『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢

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第1章 異世界転生

第7話

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買い物をしてから一週間経った。

今日は、親戚連中や父の同僚達が集まり誕生パーティーだ。屋敷の入り口で来客に挨拶をしていると父の両親がやって来た。

まず祖父のロゼル・フォレスタ子爵。この土地を治める領主だ。そして祖母のデール・フォレスタ。

「おっ、久しぶりだなヴェル。また一段と大きくなったな」

「ありがとうございます。こうして大きく成長出来たのも皆様のお陰です」

「流石は神童と呼ばれた子じゃな。7歳とは思えぬ口ぶりよ。そうじゃ、ジュリエッタ、前に出て挨拶しなさい」

後ろに声をかけると、おじい様とおばあ様の後ろに隠れるようにしていた赤髪の少女が前に出た。

夢で何度も見た顔のはずだがやはり初見だ。自分のようなおっさんが言うと犯罪なような気がするが、実物はとても美少女だ。いや可愛くもある。後に聖女と呼ばれるのに相応しいと感じた。

「私は、ジーナス伯爵家の長女ジュリエッタ・ジーナスと申します。以後宜しくね」

「こちらこそ。私はヴェルグラッド・フォレスタと申します。ヴェルとお呼び下さい」

赤髪の少女は、おばあ様の遠い親戚でひとつ年上のお姉さんだ。

今日はジュリエッタお嬢様の両親が急遽王都に呼ばれたので、近場の親戚のおじい様の家に預けられたと聞かされた。

「それでは、お前達は年も近いし、遠縁だが親戚同士だ。身分など気にせずに仲良くするんじゃぞ」

「はい。友達がいないので嬉しいです」

そう答えると、おじい様たちは怪訝な顔でこちらを見る。何か変なこと言ったか?やはり客観的にみても過保護過ぎるんじゃないのか。7歳って言ったら向こうでは小二だし。

「そうだヴェル、玄関前での挨拶はもういい。お嬢さんの相手をしてやってくれないか?見たところ年頃の子供もいないようだ」

「はい。お父様。それではジュリエッタお嬢様。参りましょうか?」

「はっはい」

父は気まずいのか、俺が余計な事を言わないように追い立てる。友達一人いない息子にしたのはあなた達ですよ。別に恨んでるわけじゃないけど。

でも、この話は父のせいばかりでは無い気がする。この辺のくだりをもっと詳しく書いておくべきだった。そうすれば、この屋敷の周辺の子供達と仲良く遊んでたのかも知れないな。

それから、オレはお嬢様の手を引いて会場に顔を出した。パーティー会場はまだ食事の用意が整っておらず、今日この日の為に雇われた料理人や従者達がテーゼの指示の元で慌ただしく行きかっていた。

そう言えばこの部分は書いた気がするな。

邪魔になるのではと両親に許可を貰って、いつもの書庫で準備が出来るのを待つことにした。

書庫に入り机から椅子を出し、お嬢様に「さぁ、こちらにお掛け下さい」と椅子に腰掛けるように促す。

お嬢様は、書庫を見渡しながらそっと椅子に腰掛けた。それを確認すると自分はベッドに対面になるように腰掛ける。

自分の書いた物語では、ジュリエッタお嬢様はこの出会いをきっかけに母の没後、義母の嫌がらせから俺を守る為、親戚中を奔走し守ってくれた最重要人物だった。

転生前の最後の夢で、好きだと告白をする聖女様その人であり、今後の自分の人生を左右する運命の人だ。

物語の内容が変化していたら、この先の展開がどうなるか分からないが、今の状況ではこの出会いを最も大切にする必要がある。

「緊張は解けましたか?」

そう切り出すと、お嬢様は微かに固まっていた表情が解れる。掴みはオッケーかな。

「ええ。この書庫に来て幾分は。それよりも、ヴェルさんは何で神童って呼ばれているのですか?」

「えーと。家の者が面白がって言ってるだけですよ。たまたま3歳の頃に読み書き出来たことくらい?だから人前で言われると心苦しいと言うか恥ずかしいと言うか…」

そう答えると、ジュリエッタお嬢様は溜息を吐き、少し呆れた顔で言う。

「3歳で読み書き出来るなんてあまりと言うかいませんよ。この国の識字率を考えると奇跡と言っても過言じゃありません」

「機会があったら喜んで、と言いたいですけど勉強を教えるのは大人の役目でしょうから僕には大役過ぎると思いますよ」

「そっかな~。私はそうは思わないです。同年代のお友達に教えて貰う方が、やらされてる感が無くていいと思います。そうは思わないですか?」

「なるほど。そうかもしれませんね」

と言うか、これも子供同士の会話とは思えない。自分も貴族の子供だから言葉の教育を受けているにしてもこれではまるでお見合いだ。なんというか、もう少し、こう…

「あ、話をしていてちょっと違和感があるので、これからはヴェルと呼び捨てで呼んでもらえませんか?出来ることなら敬語もやめて欲しいです」

「それでは。お嬢様と付けるのは止めて欲しいな。それと、自分だけ敬語を使われるのは嫌だから、ヴェルも敬語はやめてくれると嬉しい…」

「それでは、ジュリエッタさんと呼びますね」

「それでいいわよ」

一つ上のお姉さんがクスッと微笑むと、足すと55歳越えのオレが年甲斐も無くドキっとしてしまった。

念のために言うとオレに少女好きな性癖は無い。ただ自分でもわかるくらい何もかもがリセットされたかのように、うぶな気持ちになっている。まさに初心に立ち返ると言う言葉がピッタリだ。

それからは、普段は屋敷で何をしているのだとか、好きな食べ物の話をして子供らしい会話で盛り上がった。

日本では社交辞令程度しか女性と会話した事がなかったけど、こうして女性と会話するのは楽しい。

もちろん、ここでも家族や従者達とも会話はしていたが、親子や主従関係という事もあってこんな風には話せない。自分の書いた物語の一部に過ぎないが、これはグッジョブと言っていいだろう。
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