そこは獣人たちの世界

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第一章

*ニンゲンの話

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「さて、それでは本題じゃが、キオ君は元の種族は何の種族だったのかの?」

「それを聞いてくるか。俺が濁してたのはわかってただろ?」

「わかっておる。話を聞いてから上にどこまで話すか決めよう。お主とキオ君の仲を引き裂くような真似はせぬよ。」

「それを聞いて安心した。あいつは元はニンゲンという種族だったんだ。」

「なんじゃと!?」

じじいのとてつもない大声に思わず俺もたじろいでしまった。いろいろ驚かせたつもりだったが、まさかニンゲンといってこんなに驚くとは思ってなかった。

「な、なんだじじいしってるのか。」

「知っているのか、ではない。それで儂の元に連れてきたというわけか。相手が儂でよかったというしかないの。」

「どういうことだ?」

「ニンゲンについてはもう二度と他で話すなということじゃ。10年以上ギルドマスターを務めている一部のものしか知らぬ内容じゃからの。」

「そんな内容なのか、わかった。」

これは、キオを人の目にさらさないようにしてた俺の判断は間違ってなかったようだな。珍しい見た目というだけで済まなそうな内容だ。

「はぁ、しょうがない、話すとするかの。本来お主に話すと儂も立場が危うくなるのじゃが、知らなければキオ君を守るのも難しいじゃろうからな。」

「あぁ、わるいなじじい。」

「かまわんよ。お主はギルドができた経緯についてはしっておるかの?」

「あぁ、何年前かは忘れたが、2代目国王が作ったんだろ?それが何の関係があるんだ?」

「そう、元二代目国王、初代グランドマスターがおよそ3000年前に作ったのじゃ。破天荒な人じゃったと聞く。王という立場に縛られたくなくて世界を旅したもの。」

「そして世界で困る人々を助けるためにギルドという施設を作り歩いた男だろ?」

「そうじゃ。これは2代目王がギルドを作ったという偉業を大きく出すために作られた話じゃ。じゃが実際には少し違う。ギルドを作る提案をしたのは一人のニンゲンという種族の女だったらしい。」

「んな!?」

おいおい、なんだその話!?ニンゲンが絡む話なんだろうとは思ったが、初代グランドマスターであり、その時の王であるそいつにそこまでかかわってる存在なのか。

「儂が知っているのは2代目王が開発したとされる魔道具も、そのニンゲンが開発したものが多いと聞いたところまでじゃ。つまりニンゲンの価値を王族はしておる。注意するんじゃな。」

「魔道具も関係してるのかよ。それで、もしかして王族は見た目も知っているのか?」

「さぁの。儂はどんな姿じゃったかは聞かされておらん。」

「そうか・・・」

じじいで分からないからといって姿のほうは伝わってないと楽観視はできねぇな。ますますSランクになる必要性が増えてきた。

「それでSランクかの。どうやらかなり緊急な話のようじゃし、何とかしてやるかの。それで、キオ君はどのくらい狼種の姿で居れるのかの?」

「昨日は昼過ぎまで平気だったな。精を取り込んだ量でおそらく変わるだろうから、今日はもう少しは長いと思うけどな。」

「ほう、なぜそういえるのじゃ?」

あ、やべ、つい口が滑っちまった。余計なことを言うんじゃなかったな。

「おう、それを聞くのか?」

「ぬ、言いにくいことじゃったか?じゃが上に種族変異の手掛かりがつかめたと報告はするつもりじゃ。時間はあけるがの。」

「そうか、もしかしたらキオは種族変異とはちょっと違うかもしれねぇけどな。」

「そうかもしれぬの。ニンゲンと同じ原因かは不明といえるからの。じゃがこればかりはまた問題が起こらないようにしたいから少しでも手掛かりがほしいところなのじゃ。」

「そうか・・・まぁ、その、あれだ。コブまで入れたんだよ。」

「なに!?3回目でそこまでしたというのか!?強避妊薬は当然使ったじゃろうな!?」

「もちろん使ったさ。あぁでも、そういう反応されるだろうから言いたくなかったんだよ。」

「はぁ、それにしてもお主にそこまでの仲になるものができるとはのう。単に狼種にするために行為をしてるのではないのじゃろ?」

「あたりまえだろ。」

「まぁ態度で分かるわ。変なことを聞いてわるかったわい。」

失礼なことを聞くとは思ったが、確かに少しだけ狼種になるためにといって行為につなげてるところもある。言い訳にしていいことじゃないんだけどな。

「話を戻すがの、明日からギルドには通ってもらうつもりじゃ。もちろん儂の言うノルマをこなさなければいくらキオ君のことがあっても返さぬからの?」

「あぁ、その辺はわかってる。ただキオにもちゃんというつもりだ。」

「そうじゃの、お主がギルドに通う間あの子もギルドで訓練を重ねるといいじゃろうな。ギルド登録はお主がしてやるといい。させるつもりなんじゃろ?」

「気を利かせて悪いなじじい。」

もちろん魔法が使えるレベルならば、後は近接戦闘を教え込むためにもギルド登録させるつもりだった。俺のパートナーにも出来るしな。

「パートナー登録は儂が行ってやろう。他の役員だと騒ぐじゃろうからな。」

「つくづく感謝する。で、俺は何を返せばいい?」

「お主にはいろいろ世話になったからの。初めに遠出の依頼を受けてくれた恩もある。きにせんでよいぞ。」

「そうか、ありがとうな、ビャクラクさん。」

「・・・あぁ。キオ君が待っておるぞ、行ってやりなさい。」

ほんと世話になりっぱなしなのに久しぶりにその名で呼んだ気がする。そのせいかいつも以上に柔らかな笑顔で俺を送り出してくれた。
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