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52話 僕の「幸せ」

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 高2の学期末テストも終わり、春休みにに入ったある日。僕は受験生としての義務を果たしていた。今日も自室に篭りペンを走らせていた。

代わり映えのない日常を送る僕は、夜の11時頃に休憩を挟んでいた。ベッドに座りながら、ボーッとしていた。ふと僕は考え事をしていた。

『僕の幸せって何だろう。』それの答えが出ていなかった。確かに葵との日々や沙耶香と巧と過ごす時間も楽しい。でも、先生の言う『幸せ』とは何かが異なっているような気がした。

僕はその違和感と、『幸せ』って何だろうかの答えを探していた。その答えを見つけられないまま、数ヶ月が経ち、考えるのを諦め始めていた。

あの時の先生は、悲壮感に満ちていた。旦那さんとの日々を思い出す中で、その幸せな気持ちが蘇ってきた。その時により寂しさを感じてしまったように、僕には見えた。

『互いが互いを幸せにする。』僕は先生が言ったこの言葉は、僕があの時言った言葉とほぼ同じだった。だから、僕らはそれが達成されているし、今もそれに向かって日々を過ごしている。

葵はいつも言っていた。自分は幸せ者だと。彼女の中には、『幸せ』とは何かという明確なものがあって、その状態に今なっているようだった。その彼女を見ていて、僕もまた『幸せ』のような気持ちを感じていた。

僕は徐に立ち上がり、リビングにいる葵の元に向かった。

「休憩中?」

「ああ。そんなとこ。」

葵も同じタイミングで、休憩を取っていたようで、少しだけ眠っていた。

「僕さ、葵のこと好きだよ。」

「どうしたのいきなり。」

「紗南さんの言葉を思い出してさ、ちゃんと言葉にしようと思ってさ。」

「いつも言ってくれてるじゃん。まあでも、何度言われても嬉しいし、顔は熱くなるし、鼓動も早くなる。いつまでも慣れないね、その言葉には。」

葵は照れ隠しのように笑ってそう言った。

「私も翔太のこと、大好きだよ。これからもずっと一緒にいたい。」

「もちろん。僕以上に君を幸せにできる人なんて、この世にはいないから。」

「そうだね。毎日君に幸せにしてもらってる。」

僕らは隣に座り、顔を見合わせる。そして徐々にその距離は縮まっていく。

 ……チュ。

 僕らにだけ聞こえる、その幸福な音は今日も僕らの耳に届いていた。この瞬間が僕の中で幸せであることは間違いなかった。

 その後、僕は葵と少し話して、自室に戻った。やっぱり葵は僕を幸せにしてくれていた。今胸の中には幸福でいっぱいで、勉強にも差し支えが若干だが出ていた。

 これからも気持ちを抱えたままにしない。僕はちゃんと言葉に出していこうと心に誓ったのだった。
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