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友1
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微かに聞こえてくる鳥のさえずりを目覚ましに、うっすらと目を開けた桜子は部屋に入り込む朝の日差しに顔を顰める。
一瞬、今が何時なのか分からずぼんやりと天井を見上げていたが、途端に昨日の出来事を思い出し顰め顔にさらに深い縦皺を刻む。
(そうか・・・・・・あの後は直ぐに部屋にこもったのだったな)
昨夜は昭仁に無体を強いられた後、浴槽に浸かり皮膚が赤くなるまで体をこすった。
思い出すのも悍おぞましい男の一物を無理やり押し込まれた口は、風呂場に溜めてあった瓶の水がなくなるまで口の中をゆすいだ。
その後は、あんな出来事の後に食事をする気にもなれず自室へと引きこもった。
一晩経った今も直ぐに昨夜の記憶を頭から消すことなど出来るはずもなく、むしろ時間が経つにつれ腹立しさがうまれる。
これからあんな男と一つ屋根の下で生活をすると思うと嫌悪感で吐き気が込み上げる。
「桜子様、お目覚めですか?朝餉の支度が出来ておりますよ。学校へのご支度もございます。あまりゆっくりなさっているお時間はありませんよ」
そんな葛藤を繰り返していると、襖の向こうから聞きなれたツユの声がかる。
気怠い体を起こし、盛大な溜息と共に桜子は襖に向かい言葉を返す。
「要らぬ。今日は女学校へも行かぬ。しばらく一人にしてくれ」
「まあ、桜子様がお嬢様が女学校をお休みになりるなんて!!・・・・・・どこかお体の調子がよろしくないのですか?」
「うるさい!!ほっといてくれ!!」
今まで女学校を余程のことがない限り休んだことのない桜子らしからぬに行動にツユも驚いたのだろう。
だが今の桜子には心配そうに話すツユの声ですら煩わしかった。
八つ当たりだと分かっていても、感情を抑えることが出来ない。それほどまでに、昨夜の出来事は桜子の中に色濃く残っていた。
(あの男、絶対に許さぬ)
忘れようとしても頭から消し去ることが出来ない昨夜の痴態に屈辱でどうにかなってしまいそうだった。
閉ざされ口は歯ぎしりが聞こえそうなほど力が込められていた。
「桜子様・・・・・・何か御用がありましたらツユを呼お呼び下さいね。直ぐにまいります」
遠ざかる足音を聞きながら、桜子は布団を頭まで被りもう一度深く目を瞑るのだった。
♦♦♦♦♦♦
桜子が次に目を覚ましたのはその日の夕方だった。辺りが夕焼けに染まる中、ツユの控えにかけられた声にまだ覚醒しきれていない頭を懸命に働かせる。
「桜子様・・・・・・ご遊学であられる萩間様と津田様という方がお見えになられておりますがお通ししてもよろしいでしょうか?」
どうやら、女学校を休んだ桜子の様子を伺いに美代子が訪ねてきたらしい。
津田という聞き慣れない名前に一瞬思考を巡らせたが、先日中庭で言葉を交わした少女を思い出す。
(確か亜湖といったか?物好きなものだ。おおかた美代子に無理やり連れてこられたのだろうが・・・・・・)
「桜子様?」
促すようなツユの声に桜子は慌てて布団から体を起こす。
「しばし待て。身支度をする」
一瞬、今が何時なのか分からずぼんやりと天井を見上げていたが、途端に昨日の出来事を思い出し顰め顔にさらに深い縦皺を刻む。
(そうか・・・・・・あの後は直ぐに部屋にこもったのだったな)
昨夜は昭仁に無体を強いられた後、浴槽に浸かり皮膚が赤くなるまで体をこすった。
思い出すのも悍おぞましい男の一物を無理やり押し込まれた口は、風呂場に溜めてあった瓶の水がなくなるまで口の中をゆすいだ。
その後は、あんな出来事の後に食事をする気にもなれず自室へと引きこもった。
一晩経った今も直ぐに昨夜の記憶を頭から消すことなど出来るはずもなく、むしろ時間が経つにつれ腹立しさがうまれる。
これからあんな男と一つ屋根の下で生活をすると思うと嫌悪感で吐き気が込み上げる。
「桜子様、お目覚めですか?朝餉の支度が出来ておりますよ。学校へのご支度もございます。あまりゆっくりなさっているお時間はありませんよ」
そんな葛藤を繰り返していると、襖の向こうから聞きなれたツユの声がかる。
気怠い体を起こし、盛大な溜息と共に桜子は襖に向かい言葉を返す。
「要らぬ。今日は女学校へも行かぬ。しばらく一人にしてくれ」
「まあ、桜子様がお嬢様が女学校をお休みになりるなんて!!・・・・・・どこかお体の調子がよろしくないのですか?」
「うるさい!!ほっといてくれ!!」
今まで女学校を余程のことがない限り休んだことのない桜子らしからぬに行動にツユも驚いたのだろう。
だが今の桜子には心配そうに話すツユの声ですら煩わしかった。
八つ当たりだと分かっていても、感情を抑えることが出来ない。それほどまでに、昨夜の出来事は桜子の中に色濃く残っていた。
(あの男、絶対に許さぬ)
忘れようとしても頭から消し去ることが出来ない昨夜の痴態に屈辱でどうにかなってしまいそうだった。
閉ざされ口は歯ぎしりが聞こえそうなほど力が込められていた。
「桜子様・・・・・・何か御用がありましたらツユを呼お呼び下さいね。直ぐにまいります」
遠ざかる足音を聞きながら、桜子は布団を頭まで被りもう一度深く目を瞑るのだった。
♦♦♦♦♦♦
桜子が次に目を覚ましたのはその日の夕方だった。辺りが夕焼けに染まる中、ツユの控えにかけられた声にまだ覚醒しきれていない頭を懸命に働かせる。
「桜子様・・・・・・ご遊学であられる萩間様と津田様という方がお見えになられておりますがお通ししてもよろしいでしょうか?」
どうやら、女学校を休んだ桜子の様子を伺いに美代子が訪ねてきたらしい。
津田という聞き慣れない名前に一瞬思考を巡らせたが、先日中庭で言葉を交わした少女を思い出す。
(確か亜湖といったか?物好きなものだ。おおかた美代子に無理やり連れてこられたのだろうが・・・・・・)
「桜子様?」
促すようなツユの声に桜子は慌てて布団から体を起こす。
「しばし待て。身支度をする」
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