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第1章 異世界転生
第35話
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控えの間に入ると、床が大理石で出来ているせいか少しひんやりする。決して狭くないこの部屋には、3人掛けのソファーが6組置かれていた。広い空間に3人しかいなのでとても広く感じる。
「このソファーでいいか。とりあえず座ろう」
父が指を差す出入り口に一番近いソファーに腰掛けると、緊張をしているのか?父もジュリエッタも無言だ。息が詰まりそうだな。ジュリエッタも顔が強張っていたので、父の前だがそっとジュリエッタの手を握る。
「ありがとう。少し落ち着く」
「ヴェル。やるな。いつの間にか成長した息子を見ると、父さん嬉しいよ」
「大袈裟ですよ」
二人の表情も和らぎ、いくらかは気が楽になった。
「それにしても、何でお父様まで緊張を?何度も陛下に会ってるのでしょ?」
「緊張なんかしてないよ。自分の息子が何を言われるのか気になってるだけだ」
「そんな突拍子も無い事を言われるのでしょうか?」
「王城内ではヴェルは王女を救った英雄ってことで、自分が考えている以上に時の人なんだよ。コレラが収束して間もないのに呼び出しが早すぎるのもあってな。まあ異例なわけだ」
父は苦い顔をしてそう言った。
「そもその英雄って誰が言い出したのか分からないけど迷惑な話です。戦で武功を上げたわけでもないし」
「それを言い出したのが他ならぬ姫殿下なんだよ。だから心配なんだ。それに爺さんに聞いただろう?今回の謁見を強く望んだのは陛下なんだ。何を企んでいるのやら」
まあ9歳の子供に無茶を言うことはないだろう。それにしても早く無事に終わって欲しい。
それから伯爵閣下が着替えをして戻ってきた。上質で金銀糸が施されたいかにも、と言った格好をしている。謁見ひとつで、ここまでしないといけないのかと緊張感が増す。
「待たせたな。謁見の準備が整った。行くとしよう」
互いの服装の乱れが無いかをチェックしてから通路に出た。
通路の突き当たりを左に折れると突き当たり、兵士によって重厚な大扉が音を立てて開かれた。扉の両サイドには兵士が立っていて敬礼をしていて、謁見の間の入り口で一旦止まると謁見の間を見渡す。
『ここが謁見の間か?いや玉座があるから玉座の間じゃないのか?オレの認識が少し違うのか?』
謁見の間、それは国力を現す象徴のようなものだと本で読んだ事がある。
白く大きな部屋の中央通路には、両脇に金の刺繍が施されているレッドカーペットが敷かれ、そのカーペットの行き着く先には、三段だけの低い階段があった。その中央には赤を基調としたクッション材で、金のフレームがあしらわれた玉座が一際存在感を放つ。
玉座の奥の上部の壁には、国章をモチーフとしたレリーフが彫られていて、正面の壁の両端には出入り口の扉がある。きっとそかこら王族がやってくるのだろう。
ちなみに、レディアス王国の国章(国旗)は、ドラゴンが中心に描かれていて右に剣、左に杖がクロスされた物だ。見慣れたとはいえ、最初見た時はファンタジーぽくてニヤニヤした記憶がある。
天井には4つの大きく燦然と輝く金色のシャンデリア、横を見てみると窓枠にも金枠が嫌味なく使われていた。とにかくまあこの上なく豪華だ。
異世界系アニメを見てきた俺からしてみればまさにテンプレ。ただ、実際に質感を伴ってそこにあるとアニメとは違って圧倒される。リアルで感動して声も出ない。
「どうぞ、前へお進みください」
声がかかると「はっ」と我に返り、一礼をしてからシミ一つ無いレッドカーペットを歩いて行く。左サイドに貴族、右サイドには騎士と思われる人物達が、誰一人として姿勢を崩す事無く無言で立ち並んでいるのが目に入る。
今日の儀式の為か、貴族達は伯爵と同じような上質な生地を使った服を着ていて、帯剣している剣の鞘には宝石が散りばめられていた。武器と言うよりも芸術品、あるいは美術品の様だ。
右サイドにずらりと並ぶ騎士は、自分が目指す王宮騎士か?銀色の煌びやかな鎧を装い、純白の羽織るマントも上質な生地に金糸をあしらったものだ。鍛え抜かれた男性陣の中には女性も数名いる事に驚いた。
各所に装飾を凝らした豪華絢爛な白い空間に、ピンと張り詰めた空気に圧倒されて途中で足が竦みそうになったが、なんとか練習どおりに整列をする。
陛下に会うだけでもいっぱいいっぱいなのに威圧するのはやめてほしい。
「それでは謁見の儀を始める。陛下や王族の方がお成りになる。伏礼」
そう声がかかると、ザッという音と共に一斉に跪いて頭を伏せる。練習どおり、タイミングもばっちりだ。
扉が開く音がすると足音と共に王族の入場だ。足音が止まり一呼吸置いて「皆のもの面を上げよ」とバリトンボイスが謁見室全体に響き渡る。
3秒を意識して頭をあげると、陛下が中央の玉座に座り、王族が両サイドに立ち並んでいた。
陛下は真紅のマントを羽織り、その頭上に金色に輝く王冠には大きなダイヤモンドの宝石があしらわれ、ひと目で国王だと分かった。玉座に腰掛ける時点で分かるがね。
そして、横には金銀糸が施された上質な服を身に纏った王族が並ぶ。派手な服が下品と感じないのは立ち振る舞いによるものか。そんなオーラが出ているのか。存在感が明らかに自分達と違うと感じる。
「そなたがヴェルグラッドか。直答を許す。こちらへ寄るがよい」
「はっ!」
短く返事をすると練習どおり、3歩前に出た。緊張し過ぎて心拍数がさらに上がったような気がする。
「この度は大義であった。そなたが考案したコレラ対策や予防でどれだけの大勢の民が救われたか。そう思うと感謝してもしきれぬ」
「陛下のお言葉、恐悦の極みに存じます」
「うむ。余の娘のマイアも、そなたの考案したとされる点滴で救われたその一人だ。マイア、自ら礼を」
輝く白金の髪が美しいお姫様は、一歩前へ出て純白の羽衣のようなドレスの端を摘み一礼をしてから、にっこりと笑う天使のようなその姿に思わず見惚れてしまった。本日二度目の眼福だ。
「あなたが私の命を救ってくれた英雄さんね。こうして今立っていられるのも、あなた様のお陰だと思うと、言葉では言い表わせません。それでも言わせていただきます。命を救っていただき感謝を」
「姫殿下の勿体無きお言葉を頂戴し、有難き幸せにございます」
同じ歳と聞かされていたが気品を感じる。陛下は笑みを浮かべながら姫殿下の方を見ると、姫殿下は意味ありげに微笑みながら頷いてから、元の位置へと戻った。
「それでは、そなたに何かそれなりの報奨を与えたいのだが、お主はまだマイアと同じ9歳と聞く。余も思うことはあるのだが、この謁見の儀が済み次第、ここにいる者達でその事について協議をしたい。いかがであろう?」
「恐れながら私は年端もいかぬ若輩者。判断がつきませぬ故、是非とも伯爵閣下に判断を仰ぎたく存じます。宜しいでしょうか」
「許す。ではウォーレスよ、卿に問おう」
伯爵閣下は立ち上がり「はっ。その話し謹んでお受けします」と言うと手を胸に当てて一礼をした。
「宜しい。本来なら、この次に専属騎士の儀の予定だったが、協議の後に持ち越すとする。よいな」
「畏まりました」
『へ?そうなの?話違わない?』
「それではマーレ。皆を連れて会議室に向え」
「仰せのままに」
陛下はそう言うと、王族を引き連れて踵を返し通路に消えていった。
それを宰相が確認すると「それでは、皆様には、今から会議室に移っていただきます。私に付いてきて下さい」と、こちらを向いて一瞥するとスタスタと歩き出した。
噛まずに粗相無く謁見をこなしてほっとしたところにまさかの展開。俺と同じようにジュリエッタも意気消沈していた。
誰も聞いて無いのだろう。何か面倒事に巻き込まれないといいなと思いながら会議室へと移動した。
「このソファーでいいか。とりあえず座ろう」
父が指を差す出入り口に一番近いソファーに腰掛けると、緊張をしているのか?父もジュリエッタも無言だ。息が詰まりそうだな。ジュリエッタも顔が強張っていたので、父の前だがそっとジュリエッタの手を握る。
「ありがとう。少し落ち着く」
「ヴェル。やるな。いつの間にか成長した息子を見ると、父さん嬉しいよ」
「大袈裟ですよ」
二人の表情も和らぎ、いくらかは気が楽になった。
「それにしても、何でお父様まで緊張を?何度も陛下に会ってるのでしょ?」
「緊張なんかしてないよ。自分の息子が何を言われるのか気になってるだけだ」
「そんな突拍子も無い事を言われるのでしょうか?」
「王城内ではヴェルは王女を救った英雄ってことで、自分が考えている以上に時の人なんだよ。コレラが収束して間もないのに呼び出しが早すぎるのもあってな。まあ異例なわけだ」
父は苦い顔をしてそう言った。
「そもその英雄って誰が言い出したのか分からないけど迷惑な話です。戦で武功を上げたわけでもないし」
「それを言い出したのが他ならぬ姫殿下なんだよ。だから心配なんだ。それに爺さんに聞いただろう?今回の謁見を強く望んだのは陛下なんだ。何を企んでいるのやら」
まあ9歳の子供に無茶を言うことはないだろう。それにしても早く無事に終わって欲しい。
それから伯爵閣下が着替えをして戻ってきた。上質で金銀糸が施されたいかにも、と言った格好をしている。謁見ひとつで、ここまでしないといけないのかと緊張感が増す。
「待たせたな。謁見の準備が整った。行くとしよう」
互いの服装の乱れが無いかをチェックしてから通路に出た。
通路の突き当たりを左に折れると突き当たり、兵士によって重厚な大扉が音を立てて開かれた。扉の両サイドには兵士が立っていて敬礼をしていて、謁見の間の入り口で一旦止まると謁見の間を見渡す。
『ここが謁見の間か?いや玉座があるから玉座の間じゃないのか?オレの認識が少し違うのか?』
謁見の間、それは国力を現す象徴のようなものだと本で読んだ事がある。
白く大きな部屋の中央通路には、両脇に金の刺繍が施されているレッドカーペットが敷かれ、そのカーペットの行き着く先には、三段だけの低い階段があった。その中央には赤を基調としたクッション材で、金のフレームがあしらわれた玉座が一際存在感を放つ。
玉座の奥の上部の壁には、国章をモチーフとしたレリーフが彫られていて、正面の壁の両端には出入り口の扉がある。きっとそかこら王族がやってくるのだろう。
ちなみに、レディアス王国の国章(国旗)は、ドラゴンが中心に描かれていて右に剣、左に杖がクロスされた物だ。見慣れたとはいえ、最初見た時はファンタジーぽくてニヤニヤした記憶がある。
天井には4つの大きく燦然と輝く金色のシャンデリア、横を見てみると窓枠にも金枠が嫌味なく使われていた。とにかくまあこの上なく豪華だ。
異世界系アニメを見てきた俺からしてみればまさにテンプレ。ただ、実際に質感を伴ってそこにあるとアニメとは違って圧倒される。リアルで感動して声も出ない。
「どうぞ、前へお進みください」
声がかかると「はっ」と我に返り、一礼をしてからシミ一つ無いレッドカーペットを歩いて行く。左サイドに貴族、右サイドには騎士と思われる人物達が、誰一人として姿勢を崩す事無く無言で立ち並んでいるのが目に入る。
今日の儀式の為か、貴族達は伯爵と同じような上質な生地を使った服を着ていて、帯剣している剣の鞘には宝石が散りばめられていた。武器と言うよりも芸術品、あるいは美術品の様だ。
右サイドにずらりと並ぶ騎士は、自分が目指す王宮騎士か?銀色の煌びやかな鎧を装い、純白の羽織るマントも上質な生地に金糸をあしらったものだ。鍛え抜かれた男性陣の中には女性も数名いる事に驚いた。
各所に装飾を凝らした豪華絢爛な白い空間に、ピンと張り詰めた空気に圧倒されて途中で足が竦みそうになったが、なんとか練習どおりに整列をする。
陛下に会うだけでもいっぱいいっぱいなのに威圧するのはやめてほしい。
「それでは謁見の儀を始める。陛下や王族の方がお成りになる。伏礼」
そう声がかかると、ザッという音と共に一斉に跪いて頭を伏せる。練習どおり、タイミングもばっちりだ。
扉が開く音がすると足音と共に王族の入場だ。足音が止まり一呼吸置いて「皆のもの面を上げよ」とバリトンボイスが謁見室全体に響き渡る。
3秒を意識して頭をあげると、陛下が中央の玉座に座り、王族が両サイドに立ち並んでいた。
陛下は真紅のマントを羽織り、その頭上に金色に輝く王冠には大きなダイヤモンドの宝石があしらわれ、ひと目で国王だと分かった。玉座に腰掛ける時点で分かるがね。
そして、横には金銀糸が施された上質な服を身に纏った王族が並ぶ。派手な服が下品と感じないのは立ち振る舞いによるものか。そんなオーラが出ているのか。存在感が明らかに自分達と違うと感じる。
「そなたがヴェルグラッドか。直答を許す。こちらへ寄るがよい」
「はっ!」
短く返事をすると練習どおり、3歩前に出た。緊張し過ぎて心拍数がさらに上がったような気がする。
「この度は大義であった。そなたが考案したコレラ対策や予防でどれだけの大勢の民が救われたか。そう思うと感謝してもしきれぬ」
「陛下のお言葉、恐悦の極みに存じます」
「うむ。余の娘のマイアも、そなたの考案したとされる点滴で救われたその一人だ。マイア、自ら礼を」
輝く白金の髪が美しいお姫様は、一歩前へ出て純白の羽衣のようなドレスの端を摘み一礼をしてから、にっこりと笑う天使のようなその姿に思わず見惚れてしまった。本日二度目の眼福だ。
「あなたが私の命を救ってくれた英雄さんね。こうして今立っていられるのも、あなた様のお陰だと思うと、言葉では言い表わせません。それでも言わせていただきます。命を救っていただき感謝を」
「姫殿下の勿体無きお言葉を頂戴し、有難き幸せにございます」
同じ歳と聞かされていたが気品を感じる。陛下は笑みを浮かべながら姫殿下の方を見ると、姫殿下は意味ありげに微笑みながら頷いてから、元の位置へと戻った。
「それでは、そなたに何かそれなりの報奨を与えたいのだが、お主はまだマイアと同じ9歳と聞く。余も思うことはあるのだが、この謁見の儀が済み次第、ここにいる者達でその事について協議をしたい。いかがであろう?」
「恐れながら私は年端もいかぬ若輩者。判断がつきませぬ故、是非とも伯爵閣下に判断を仰ぎたく存じます。宜しいでしょうか」
「許す。ではウォーレスよ、卿に問おう」
伯爵閣下は立ち上がり「はっ。その話し謹んでお受けします」と言うと手を胸に当てて一礼をした。
「宜しい。本来なら、この次に専属騎士の儀の予定だったが、協議の後に持ち越すとする。よいな」
「畏まりました」
『へ?そうなの?話違わない?』
「それではマーレ。皆を連れて会議室に向え」
「仰せのままに」
陛下はそう言うと、王族を引き連れて踵を返し通路に消えていった。
それを宰相が確認すると「それでは、皆様には、今から会議室に移っていただきます。私に付いてきて下さい」と、こちらを向いて一瞥するとスタスタと歩き出した。
噛まずに粗相無く謁見をこなしてほっとしたところにまさかの展開。俺と同じようにジュリエッタも意気消沈していた。
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