1 / 67
第1章 異世界転生
第1話
しおりを挟む
書き始めた異世界系小説の手を止めて風呂を掃除してから、風呂自動ボタンを押す。
【お湯はりします】
「さてと、風呂が出来るまでちょい休憩~」一人暮らしなので返事をする者はいない。ソファーに寝そべり目を閉じると意識を手放した。
【ザーーー】
『雨の音?ここはどこだ?』
「……ヴェル!死なないで!!」
フェードインするように徐々に声が大きくなる……と、ふっと目の前が明るくなって、目の前に赤い髪の女性と包帯が巻かれ傷ついて寝かされている男性が目に映った。ここは洞穴の中か?暗がりだが机にランプが置いてある。
見た目20歳ぐらいの赤い髪の女性は傷ついていた男性を泣きながら揺すり、横を見てみると仲間だと思われる女性2人もすすり泣いていた。
声を出そうとしても出せないし、触ろうとして机に触れてみたがすり抜けてしまう。それを、ただ呆然と横から見ている自分がいる。なんだろう、夢を見ているのか?
そう思っていると、狐耳の女性が涙を流しながら首を横に振り「ジュリエッタ様!この呪いにはスキルや魔法は効きません!諦めてヴェル君を楽にしてあげましょう」と言って、ジュリエッタと呼ばれる女性を抱き止める。
『エルフにケモ耳美女、ヴェルとジュリエッタって!』
この二人は今書いている主人公とヒロインだ。今までは少年少女の時の夢ばかりだったから気付けなかった。この夢を見るのは10年振りだ……小説を書き始めたのがきっかけになった夢だ……
「そんな事無い!諦めるもんですか!!ホーリーライト!!デスペル!!」
「ヴェル様が…とても辛く苦しそう…苦しむ姿に私は耐え切れそうもありません…ヴェル様を早く楽にしてあげてください…」
目を腫らしたエルフの女性も溢れる涙を拭いながらそう言ってジュリエッタを止めるが、彼女は首を横に何度も振りながら呪いを解く魔法を掛け続けている。
「ごめんねヴェル!私が油断したばかりにこんな事になって!!」
ヴェル手を握りながら、ジュリエッタが涙声で許しをこうとヴェルは薄っすらと瞼を開く。
「ジュリエッタ…許すも何も、これはオレの本望です。聖騎士として聖女様の盾になって死ねるのですから。あなたはこの世界の希望の光…無事で良かった。でも最後にひとつだけ言わせてください。今まで言えませんでしたが…ずっと好きでした」
ヴェルは、声を振り絞るようにそう言うと優しく微笑んだ。
「馬鹿!こんな時に何を言ってるのよ!元気な姿になって、正々堂々と言いなさいよ!」
「それは…ごめんなさい。叶えられそうもないです……気が…遠くなってきた。先にあの世にぃ……ってます」
ヴェルは力尽きて、ガクッと全身の力が抜け落ちた。
「――――!」
「――――!」
「…死んじゃゃいやっっ!!ヴェル~!!」
ジュリエッタが泣き叫ぶ。
「へっ?そんな馬鹿な!主人公のヴェルが死んだら物語の続きはどうするんだよ!」
そう夢の中で叫ぶと、突然目の前が暗転した。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「ハッ~ハ~ハ~ 10年振りにこの二人の夢を見た…今回の夢は持病の心臓に悪いや」
短い夢だったが汗でインナーシャツがベタベタだ。過呼吸のような息切れと喉の渇き。俺は机の上に置いてあった新品のミネラルウォーターの入ったペットボトルの水を半分ほど飲むと少し落ち着いた。
それにしても、俺は幼少の時からこの様な妙な夢を見る。断片的ではあるが、ヴェルと呼ばれる男の子とジュリエッタと言う女の子の話だ。
青年になった二人の夢は初めて見たような気がする。それに夢の中なのだが何も出来ない分だけ後味が悪い。今書いている小説の主人公であるヴェルが死んでしまった。こんな展開を想定していなかったので、これからの話の内容をどうしよう…
そんな事を思いながら、覚えているうちにメモに記録しておこうと、先ほどの夢を振り返るが、会話は思い出せるのに霧がかかったように風景や顔は思い出せない。今までも夢の中では顔が認識できるのだが同じように覚めると会話以外は思い出せない…それにしても今日のはやけにリアルだった。
【お風呂が沸きました。お風呂が沸きました】
周りが静かなだけに、突然のお風呂のアナウンスが流れてビクっとする。
「さてと~。汗も掻いた事だし、続きは風呂にでも入って、リラックスしてからにするか」
風呂場に行って、いつものとおり服を脱ぎ始め『それにしてもこれからどうしようか?主人公が死ぬなんて想定してなかったぞ~』と考えながら、そのまま服を洗濯機に放り込んだ。
【ガラガラ・バン】
風呂場の扉を閉めた瞬間、急に呼吸が出来なくなる「んっ!!!苦しい。くっ薬!!」と、叫ぶものの一人暮らしのこの家には俺の他には誰もいない。
発作だ。心臓病の持病があるのでニトログリセリンをペンダントトップにいれてあるのだが、考え事をしてしまったが為に、服と一緒に外してしまっている。俺のバカ!
何とか這い蹲りながらも薬を取りに行こうとするが苦しくて動けない。
「こ、このまま死んでしまうのか!くっ苦しい!!だっ誰か助けて…」
【ドン】
力が抜けその場に倒れ込む。意識が朦朧として何がなんだか分からない。
――刹那、目の前が暗転をするが、直後嘘のように苦しかった胸がスッと楽になる。俺、死んだのか?だとしたら瞼の裏に感じる明るさは何だ?死ぬ時ってこうなるの?
何がなんだか良く分からないまま目を開くと景色が霞む。声を上げようとするが「おぎゃ~おぎゃ~」と泣くことしか出来ない。なんだこりゃ、病気か?はたまた夢でも見ているのか?
すると横から女性の声がした。
「まぁ~奥様!元気な男の子ですよ。奥様に似ていらっしゃってなんと可愛らしい」
「テーゼ、アルフォンスを呼んできて」
「はい。奥様。仰せのままに」
「誰だこの人達?笑顔で人の顔をじろじろ見て。美人だからちょっと照れるな。しかしここはどこだ?見たところ何かの小屋っぽいぞ?」
とは言え自分の耳に入ってくる言葉は赤ん坊の泣き声だけだ。さすがの俺もこの異常に気付く。
手を上げてみると自分の手が目に入るがどう見ても赤ん坊の手だ。
「なっ、なに~!!ちょっと待て。確か風呂に入ろうとして発作を起こした筈だ。夢?それとも走馬灯?!何が起こった!」
と言うかテーゼと呼ばれる侍女と、アルフォンスと言う名前は覚えがある。そう、俺が書き始めた主人公の父親の名前だ。ここにいる全員の名前だけは夢に度々出てきた。
で、ここは馬小屋、これ、今俺が執筆中の物語と設定がかぶるんだけど。と言うかそのまんまだ。
主人公、つまり俺が生まれたのをなんで馬小屋にしたかと言うと、イエスキリストや聖徳太子が生を受けたのが馬小屋だったので、こいつはいける、そう思ったからだ。安直過ぎたかな…でも良くない?
そんな訳で、主人公の幼名を馬小屋の君っぽいものを付けようとも考えたが、和名過ぎて馴染まないのと、何よりあまりにも不憫なので諦めた。今こうして当事者になるとそうしなくて良かったと心底思う。
それから数分、先ほどいなくなった侍女がお湯、一緒に若い男が白い布を抱えて戻ってきた。どうやら父親ぽい。顔立ちは日本人のようだ。そして俺の股間を見て…
「がんばったな!!男の子だぞ!!」と嬉しそうにしている。少し照れる。
産湯に浸かると、ほんの数分前に風呂に入ろうとしていた事を思い出した。まさかこんな形で風呂に入るなんて誰が想像できた?冷静に考えてみると、そもそも何で言葉が理解できるんだ?
産湯から上がると、白い布に俺は包まれ母親に抱きかかえらた。アルフォンス、つまり自分の父親に頬擦りされる。僅かに生えた髭が痛い。赤ちゃんの敏感肌なんだから剃った直後にしようぜ!
ん~これはつまるところこれは夢ではない。自分が自分の書いた小説の中に転生をしたのだと理解しててしまった。なぜこんな事になったんだ。何もかもあり得ないだろ?
それから、馬小屋からの脱出!向う先はどうやら屋敷っぽい。小説どおりなら、俺は騎爵の長男として生まれたはずである。当事者となってしまった俺からしてみると貴族にしておいて良かったよ。ほんと。
母親の胸に抱かれながら屋敷に入ると、執事さんやメイドさんが「奥様!おめでとうございます!」と次々と声を掛けてきた。
赤ちゃんの体なので屋敷の大きさは随分と大きく感じる。
それから、階段を上りはじめ2階の寝室らしい部屋に入ると母親に授乳されながら、何とかわかることはないかと思うけど、赤ん坊なので何も確かめられない。そりゃそうか…首も座っていない赤ん坊だからな。
しかし、この女性、いや母親はとにかく美人で乳が大きいんだ。とある登山家が言った。そこに山があるからさ!と……きっとその頂には、男の桃源郷いや、夢、ロマンがあるのだろう…ってちょっと違う!
いや駄目だダメだ。50になろうととしているおっさんが、こんな風に思うのはやましい気がする。だってどう見ても母親だし年下よ?
授乳が終るとゲップをさせられてベッドに寝かされた。ガバッと立ち上がりたい気はするが、ここはされるがままだ。寝返りすらうてない。
それに、言わせてもらえば、書いた小説通りだったらまず神様に会ってチートなスキルを与えられる筈なんだけど、そんなセレモニー的なものは無かったぞ。
赤ん坊なのに言葉が理解出来るし、日本での記憶があるから何かしらの神様からの恩恵はあるのかも知れないが、俺は確かに日本で生きていた。
なので確認のため自分の人生を振り返ってみる。記憶を持ったまま異世界転生したのだ。そこを忘れてはいけないだろう。
【お湯はりします】
「さてと、風呂が出来るまでちょい休憩~」一人暮らしなので返事をする者はいない。ソファーに寝そべり目を閉じると意識を手放した。
【ザーーー】
『雨の音?ここはどこだ?』
「……ヴェル!死なないで!!」
フェードインするように徐々に声が大きくなる……と、ふっと目の前が明るくなって、目の前に赤い髪の女性と包帯が巻かれ傷ついて寝かされている男性が目に映った。ここは洞穴の中か?暗がりだが机にランプが置いてある。
見た目20歳ぐらいの赤い髪の女性は傷ついていた男性を泣きながら揺すり、横を見てみると仲間だと思われる女性2人もすすり泣いていた。
声を出そうとしても出せないし、触ろうとして机に触れてみたがすり抜けてしまう。それを、ただ呆然と横から見ている自分がいる。なんだろう、夢を見ているのか?
そう思っていると、狐耳の女性が涙を流しながら首を横に振り「ジュリエッタ様!この呪いにはスキルや魔法は効きません!諦めてヴェル君を楽にしてあげましょう」と言って、ジュリエッタと呼ばれる女性を抱き止める。
『エルフにケモ耳美女、ヴェルとジュリエッタって!』
この二人は今書いている主人公とヒロインだ。今までは少年少女の時の夢ばかりだったから気付けなかった。この夢を見るのは10年振りだ……小説を書き始めたのがきっかけになった夢だ……
「そんな事無い!諦めるもんですか!!ホーリーライト!!デスペル!!」
「ヴェル様が…とても辛く苦しそう…苦しむ姿に私は耐え切れそうもありません…ヴェル様を早く楽にしてあげてください…」
目を腫らしたエルフの女性も溢れる涙を拭いながらそう言ってジュリエッタを止めるが、彼女は首を横に何度も振りながら呪いを解く魔法を掛け続けている。
「ごめんねヴェル!私が油断したばかりにこんな事になって!!」
ヴェル手を握りながら、ジュリエッタが涙声で許しをこうとヴェルは薄っすらと瞼を開く。
「ジュリエッタ…許すも何も、これはオレの本望です。聖騎士として聖女様の盾になって死ねるのですから。あなたはこの世界の希望の光…無事で良かった。でも最後にひとつだけ言わせてください。今まで言えませんでしたが…ずっと好きでした」
ヴェルは、声を振り絞るようにそう言うと優しく微笑んだ。
「馬鹿!こんな時に何を言ってるのよ!元気な姿になって、正々堂々と言いなさいよ!」
「それは…ごめんなさい。叶えられそうもないです……気が…遠くなってきた。先にあの世にぃ……ってます」
ヴェルは力尽きて、ガクッと全身の力が抜け落ちた。
「――――!」
「――――!」
「…死んじゃゃいやっっ!!ヴェル~!!」
ジュリエッタが泣き叫ぶ。
「へっ?そんな馬鹿な!主人公のヴェルが死んだら物語の続きはどうするんだよ!」
そう夢の中で叫ぶと、突然目の前が暗転した。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「ハッ~ハ~ハ~ 10年振りにこの二人の夢を見た…今回の夢は持病の心臓に悪いや」
短い夢だったが汗でインナーシャツがベタベタだ。過呼吸のような息切れと喉の渇き。俺は机の上に置いてあった新品のミネラルウォーターの入ったペットボトルの水を半分ほど飲むと少し落ち着いた。
それにしても、俺は幼少の時からこの様な妙な夢を見る。断片的ではあるが、ヴェルと呼ばれる男の子とジュリエッタと言う女の子の話だ。
青年になった二人の夢は初めて見たような気がする。それに夢の中なのだが何も出来ない分だけ後味が悪い。今書いている小説の主人公であるヴェルが死んでしまった。こんな展開を想定していなかったので、これからの話の内容をどうしよう…
そんな事を思いながら、覚えているうちにメモに記録しておこうと、先ほどの夢を振り返るが、会話は思い出せるのに霧がかかったように風景や顔は思い出せない。今までも夢の中では顔が認識できるのだが同じように覚めると会話以外は思い出せない…それにしても今日のはやけにリアルだった。
【お風呂が沸きました。お風呂が沸きました】
周りが静かなだけに、突然のお風呂のアナウンスが流れてビクっとする。
「さてと~。汗も掻いた事だし、続きは風呂にでも入って、リラックスしてからにするか」
風呂場に行って、いつものとおり服を脱ぎ始め『それにしてもこれからどうしようか?主人公が死ぬなんて想定してなかったぞ~』と考えながら、そのまま服を洗濯機に放り込んだ。
【ガラガラ・バン】
風呂場の扉を閉めた瞬間、急に呼吸が出来なくなる「んっ!!!苦しい。くっ薬!!」と、叫ぶものの一人暮らしのこの家には俺の他には誰もいない。
発作だ。心臓病の持病があるのでニトログリセリンをペンダントトップにいれてあるのだが、考え事をしてしまったが為に、服と一緒に外してしまっている。俺のバカ!
何とか這い蹲りながらも薬を取りに行こうとするが苦しくて動けない。
「こ、このまま死んでしまうのか!くっ苦しい!!だっ誰か助けて…」
【ドン】
力が抜けその場に倒れ込む。意識が朦朧として何がなんだか分からない。
――刹那、目の前が暗転をするが、直後嘘のように苦しかった胸がスッと楽になる。俺、死んだのか?だとしたら瞼の裏に感じる明るさは何だ?死ぬ時ってこうなるの?
何がなんだか良く分からないまま目を開くと景色が霞む。声を上げようとするが「おぎゃ~おぎゃ~」と泣くことしか出来ない。なんだこりゃ、病気か?はたまた夢でも見ているのか?
すると横から女性の声がした。
「まぁ~奥様!元気な男の子ですよ。奥様に似ていらっしゃってなんと可愛らしい」
「テーゼ、アルフォンスを呼んできて」
「はい。奥様。仰せのままに」
「誰だこの人達?笑顔で人の顔をじろじろ見て。美人だからちょっと照れるな。しかしここはどこだ?見たところ何かの小屋っぽいぞ?」
とは言え自分の耳に入ってくる言葉は赤ん坊の泣き声だけだ。さすがの俺もこの異常に気付く。
手を上げてみると自分の手が目に入るがどう見ても赤ん坊の手だ。
「なっ、なに~!!ちょっと待て。確か風呂に入ろうとして発作を起こした筈だ。夢?それとも走馬灯?!何が起こった!」
と言うかテーゼと呼ばれる侍女と、アルフォンスと言う名前は覚えがある。そう、俺が書き始めた主人公の父親の名前だ。ここにいる全員の名前だけは夢に度々出てきた。
で、ここは馬小屋、これ、今俺が執筆中の物語と設定がかぶるんだけど。と言うかそのまんまだ。
主人公、つまり俺が生まれたのをなんで馬小屋にしたかと言うと、イエスキリストや聖徳太子が生を受けたのが馬小屋だったので、こいつはいける、そう思ったからだ。安直過ぎたかな…でも良くない?
そんな訳で、主人公の幼名を馬小屋の君っぽいものを付けようとも考えたが、和名過ぎて馴染まないのと、何よりあまりにも不憫なので諦めた。今こうして当事者になるとそうしなくて良かったと心底思う。
それから数分、先ほどいなくなった侍女がお湯、一緒に若い男が白い布を抱えて戻ってきた。どうやら父親ぽい。顔立ちは日本人のようだ。そして俺の股間を見て…
「がんばったな!!男の子だぞ!!」と嬉しそうにしている。少し照れる。
産湯に浸かると、ほんの数分前に風呂に入ろうとしていた事を思い出した。まさかこんな形で風呂に入るなんて誰が想像できた?冷静に考えてみると、そもそも何で言葉が理解できるんだ?
産湯から上がると、白い布に俺は包まれ母親に抱きかかえらた。アルフォンス、つまり自分の父親に頬擦りされる。僅かに生えた髭が痛い。赤ちゃんの敏感肌なんだから剃った直後にしようぜ!
ん~これはつまるところこれは夢ではない。自分が自分の書いた小説の中に転生をしたのだと理解しててしまった。なぜこんな事になったんだ。何もかもあり得ないだろ?
それから、馬小屋からの脱出!向う先はどうやら屋敷っぽい。小説どおりなら、俺は騎爵の長男として生まれたはずである。当事者となってしまった俺からしてみると貴族にしておいて良かったよ。ほんと。
母親の胸に抱かれながら屋敷に入ると、執事さんやメイドさんが「奥様!おめでとうございます!」と次々と声を掛けてきた。
赤ちゃんの体なので屋敷の大きさは随分と大きく感じる。
それから、階段を上りはじめ2階の寝室らしい部屋に入ると母親に授乳されながら、何とかわかることはないかと思うけど、赤ん坊なので何も確かめられない。そりゃそうか…首も座っていない赤ん坊だからな。
しかし、この女性、いや母親はとにかく美人で乳が大きいんだ。とある登山家が言った。そこに山があるからさ!と……きっとその頂には、男の桃源郷いや、夢、ロマンがあるのだろう…ってちょっと違う!
いや駄目だダメだ。50になろうととしているおっさんが、こんな風に思うのはやましい気がする。だってどう見ても母親だし年下よ?
授乳が終るとゲップをさせられてベッドに寝かされた。ガバッと立ち上がりたい気はするが、ここはされるがままだ。寝返りすらうてない。
それに、言わせてもらえば、書いた小説通りだったらまず神様に会ってチートなスキルを与えられる筈なんだけど、そんなセレモニー的なものは無かったぞ。
赤ん坊なのに言葉が理解出来るし、日本での記憶があるから何かしらの神様からの恩恵はあるのかも知れないが、俺は確かに日本で生きていた。
なので確認のため自分の人生を振り返ってみる。記憶を持ったまま異世界転生したのだ。そこを忘れてはいけないだろう。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる