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第1章 異世界転生
第6話
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町に到着すると、検門の為に待たされる事になる。看板には【フォール】と書いてある。
乗合馬車を装っているのでそのまま並ぶ。ここまで来る道中で広い街道に出ると、道が舗装されたように綺麗になり、なぜかと思い道を見てみるともの凄く固く踏み固められているようだ。
雨が降っても、轍が出来てうらぶれた感じでもない所を見ると、何らかの魔法ならではの施工方法があるのではないかと、つい考えてしまう。
それから5分ほど経つと検兵がこちらにやって来た。
「お手数ですが、身分を証明出来る物をご提示下さい?」
母は「ご苦労様です」と言いながら、金色のステータスカードを見せた、予め準備をしていたようだ。
「これは失礼を致しました。お通り下さいませ」
検兵は、オレの顔を見るとすんなり道を空けた。母の話によれば、金色のステータスカードは下級貴族の証明書と言うことだった。子供連れの貴族はトラブルに巻き込まれない為に、身分を偽装する事が多いので検兵はオレの顔を見て察したらしい。
ちなみに、一般は銅色、上級貴族はプラチナ色であるようだ、もっとも貴族ならば、馬車に家紋がレリーフが施されていて、貴族門を通るらしいのだが、生憎と今日は乗り合い馬車を装っていたから並んだわけだ。
町に入ると、町は居住エリアと商業エリアははっきりと分けられていて、道は石畳が敷かれている。馬車の車輪が石畳の隙間に入る度に「コッ・コッ」とリズミカルになる音を聞いていると案外楽しい。
電車の【ガタン・ゴトン】と同じ感だな~と思うと、日本を思い出して懐かしむ。
町の道には一定間隔で街灯もあって風や雨に影響をうけない光る魔石で運用されていた。ちなみに魔石とは魔物を倒した時に手に入る報酬のような物だ。
この世界の魔石は消耗品扱いで、大きさで威力や寿命が決められている。使い過ぎると威力が弱くなって最後にはひびが入って割れてしまう。
形を整える装飾品に出来るし加工も出来る。装飾品専用の工房もあると小説に書いたし、そのことも本で確認した記憶がある。
小説などではお馴染みの魔道具に、使用用途に合わせて魔石を用意して使用するわけだな。機械の代わりに魔道具と言う感じだ。ガスの代わりが魔素となったと思えば分かりやすいか。
そうこうしていると大通りに出る。
この辺は物語に書いたのだが、行き交う人々の中に、少数だが初めて見る獣人やエルフに目を奪われた。屋敷で働いている従者達は全て人族ばかりなのでテンションが上がる。
エルフと獣人の特徴は、エルフは美形で少し耳が長く、獣人は猫耳や兎耳が目に入る。ファンタジー世界バンザイ!!と、絶叫しそうになったのは言うまでもない。
異世界といえば、髪の色がピンクや水色といったものもでてくるが、現実にはいないみたい。これにはちょっとがっかり。
町の中心部の商業区画に馬車が止まると、御者さんは馬屋に停車しに行ったので、母と侍女のテーゼと共に色々と買い物に出た。町中を初めて真剣に見るが人々の生活水準は中世よりは高い。
そんな中、母とテーゼはお気に入りの店があるようで「ヴェル悪いけど、ここで待ってて。どこにもいっちゃ駄目だからね。知らない人についていっても駄目よ」と、言い残して駆けて行った。
母は余所見などせず一直線にその店に入る。お気に入りの店だと思ったが、その店では服の処分セールをやっていて色々と物色している。
貴族なのにいいのか?家は実は貧乏貴族じゃないのか?どの世界でも女性の行動はそこまで変わらないようである。
二人が満足そうに店を出ると、昼時を知らせる鐘が鳴ったので、昼食はこの町の食事エリアで食べる事になった。
教会から鳴らされる鐘の音はかなり大きく、高い壁など遮るものがないので屋敷にも微かに鐘の音が聞こえる。雨の日は聞こえないがね。
食事エリアに入ると、どこもレストランは満席で、時間が勿体無いので町の広場にテーブルと椅子が置いてあるので席を取って昼食を食べる。
室外なので、獣の皮に蝋か油か判断がつかないが日よけのパラソルまである。見た目はビアガーデンみたいなものかな?酒が飲める歳になったら、是非ともビアガーデンを堪能したいものだ。
母から、お金を貰い露天を回っていると、ホットドックが売られていたので迷わず購入する。懐かしさのあまり即買いだ、
母達は、サンドイッチを購入したようで、テーゼからフルーツジュースを貰うと、椅子に腰掛けてかぶりつく。
「うっ美味い!!」
貴族の食事ばかりだったので、初めて食べるジャンクフードにテンションがおかしくなる。ソーセージなんて日本で食べるものよりおいしいんじゃないか?旨すぎて涙がでそうになる。出てないからご安心を。
もっとも屋敷の料理に不満があるわけではない。念のため。だが、できればこれからも、たまでもいいから町に来て食べられるといいな。雰囲気だけで美味しいような気がするし。
ご飯を食べると、父のプレゼントの素材集めの時間となる。母は先ほどセールをやっていた服を渡すそうで、誕生日なのになんだかな~。なんだか気の毒に思えてきた。
独り身だったのでプレゼントなんて、大人になってから貰った事ないから同情はしないけどね。
「それでヴェルはどんな店に行きたいの?」
どうやら、自分の番が回って来たようだ。
「出来れば、竹が売っているところに行きたいです」
そう答えると母はおかしな顔をした。まっ、竹を欲しがる子供など滅多にと言うかいないからだろう。あんたの息子は変わり者だよ、すいませんね~
「何で竹が欲しいのかは分からないけどまぁいいわ。それじゃ材木屋に行ってみましょうか?」
材木屋に行くと、建築素材が立ち並ぶ場所に目当ての竹が売っていた。その中から乾燥した竹を選んで店員さんに30cmほどにカットして貰う。
「ヴェル、本当にこれでいいの?」
「はい。これがどうしても欲しかったのです」
母は苦笑いをしていたが呆れないでくれ。これで簡単な浄水器を作ろうと思っているのだから。
なぜ浄水器を作るのかと言うと屋敷の井戸水はお世辞にも綺麗だとは言えないからだ。少し濁りがあるし、少し離れた井戸から汲み上げる飲み水は硬水なのか飲みにくい。
ならば日本で培った知識を活かして簡単な浄水器を作ろうと思っているんだ。本来なら、上下水道があればもっともいいのだが、それは流石に今の自分には無理がある。
材料を手に入れると、まず炭焼き小屋に寄ってもらって竹炭を作って貰う。
「ぼうず。竹なんか炭にしてどうするつもりだ?燃料に竹を使うなんて聞いたこと無いぞ」
炭焼き小屋の職人は首を捻る。俺も実際には竹炭を見た事もない。
「竹炭にはですね。水を綺麗にしたり、消臭する力があると異国の本に書いてあったんです」
「なるほどねぇ~。おじさんにはいまいちピンっとこないが作ってやるよ。また明日にでも取りに来な」
「お母様よろしいでしょうか?」
「しょうがないわね。テーゼ。明日誰かに寄ってもらえるように頼んでちょうだい」
「分かりました」
「宜しくお願いします。あと、出来るだけ高温で焼いてください」
帰りの馬車でいったい何を作るのか聞かれたが、そこは見てからのお楽しみと言う事にしておいた。実際成功するかどうか分からないからな。
次の日、テーゼから出来上がった竹炭を貰った。なかなかいい感じで焼きあがっていた。
材料が全て揃ったので、早速、底の抜けた花瓶と綿を貰って、花瓶の口に湿らせた綿を詰め込み綺麗なハンカチで蓋をした。
それから、良く洗った小粒の石、砕いた竹炭、綿、小石の順番で花瓶に投入して、最後にハンカチで固形物を排除出来る様にすると浄水器は完成した。
試しに、水に土を入れ泥水にして花瓶にいれると花瓶の入り口から綺麗な水が出てきた。
この方法は、震災当時ライフラインが止まった時のための番組を見て覚えた知識だ。まさか自分が使うとは思わなかったけどな。しかも異世界で。
買った竹炭は大量にあったので、トイレの蓋に加工した。
ちなみにこの世界のトイレはぼっとん便所だ。で、排泄物の処理はどうするのかというと、これは汲み取りではなく槽の中にスライムが待機していて排泄物を処理してくれているそうだ。
汲み取りと浄化槽のハイブリッドってとこかな。スライムとはいえ魔物と共存出来るなんて素晴らしいことだよね。
乗合馬車を装っているのでそのまま並ぶ。ここまで来る道中で広い街道に出ると、道が舗装されたように綺麗になり、なぜかと思い道を見てみるともの凄く固く踏み固められているようだ。
雨が降っても、轍が出来てうらぶれた感じでもない所を見ると、何らかの魔法ならではの施工方法があるのではないかと、つい考えてしまう。
それから5分ほど経つと検兵がこちらにやって来た。
「お手数ですが、身分を証明出来る物をご提示下さい?」
母は「ご苦労様です」と言いながら、金色のステータスカードを見せた、予め準備をしていたようだ。
「これは失礼を致しました。お通り下さいませ」
検兵は、オレの顔を見るとすんなり道を空けた。母の話によれば、金色のステータスカードは下級貴族の証明書と言うことだった。子供連れの貴族はトラブルに巻き込まれない為に、身分を偽装する事が多いので検兵はオレの顔を見て察したらしい。
ちなみに、一般は銅色、上級貴族はプラチナ色であるようだ、もっとも貴族ならば、馬車に家紋がレリーフが施されていて、貴族門を通るらしいのだが、生憎と今日は乗り合い馬車を装っていたから並んだわけだ。
町に入ると、町は居住エリアと商業エリアははっきりと分けられていて、道は石畳が敷かれている。馬車の車輪が石畳の隙間に入る度に「コッ・コッ」とリズミカルになる音を聞いていると案外楽しい。
電車の【ガタン・ゴトン】と同じ感だな~と思うと、日本を思い出して懐かしむ。
町の道には一定間隔で街灯もあって風や雨に影響をうけない光る魔石で運用されていた。ちなみに魔石とは魔物を倒した時に手に入る報酬のような物だ。
この世界の魔石は消耗品扱いで、大きさで威力や寿命が決められている。使い過ぎると威力が弱くなって最後にはひびが入って割れてしまう。
形を整える装飾品に出来るし加工も出来る。装飾品専用の工房もあると小説に書いたし、そのことも本で確認した記憶がある。
小説などではお馴染みの魔道具に、使用用途に合わせて魔石を用意して使用するわけだな。機械の代わりに魔道具と言う感じだ。ガスの代わりが魔素となったと思えば分かりやすいか。
そうこうしていると大通りに出る。
この辺は物語に書いたのだが、行き交う人々の中に、少数だが初めて見る獣人やエルフに目を奪われた。屋敷で働いている従者達は全て人族ばかりなのでテンションが上がる。
エルフと獣人の特徴は、エルフは美形で少し耳が長く、獣人は猫耳や兎耳が目に入る。ファンタジー世界バンザイ!!と、絶叫しそうになったのは言うまでもない。
異世界といえば、髪の色がピンクや水色といったものもでてくるが、現実にはいないみたい。これにはちょっとがっかり。
町の中心部の商業区画に馬車が止まると、御者さんは馬屋に停車しに行ったので、母と侍女のテーゼと共に色々と買い物に出た。町中を初めて真剣に見るが人々の生活水準は中世よりは高い。
そんな中、母とテーゼはお気に入りの店があるようで「ヴェル悪いけど、ここで待ってて。どこにもいっちゃ駄目だからね。知らない人についていっても駄目よ」と、言い残して駆けて行った。
母は余所見などせず一直線にその店に入る。お気に入りの店だと思ったが、その店では服の処分セールをやっていて色々と物色している。
貴族なのにいいのか?家は実は貧乏貴族じゃないのか?どの世界でも女性の行動はそこまで変わらないようである。
二人が満足そうに店を出ると、昼時を知らせる鐘が鳴ったので、昼食はこの町の食事エリアで食べる事になった。
教会から鳴らされる鐘の音はかなり大きく、高い壁など遮るものがないので屋敷にも微かに鐘の音が聞こえる。雨の日は聞こえないがね。
食事エリアに入ると、どこもレストランは満席で、時間が勿体無いので町の広場にテーブルと椅子が置いてあるので席を取って昼食を食べる。
室外なので、獣の皮に蝋か油か判断がつかないが日よけのパラソルまである。見た目はビアガーデンみたいなものかな?酒が飲める歳になったら、是非ともビアガーデンを堪能したいものだ。
母から、お金を貰い露天を回っていると、ホットドックが売られていたので迷わず購入する。懐かしさのあまり即買いだ、
母達は、サンドイッチを購入したようで、テーゼからフルーツジュースを貰うと、椅子に腰掛けてかぶりつく。
「うっ美味い!!」
貴族の食事ばかりだったので、初めて食べるジャンクフードにテンションがおかしくなる。ソーセージなんて日本で食べるものよりおいしいんじゃないか?旨すぎて涙がでそうになる。出てないからご安心を。
もっとも屋敷の料理に不満があるわけではない。念のため。だが、できればこれからも、たまでもいいから町に来て食べられるといいな。雰囲気だけで美味しいような気がするし。
ご飯を食べると、父のプレゼントの素材集めの時間となる。母は先ほどセールをやっていた服を渡すそうで、誕生日なのになんだかな~。なんだか気の毒に思えてきた。
独り身だったのでプレゼントなんて、大人になってから貰った事ないから同情はしないけどね。
「それでヴェルはどんな店に行きたいの?」
どうやら、自分の番が回って来たようだ。
「出来れば、竹が売っているところに行きたいです」
そう答えると母はおかしな顔をした。まっ、竹を欲しがる子供など滅多にと言うかいないからだろう。あんたの息子は変わり者だよ、すいませんね~
「何で竹が欲しいのかは分からないけどまぁいいわ。それじゃ材木屋に行ってみましょうか?」
材木屋に行くと、建築素材が立ち並ぶ場所に目当ての竹が売っていた。その中から乾燥した竹を選んで店員さんに30cmほどにカットして貰う。
「ヴェル、本当にこれでいいの?」
「はい。これがどうしても欲しかったのです」
母は苦笑いをしていたが呆れないでくれ。これで簡単な浄水器を作ろうと思っているのだから。
なぜ浄水器を作るのかと言うと屋敷の井戸水はお世辞にも綺麗だとは言えないからだ。少し濁りがあるし、少し離れた井戸から汲み上げる飲み水は硬水なのか飲みにくい。
ならば日本で培った知識を活かして簡単な浄水器を作ろうと思っているんだ。本来なら、上下水道があればもっともいいのだが、それは流石に今の自分には無理がある。
材料を手に入れると、まず炭焼き小屋に寄ってもらって竹炭を作って貰う。
「ぼうず。竹なんか炭にしてどうするつもりだ?燃料に竹を使うなんて聞いたこと無いぞ」
炭焼き小屋の職人は首を捻る。俺も実際には竹炭を見た事もない。
「竹炭にはですね。水を綺麗にしたり、消臭する力があると異国の本に書いてあったんです」
「なるほどねぇ~。おじさんにはいまいちピンっとこないが作ってやるよ。また明日にでも取りに来な」
「お母様よろしいでしょうか?」
「しょうがないわね。テーゼ。明日誰かに寄ってもらえるように頼んでちょうだい」
「分かりました」
「宜しくお願いします。あと、出来るだけ高温で焼いてください」
帰りの馬車でいったい何を作るのか聞かれたが、そこは見てからのお楽しみと言う事にしておいた。実際成功するかどうか分からないからな。
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材料が全て揃ったので、早速、底の抜けた花瓶と綿を貰って、花瓶の口に湿らせた綿を詰め込み綺麗なハンカチで蓋をした。
それから、良く洗った小粒の石、砕いた竹炭、綿、小石の順番で花瓶に投入して、最後にハンカチで固形物を排除出来る様にすると浄水器は完成した。
試しに、水に土を入れ泥水にして花瓶にいれると花瓶の入り口から綺麗な水が出てきた。
この方法は、震災当時ライフラインが止まった時のための番組を見て覚えた知識だ。まさか自分が使うとは思わなかったけどな。しかも異世界で。
買った竹炭は大量にあったので、トイレの蓋に加工した。
ちなみにこの世界のトイレはぼっとん便所だ。で、排泄物の処理はどうするのかというと、これは汲み取りではなく槽の中にスライムが待機していて排泄物を処理してくれているそうだ。
汲み取りと浄化槽のハイブリッドってとこかな。スライムとはいえ魔物と共存出来るなんて素晴らしいことだよね。
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