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始まり

嫌な予感

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いよいよ明日は入学式の日。
私専属のメイドのミアも、ものすごく張り切っている。私以上に。

「さあっ!!お嬢様!!御髪をとかせていただきますね!!念入りに肌のケアもしなくては!!なんて言ったって明日はお嬢様の記念すべき初の登校日なのですから!!」

「あ...うん...。よろしくお願いね....。(これは長くなりそうね....)」

やっと終わった.....。ミアの本気をなめてたわ....。
髪をといて、なんかクリームみたいなのつけて、顔パックして、爪を研いて、肌のケアして....世の中の女の子って大変なのね...。いや私も女だけど。

はぁ、疲れたからもう寝よう。明日何も起こらないといいなぁ。

でも、なんか嫌な予感がするのよね。
こういう時の予感って大抵当たるからなぁ....

そんな事を考えているうちに私は眠りについてしまった。



翌朝、またもやミアのケアによってぐったりしてしまった私だけど気を取り直して学校へと向かった。
もちろん移動は馬車。だけどものすごく揺れるし疲れるのよね。車がいいわやっぱり。

学校に着くともう生徒たちが登校し始めていて賑わっていた。



「.....でか。」
有名な公爵家や貴族家の子供が通うんだからもちろん大きい学校だとは思ってたけど....それにしてもでかい。東京ドーム何個分で表せる感じだ。
管理もきちんと行き渡っていて、そこら中に薔薇が咲き乱れている。
10分以上かかるであろう距離のある校門と校舎の間には大きな噴水や、ベンチがある。
英国のバロック式をイメージさせるような校舎はピカピカで一周しようと思ったら1時間は軽く超えるだろうというレベル。

前の高校の入学式と同じ感じかなーとか思ってた昨日の私を殴りたい。
こんなところでやっていけるのかしら私...。



「お嬢様、行ってらっしゃいませ。また、午後にお迎えに参ります。」

「え、ええ。ありがとう。では、行ってきますね。」
(もうすでに帰りたいんだけど....)

校門をくぐると先生らしき人が立っていて、ペンダントのようなものを渡された。校章バッチらしい。



.....ん??なにか妙に周りから視線を感じる。すると、周りからこんな声が聞こえてきた。

「まぁ。レーチャル家のご令嬢よ。なんてお綺麗なのかしら。」

「まぁ!ほんと!リリー様よ!!あの日の光に輝く黄金こがね色の御髪に、宝石のように美しい瞳。白く透き通った肌で鼻筋の通った御鼻。薄い唇がまた色気を醸し出されていて、本当にお美しいわ!!!」


は、恥ずかしい!!!な、なに!?あなたは詩人か何かなのかしら!?
急にべた褒めされても、恥ずかしいだけなんですけど!?ていうか声が大きいのよ!!


そう、すっかり忘れてたのだ。昔の私はごく普通の女子高生だったけど、今は違うんだ。言うなれば、超絶美少女。道を歩けば誰もが振り返るほどの美しさ。


これは目立つわね....。目立ちたくないのになぁ。
私は普通の生活を送りたいわ...。平穏な日々を...。

いたたまれない気持ちになりながら、足を早めてクラス発表されている掲示板の方に向かった。

掲示板の辺りはすでに賑わっていて、人が大勢いた。

クラスを確認すると、私はD組のようだった。

D組かぁ...。知り合いは1人もいないし、一から友達作らなきゃいけないのね。

すると突然、



「きゃあー!!!!!」

と、ひときわ大きい女子生徒の声がした。
驚いて振り返ると、そこにはこの世のものかと思えないほどの美形な男子生徒が立っていた。つくりもののような美しさである。
しかし、なぜだか見たことがある気がする。

その男子が歩く度に女子の声はさらに一層大きくなる。
あ、耳元で叫ばないで。


「きゃあー!!!ブラウン様よ!!なんて麗しいのかしら!!!」


へぇ、ブラウンっていうのねこの人。
ん?ブラウン?聞いたことある名前だなぁ。

するとまたもや、詩人チックな女子生徒が
「アレクサンド=ソフィアナ=ブラウン様よ!!!
あぁ国王陛下に似ていらっしゃるだけあって、お美しいわ...!!あの黒髪のさらさらな御髪に切れ長で澄んだ瞳...!なんて神々しいのかしら...!!」
とまぁご丁寧に説明してくれた。
なるほど、どっかで見たことあるなぁ思ったら国王主催の夜会で一度だけ会ったことがあるんだわ。
とは言ってもチラッと見ただけで話しかけたりはしなかったけどね。

でもこんな目立つ人と一緒のクラスだったら嫌だなぁ。女子がめんどくさそうだし。
同じクラスなりませんようにと祈りながら、クラス表に目を向けると....
まさかの同じクラス....。






あぁ...詰んだわ....。さようなら私の平穏な学校生活。



嫌な予感ってやっぱり当たるわね。





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