっ、う、うん!」
ちょっとさっき見た剣に突き刺さった兎を思い出して躊躇しちゃったけど、確かによろけてる今がチャンスなのは間違いない。ぎゅっと強く剣を握って、すぐに兎の首元目掛け、切り伏せる!
ザシュっ!という音とともに、刃から手に伝わる鈍い感覚。首から頭が切り落ちた兎。うっ、やば、気持ち悪いかもしれない。でも、これからのことぉ考えたら、こんなことでひるんでられない。
「大丈夫か?」
「う、うん。なんとかね。」
「そうか。でもしっかり仕留められたじゃないか。」
「まぁさすがに剣を使えば行けるって言われてたからね。でもウォーターバレットせっかく当たったのにあんまだったのがなぁ。」
「いや、そうでもない。あれでひるませたことで剣であっけなく倒すことができたわけだからな。相手が角兎なら剣だけでも戦えただろうが、この戦い方は他の魔物相手にも通用するぞ。」
「うーん、そうはいわれても、ガロは角兎くらい初めのころでも魔法で倒せたんじゃない?」
あれだけやってた魔法がひるませる程度だったのってのがやっぱり残念だ。まぁバレットの魔法ってもともとひるませるのが主だってのはわかってるんだけど。
「俺のは雷属性で殺傷性が高いからな。雷礫でも威力が出やすかった。水は汎用性は高いが魔素を多く使わなければ威力が出にくいという点もあるからな。もし魔法をもっと主体にするなら他属性の訓練をそろそろ始めるのもいいかもしれないな。」
「なるほど、他属性か。」
言われてみると水って災害とかではすごいイメージもあるけど、逆にただ流れてるだけとかたまってるだけじゃ影響力は少ない感じもある。あんな兎でもあれだけひるませるだけの威力出てるんだから、ウォーターバレットは満足するべきなのかもしれない。
「とりあえず今は仕留めた兎をこの袋に入れてくれ。本来はこういう袋だけで持ち歩くが、俺の場合は袋に入れた後ポーチにしまっちまうがな。」
「う、うん。了解。」
よく見ると紫色の血を流す兎の頭と体をどっちももらった袋に詰める。ただ仕留めるだけじゃなく、きちんと素材として使ってあげるためだ。
とりあえず僕が一匹狩れたことで、ガロ的には旅慣れの一段階として満足したようで町にと戻ることになった。そして町の出入り口のすぐのところ。行きにもちらっと見た大きな建物にと入る。
中には数人の冒険者らしき人が受付にガロから受け取ったような袋を渡している。そして換金してもらったり素材そのものを貰ったりしている。ここは解体場と呼ばれるギルドの施設の一つだ。
「いらっしゃい。ご用件は?」
「角兎二匹だ。肉も皮もいらないから換金でいい。」
「あいよ。解体費用から引いて4輪だけどいいのかい?」
「かまわない。」
僕たちの番になって袋を渡しながらそんな会話をしてる。受付の三毛猫のおばちゃんはガロのことをどうということもなく、袋を受け取るとすぐにギルドカードを合わせてお金のやり取りをしてそれで終わってしまった。
むしろおばちゃんよりも周りの冒険者にちらちらと目線を向けられてた気がする。あと隣の受付のラブラドールのような犬種のお兄さんにも。
「注目されてるけど、あの人は特に何も言ってこなかったね。」
「あぁ。あの人はみんなに対等だからな。ビャクラクのじいさんと同じようなもんだ。」
「え、そう?」
ビャクラクさんは結構ガロのこと気にしてるような気もするけど、あれでもみんなに対等なのかな?それだとしたらみんなに時間を作ってるってことだろうから大変だろうな。
「もちろんキオにはことさら時間を割いてもらっているから、なにかはお礼しなきゃと思ったんだが、向こうから断られたからな。」
「そ、そっか。」
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