27 / 67
第1章 異世界転生
第27話
しおりを挟む
正面の森から野盗が現れると、あっと言う間に馬車の周りを囲まれた。
俺は短剣を構えながら「大声で名前を呼んだら目を塞ぐ準備を」と、ジュリエッタに小声で指示を出してから馬車に押し込んだ。
「小僧、騎士気取りか?!小娘を逃がしたつもりかも知れないが無意味だ。見ろよ!御者もあのとおりだ」
リーダー格と思われる野盗が指を差す方向を見ると、伯爵が乗った馬車の御者をしていてくれた護衛達の一人が喉に剣を突きつけられていて、抵抗をしたのだろう、右腕を傷つけられ、血が地面に点々と付いている。
「ちっ!」と、思わず舌打ちしてしまう。
「武器を捨てて馬車から出て来い!変な真似をすれば、御者の命は無いと思え!」
前方の馬車に乗っていた伯爵達は手を上げて、護衛の兵士と一緒に馬車から降りて来た。野盗の情報が掲示板の情報通りなら、金さえ渡せば命までは取らないと書いてあったし、20人と数が多いので指示に従ったのだろう。
ジュリエッタも、もちろんその情報を知っているので、抵抗せずに短剣を握りながら馬車から降りて来た。
ジュリエッタは短剣を足元に置くと、俺も同じように地面に置く。俺一人なら何とでもなるだろうが、人質がいるので手出しは出来ない。
「手を頭の後ろに置いて、大人達はこっちにこい!」
伯爵閣下とレリクさんを含めた護衛の兵士は、野盗達の指示に従い、次は手を後ろに回すように指示をされると、目隠しをされてから。ロープで手足と口を縛られた。
その光景を目の当たりして、オレは思わず笑みがこぼれそうになる。なんたる幸運。伯爵達は目隠しをされていた。
閃光を唱えるチャンスはここしか無いと思ったのだが、金さえ渡せば命までは取らないと掲示板に書いてあったので、わざわざリスクを犯してまで動くかどうか迷った。
「よし、良く聞け。このガキ達は人質の為に馬車ごと連れて行く」
「俺達をどうするつもりだ!!」
俺は大きな声でリーダー格の男に問うと「おまえたちガキ二人は人質に使うとするよ。お貴族様のガキとなりゃー、身代金もたっぷりと要求出来そうだからな!」と、お頭はあくどい顔をしながらニヤリと笑う。
『くっそ!確かに命は助かるかもしれないが、身代金目的の誘拐の餌になるぐらいなら…自分でなんとかするしかないか』
そう覚悟を決めると、お頭は剣の刃をパシパシ叩きながら、こちらに向って歩いてくる。
「ジュリエッタ!!」
そう大声で叫ぶと、野盗達全員がオレに注目する。それを見計らい「閃光!!!」っと光魔法を放つと俺の全身が眩しく光る。
「「「めっ、目が~」」」と、あちらこちらから悲鳴が上がる。
両手から閃光を放ち光が収まると、野盗達は目を押さえながら悶えている。俺とジュリエッタは、地面に置いた短剣を拾い上げた。
「ヴェル、私にパワーライズを」と小声で言うので直ぐにジュリエッタの手を握り「パワーライズ」と小声で詠唱する。
それから、俺とジュリエッタで野盗の首筋を狙い意識を刈り取っていくと瞬く間に勝負は決着した。それにしても、初めて実戦でバフを使ったが、素早く動ける上に剣も軽くなった。パワーライズの凄さを実感した、
ジュリエッタと一緒に伯爵たちの縄を解き、ジュリエッタは怪我をしていた護衛にヒールを掛けると、伯爵や護衛達は驚愕の表情をしたまま固まっている。
あ~あ、これで完全にバレちゃったよ。
俺は野盗の馬車に積んであったロープで気絶している野盗達に、伯爵達がやられた事と同じ様に、口や手足を縄で縛り、護衛の兵士が木に縛りつけ始めると、伯爵閣下が肩をポンポンと叩く。
「二人とも、詳しい話を聞かせて貰おうかな」
伯爵は口調は優しかったが顔が引き攣っている。これは、言い逃れが出来る状況ではない。
「分かりましたが、ここではちょっと…」
「そうだな、それでは、レリク!野党どもを乗せる馬車の手配をしにサンジュ村に行って来てくれ。それと事情を説明して兵士も連れてくるのだ」
「はっ!!」
そう言うとレリクさんは、もの凄い勢いで馬を走らせて行った。
「それとエルド、馬車の往来が一切無いので恐らくは通行止めになっている筈だ。野盗を討伐したので通行止めを解除するように連絡して参れ」
「はっ!」
護衛の一人であるエルドさんも、馬に跨り来た道を戻って行く。
「さてと、ここからサンジュ村までは馬で飛ばせば片道30分だ。1時間以上時間があるから馬車の中に入って何をしたのか聞かせて貰おうか」
いい訳を考えながら、馬車の中に入ると伯爵は正面に腰掛けると怪訝そうな表情をしながら口を開く。
「さてと…まず助かったのは事実だ。お礼を言うよ、ありがとう。それで君達二人はなぜ12歳に至ってないのに魔法が使えるのかな?それに目隠しをしていたが、はっきりと強い光を感じた。いったいヴェル君は何をしたんだ?」
それから、3歳の頃、本を読んで試しに使ってみたら魔法が使えた事と、魔力操作の練習をしていたら光が強くなり、いつのまにやら閃光を覚えたと説明。ジュリエッタにも、勉強を教えた時に魔力操作の仕方から教えたと説明する。
重力魔法については伏せておいた。
「なるほどって、ありえないだろ。ジュリエッタまで治癒魔法がもう使えるなんて、君達はこの世界の常識を覆したんだ。それについて君の考えを聞かせてくれ」
「僕達は正しい知識を本から得て魔法を習得しました。誰でもと言う訳ではないかもしれません。魔力操作から習得しないと幼い体では魔法が暴走するか、体が耐え切れなくなり最悪死に至る可能性もあると思っています」
「私もその説は正しいと思うよ。神託の儀で与えられる基礎魔法も間違った使い方や暴走すれば大惨事にもなりかねん。まだ9歳のヴェル君が出した結論だとは私としても未だ信じられない気持ちだよ。それにしても君は一体何を目指す?魔法に関してもそうだが、既に常識外れと言っていい」
そう聞かれても回答に困る。自分の中でジュリエッタが最優先。それはもう既定路線であって譲れない。
「僕はあくまでもジュリエッタの専属騎士です。僕のこの知識に教養、魔法に至るまでジュリエッタを守る為に使います。それ以上のことは何も考えていません」
「馬鹿を言うな。これだけの知識と魔法能力があるなら、一個人の為に使うなど馬鹿げている。勇者は神託で得られるものだから資質の問題だが、英雄を目指すくらいは良いと思うが」
「僕はジュリエッタに全てを捧げるつもりです。ジュリエッタを守るために必要であれば何かを目指すこともあるかも知れません。でも先程も申し上げたとおり、今はジュリエッタを守ること以上のことは考えていません」
「ヴェル…」
ジュリエッタは笑顔で涙を流している。
「自分の娘の事だから素直に嬉しいと言っておこう。だが約束をしてくれ。魔法を使える事は私達だけの秘密だ。これは仮の話ではあるが、もし魔王が復活して、勇者がもしこの現代に現れるのなら専属騎士のままでもいい。勇者に協力をして世界を救えるような人物になってくれ」
「はい。専属騎士のままで良いのなら」
そう答えると、二人はほっとした表情を浮かべる。伯爵は、なぜ俺がジュリエッタの専属騎士に固執するのか分からないのだろう。
夢のとおりであるならば、彼女は聖女になる運命を背負っている。世界を守れと言うなら、専属騎士のままでいれば同じ事だ。夢で見たのが影響しているとは思わないが、そう思う事しか出来ない自分がいた。
それから、伯爵の野盗への尋問を横目にレリクさんの帰りを待つが、いつもと違う伯爵の口調に驚いた。
「おい貴様!伯爵家の馬車と知りこの馬車を襲った罪は死を持って償って貰う。アジトがどこにあるのか吐け!吐けば、情状酌量の余地もあろう」
こんな具合だ。
伯爵の尋問を聞きながら、約40分の間待っていると、レリクさんが兵士15名と幌無しの馬車5台を引き連れて戻って来た。
「閣下、遅くなりました。こちらが、次の宿場村のサンジュ村の兵士長です」
「伯爵閣下。この度は野盗の排除をしていただき、まことにありがとうございました。つきましては、王都から兵士が派兵をされる事が決まっていましたので、王都の冒険者ギルドに討伐完了との連絡をしておきました」
「うむ。ご苦労であった。尋問を進めた結果、アジトはあの山にあるようだ。アジトに仲間は残っていないそうだが、野盗の言う事だから信用は出来ん。兵士5人を選抜して野盗の一人を引き連れてアジトに案内をさせろ。身代金目的の人質がいるやも知れぬ。もし案内の野盗が不穏な動するようなら、処分して戻って参れ。その時は討伐隊を向わせる」
「御意!!」
伯爵は兵士長に指示を出すと、兵士達は野盗一人を連れてアジトに向かうべく山へと消えて行く。
「それでは、馬車を1台と兵士を2名残して、私達はサンジュ村に野盗を連れて向うとしよう。兵士長。日が落ち始めて、今行った兵士達が戻ってこなかったら、連絡係の兵士を一人残して、取り敢えず村へと戻ってくるがよい。先ほども言ったと思うが、討伐隊を向わせる必要があるだろうからな」
「はっ!!」
「それでは、私達はサンジュ村へと急ごう。今回の泊まる宿はきっと驚くぞ」
「そうなんですか?楽しみです」
伯爵はニヤリと笑うと馬車に向かって歩いて行った。何があるんだろう?と思いつつ、ジュリエッタと二人で馬車に乗ると、馬車は宿場町に向って走り出した。
すると、ジュリエッタは俺を手を握り、俺の目を真剣に見た。
「ねぇ、ヴェル。さっきはありがとう。さっきの言葉…凄く嬉しかった。大好きよ」
「お礼を言われることじゃないよ。あの時にもう決めたんから」
少し頬を染めながら、笑顔で面と向ってそんな事を言われると少し照れる。
ジュリエッタは俺の手を握りながら頭を肩に寄せる。最近は、ジュリエッタの事が好きだと自覚をし始めているので役得でしかない。
もう少し二人が大人だったら、唇にキスくらいはしていたかもしれないな…
馬車に揺られながら、あれこれ妄想していると、湯煙の上がるサンジュ村へと到着した。
俺は短剣を構えながら「大声で名前を呼んだら目を塞ぐ準備を」と、ジュリエッタに小声で指示を出してから馬車に押し込んだ。
「小僧、騎士気取りか?!小娘を逃がしたつもりかも知れないが無意味だ。見ろよ!御者もあのとおりだ」
リーダー格と思われる野盗が指を差す方向を見ると、伯爵が乗った馬車の御者をしていてくれた護衛達の一人が喉に剣を突きつけられていて、抵抗をしたのだろう、右腕を傷つけられ、血が地面に点々と付いている。
「ちっ!」と、思わず舌打ちしてしまう。
「武器を捨てて馬車から出て来い!変な真似をすれば、御者の命は無いと思え!」
前方の馬車に乗っていた伯爵達は手を上げて、護衛の兵士と一緒に馬車から降りて来た。野盗の情報が掲示板の情報通りなら、金さえ渡せば命までは取らないと書いてあったし、20人と数が多いので指示に従ったのだろう。
ジュリエッタも、もちろんその情報を知っているので、抵抗せずに短剣を握りながら馬車から降りて来た。
ジュリエッタは短剣を足元に置くと、俺も同じように地面に置く。俺一人なら何とでもなるだろうが、人質がいるので手出しは出来ない。
「手を頭の後ろに置いて、大人達はこっちにこい!」
伯爵閣下とレリクさんを含めた護衛の兵士は、野盗達の指示に従い、次は手を後ろに回すように指示をされると、目隠しをされてから。ロープで手足と口を縛られた。
その光景を目の当たりして、オレは思わず笑みがこぼれそうになる。なんたる幸運。伯爵達は目隠しをされていた。
閃光を唱えるチャンスはここしか無いと思ったのだが、金さえ渡せば命までは取らないと掲示板に書いてあったので、わざわざリスクを犯してまで動くかどうか迷った。
「よし、良く聞け。このガキ達は人質の為に馬車ごと連れて行く」
「俺達をどうするつもりだ!!」
俺は大きな声でリーダー格の男に問うと「おまえたちガキ二人は人質に使うとするよ。お貴族様のガキとなりゃー、身代金もたっぷりと要求出来そうだからな!」と、お頭はあくどい顔をしながらニヤリと笑う。
『くっそ!確かに命は助かるかもしれないが、身代金目的の誘拐の餌になるぐらいなら…自分でなんとかするしかないか』
そう覚悟を決めると、お頭は剣の刃をパシパシ叩きながら、こちらに向って歩いてくる。
「ジュリエッタ!!」
そう大声で叫ぶと、野盗達全員がオレに注目する。それを見計らい「閃光!!!」っと光魔法を放つと俺の全身が眩しく光る。
「「「めっ、目が~」」」と、あちらこちらから悲鳴が上がる。
両手から閃光を放ち光が収まると、野盗達は目を押さえながら悶えている。俺とジュリエッタは、地面に置いた短剣を拾い上げた。
「ヴェル、私にパワーライズを」と小声で言うので直ぐにジュリエッタの手を握り「パワーライズ」と小声で詠唱する。
それから、俺とジュリエッタで野盗の首筋を狙い意識を刈り取っていくと瞬く間に勝負は決着した。それにしても、初めて実戦でバフを使ったが、素早く動ける上に剣も軽くなった。パワーライズの凄さを実感した、
ジュリエッタと一緒に伯爵たちの縄を解き、ジュリエッタは怪我をしていた護衛にヒールを掛けると、伯爵や護衛達は驚愕の表情をしたまま固まっている。
あ~あ、これで完全にバレちゃったよ。
俺は野盗の馬車に積んであったロープで気絶している野盗達に、伯爵達がやられた事と同じ様に、口や手足を縄で縛り、護衛の兵士が木に縛りつけ始めると、伯爵閣下が肩をポンポンと叩く。
「二人とも、詳しい話を聞かせて貰おうかな」
伯爵は口調は優しかったが顔が引き攣っている。これは、言い逃れが出来る状況ではない。
「分かりましたが、ここではちょっと…」
「そうだな、それでは、レリク!野党どもを乗せる馬車の手配をしにサンジュ村に行って来てくれ。それと事情を説明して兵士も連れてくるのだ」
「はっ!!」
そう言うとレリクさんは、もの凄い勢いで馬を走らせて行った。
「それとエルド、馬車の往来が一切無いので恐らくは通行止めになっている筈だ。野盗を討伐したので通行止めを解除するように連絡して参れ」
「はっ!」
護衛の一人であるエルドさんも、馬に跨り来た道を戻って行く。
「さてと、ここからサンジュ村までは馬で飛ばせば片道30分だ。1時間以上時間があるから馬車の中に入って何をしたのか聞かせて貰おうか」
いい訳を考えながら、馬車の中に入ると伯爵は正面に腰掛けると怪訝そうな表情をしながら口を開く。
「さてと…まず助かったのは事実だ。お礼を言うよ、ありがとう。それで君達二人はなぜ12歳に至ってないのに魔法が使えるのかな?それに目隠しをしていたが、はっきりと強い光を感じた。いったいヴェル君は何をしたんだ?」
それから、3歳の頃、本を読んで試しに使ってみたら魔法が使えた事と、魔力操作の練習をしていたら光が強くなり、いつのまにやら閃光を覚えたと説明。ジュリエッタにも、勉強を教えた時に魔力操作の仕方から教えたと説明する。
重力魔法については伏せておいた。
「なるほどって、ありえないだろ。ジュリエッタまで治癒魔法がもう使えるなんて、君達はこの世界の常識を覆したんだ。それについて君の考えを聞かせてくれ」
「僕達は正しい知識を本から得て魔法を習得しました。誰でもと言う訳ではないかもしれません。魔力操作から習得しないと幼い体では魔法が暴走するか、体が耐え切れなくなり最悪死に至る可能性もあると思っています」
「私もその説は正しいと思うよ。神託の儀で与えられる基礎魔法も間違った使い方や暴走すれば大惨事にもなりかねん。まだ9歳のヴェル君が出した結論だとは私としても未だ信じられない気持ちだよ。それにしても君は一体何を目指す?魔法に関してもそうだが、既に常識外れと言っていい」
そう聞かれても回答に困る。自分の中でジュリエッタが最優先。それはもう既定路線であって譲れない。
「僕はあくまでもジュリエッタの専属騎士です。僕のこの知識に教養、魔法に至るまでジュリエッタを守る為に使います。それ以上のことは何も考えていません」
「馬鹿を言うな。これだけの知識と魔法能力があるなら、一個人の為に使うなど馬鹿げている。勇者は神託で得られるものだから資質の問題だが、英雄を目指すくらいは良いと思うが」
「僕はジュリエッタに全てを捧げるつもりです。ジュリエッタを守るために必要であれば何かを目指すこともあるかも知れません。でも先程も申し上げたとおり、今はジュリエッタを守ること以上のことは考えていません」
「ヴェル…」
ジュリエッタは笑顔で涙を流している。
「自分の娘の事だから素直に嬉しいと言っておこう。だが約束をしてくれ。魔法を使える事は私達だけの秘密だ。これは仮の話ではあるが、もし魔王が復活して、勇者がもしこの現代に現れるのなら専属騎士のままでもいい。勇者に協力をして世界を救えるような人物になってくれ」
「はい。専属騎士のままで良いのなら」
そう答えると、二人はほっとした表情を浮かべる。伯爵は、なぜ俺がジュリエッタの専属騎士に固執するのか分からないのだろう。
夢のとおりであるならば、彼女は聖女になる運命を背負っている。世界を守れと言うなら、専属騎士のままでいれば同じ事だ。夢で見たのが影響しているとは思わないが、そう思う事しか出来ない自分がいた。
それから、伯爵の野盗への尋問を横目にレリクさんの帰りを待つが、いつもと違う伯爵の口調に驚いた。
「おい貴様!伯爵家の馬車と知りこの馬車を襲った罪は死を持って償って貰う。アジトがどこにあるのか吐け!吐けば、情状酌量の余地もあろう」
こんな具合だ。
伯爵の尋問を聞きながら、約40分の間待っていると、レリクさんが兵士15名と幌無しの馬車5台を引き連れて戻って来た。
「閣下、遅くなりました。こちらが、次の宿場村のサンジュ村の兵士長です」
「伯爵閣下。この度は野盗の排除をしていただき、まことにありがとうございました。つきましては、王都から兵士が派兵をされる事が決まっていましたので、王都の冒険者ギルドに討伐完了との連絡をしておきました」
「うむ。ご苦労であった。尋問を進めた結果、アジトはあの山にあるようだ。アジトに仲間は残っていないそうだが、野盗の言う事だから信用は出来ん。兵士5人を選抜して野盗の一人を引き連れてアジトに案内をさせろ。身代金目的の人質がいるやも知れぬ。もし案内の野盗が不穏な動するようなら、処分して戻って参れ。その時は討伐隊を向わせる」
「御意!!」
伯爵は兵士長に指示を出すと、兵士達は野盗一人を連れてアジトに向かうべく山へと消えて行く。
「それでは、馬車を1台と兵士を2名残して、私達はサンジュ村に野盗を連れて向うとしよう。兵士長。日が落ち始めて、今行った兵士達が戻ってこなかったら、連絡係の兵士を一人残して、取り敢えず村へと戻ってくるがよい。先ほども言ったと思うが、討伐隊を向わせる必要があるだろうからな」
「はっ!!」
「それでは、私達はサンジュ村へと急ごう。今回の泊まる宿はきっと驚くぞ」
「そうなんですか?楽しみです」
伯爵はニヤリと笑うと馬車に向かって歩いて行った。何があるんだろう?と思いつつ、ジュリエッタと二人で馬車に乗ると、馬車は宿場町に向って走り出した。
すると、ジュリエッタは俺を手を握り、俺の目を真剣に見た。
「ねぇ、ヴェル。さっきはありがとう。さっきの言葉…凄く嬉しかった。大好きよ」
「お礼を言われることじゃないよ。あの時にもう決めたんから」
少し頬を染めながら、笑顔で面と向ってそんな事を言われると少し照れる。
ジュリエッタは俺の手を握りながら頭を肩に寄せる。最近は、ジュリエッタの事が好きだと自覚をし始めているので役得でしかない。
もう少し二人が大人だったら、唇にキスくらいはしていたかもしれないな…
馬車に揺られながら、あれこれ妄想していると、湯煙の上がるサンジュ村へと到着した。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる