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第1章 ー緊急事態宣言ー
2.闇に落ちた光
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数時間後、娘が私に声をかけてきた。
「ねえ、お母さん。健太郎がトイレから戻ってこないんだけど。台所にいる?」
「知らないわ。さっきまで一緒に遊んでいたでしょ?台所には来てないわよ。」
私の返答に、娘の顔色が変わった。彼女は急いで走り出した。
「どうしたの?健太郎に何かあったの?」
「お母さん、早く来て!健太郎が落ちたかもしれないの!」
私は一瞬固まったが、娘の表情を見て、ただ事ではないと感じた。女性用トイレの扉が開いたままで、トイレットペーパーが穴に垂れ下がっていた。恐怖で頭が真っ白になり、足が竦んだ。健太郎がトイレの穴に落ちたのかもしれない。娘は私を一瞥すると、「健太郎ー!生きてるなら返事して!」と叫んだが、返事はなかった。
「お母さん、どうしよう……。もし衝撃で気絶してたら……!」
娘は涙を抑えきれない様子だった。私は冷静を保とうと努め、救急隊に連絡した。
「大丈夫よ。救助隊にはもう連絡したから。すぐに来るわ。それまで待ちなさい」
娘を落ち着かせようと背中を優しく撫でた。
「嘘でしょ!信じてないんでしょ。健太郎が落ちたって?いいわ。救助隊を待っていれば?私はロープを持ってくるから」
娘は私を鋭い目で見つめ、ロープを取りに家へ向かった。私は健太郎を呼んだが、返事はなかった。スマホのライトでトイレの穴を照らすと、健太郎の蛍光色の靴が見えた。私は声を上げ、数分後、娘が持ってきたロープを穴に投げ入れた。
「お母さんはここにいて。私が弟を助けるから」
娘はロープを降ろした後、すぐに降りようとした。しかし、私は娘の腕を引き、
「代わるわ。私が行くから。ロープを固定して、救助隊を連れてきて」
私はロープを身に巻き、トイレの奥へ飛び込んだ。悪臭と暗闇に息が詰まりそうになりながら、ロープを降ろした。幸い、数メートルで止まり、糞だらけの地面には落ちなかった。スマホのライトで照らすと、外に通じる蓋が見えた。その近くで、健太郎が倒れていた。私は彼のもとへ急ぎ、声をかけた。
「健太郎!大丈夫?どこか痛い?」
健太郎は苦しそうに唸ったが、答えはなかった。私は彼を背負い、ロープに結びつけた。救助隊を待つ暇はなかった。娘と父が引っ張り上げ、無事に脱出した。救助隊が到着したのはその数分後だった。
異変は、若い救助隊員が健太郎の背中を見た時に起きた。
「虫に覆われている!」と叫び、逃げ出し、年配の救助隊員は怒り、「虫くらいでビビるな」と叱責した。
「でも、見てください。健太郎の背中に虫がびっしりですよ!」
新人は泣きながら訴えた。
私は健太郎の背中に手をやると、ゾワゾワとした感触があった。手には虫がくっついていた。
「ぎゃあああああああ!」
私は手を振り払ったが、虫は離れなかった。その時、健太郎の背中から黒い影が現れた。救助隊員たちは遠くから見ているだけだった。娘が助けようとすると、年配の救助隊員が引き止めた。私は虫を引き剥がそうとしたが、皮膚が剥がれるほど痛かった。パニックになり、健太郎の方を見ると、彼はもはや人間ではなく、黒い怪物に変貌していた。
「ねえ、お母さん。健太郎がトイレから戻ってこないんだけど。台所にいる?」
「知らないわ。さっきまで一緒に遊んでいたでしょ?台所には来てないわよ。」
私の返答に、娘の顔色が変わった。彼女は急いで走り出した。
「どうしたの?健太郎に何かあったの?」
「お母さん、早く来て!健太郎が落ちたかもしれないの!」
私は一瞬固まったが、娘の表情を見て、ただ事ではないと感じた。女性用トイレの扉が開いたままで、トイレットペーパーが穴に垂れ下がっていた。恐怖で頭が真っ白になり、足が竦んだ。健太郎がトイレの穴に落ちたのかもしれない。娘は私を一瞥すると、「健太郎ー!生きてるなら返事して!」と叫んだが、返事はなかった。
「お母さん、どうしよう……。もし衝撃で気絶してたら……!」
娘は涙を抑えきれない様子だった。私は冷静を保とうと努め、救急隊に連絡した。
「大丈夫よ。救助隊にはもう連絡したから。すぐに来るわ。それまで待ちなさい」
娘を落ち着かせようと背中を優しく撫でた。
「嘘でしょ!信じてないんでしょ。健太郎が落ちたって?いいわ。救助隊を待っていれば?私はロープを持ってくるから」
娘は私を鋭い目で見つめ、ロープを取りに家へ向かった。私は健太郎を呼んだが、返事はなかった。スマホのライトでトイレの穴を照らすと、健太郎の蛍光色の靴が見えた。私は声を上げ、数分後、娘が持ってきたロープを穴に投げ入れた。
「お母さんはここにいて。私が弟を助けるから」
娘はロープを降ろした後、すぐに降りようとした。しかし、私は娘の腕を引き、
「代わるわ。私が行くから。ロープを固定して、救助隊を連れてきて」
私はロープを身に巻き、トイレの奥へ飛び込んだ。悪臭と暗闇に息が詰まりそうになりながら、ロープを降ろした。幸い、数メートルで止まり、糞だらけの地面には落ちなかった。スマホのライトで照らすと、外に通じる蓋が見えた。その近くで、健太郎が倒れていた。私は彼のもとへ急ぎ、声をかけた。
「健太郎!大丈夫?どこか痛い?」
健太郎は苦しそうに唸ったが、答えはなかった。私は彼を背負い、ロープに結びつけた。救助隊を待つ暇はなかった。娘と父が引っ張り上げ、無事に脱出した。救助隊が到着したのはその数分後だった。
異変は、若い救助隊員が健太郎の背中を見た時に起きた。
「虫に覆われている!」と叫び、逃げ出し、年配の救助隊員は怒り、「虫くらいでビビるな」と叱責した。
「でも、見てください。健太郎の背中に虫がびっしりですよ!」
新人は泣きながら訴えた。
私は健太郎の背中に手をやると、ゾワゾワとした感触があった。手には虫がくっついていた。
「ぎゃあああああああ!」
私は手を振り払ったが、虫は離れなかった。その時、健太郎の背中から黒い影が現れた。救助隊員たちは遠くから見ているだけだった。娘が助けようとすると、年配の救助隊員が引き止めた。私は虫を引き剥がそうとしたが、皮膚が剥がれるほど痛かった。パニックになり、健太郎の方を見ると、彼はもはや人間ではなく、黒い怪物に変貌していた。
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