特進クラスのふざけかた

やすを。

文字の大きさ
上 下
24 / 48

24話 僕の家庭力

しおりを挟む
 「今日さ、親が帰ってこないから早めに帰ってな。」

 僕は漫画に没頭する彩白にそう告げた。今日から二日間、両親は旅行に行っている。

 なぜ息子を置いていったのか。別に毒親とか、仲が悪い訳でもない。単純に僕が「言ってこい!」と勧めたのだ。

 昔から僕と姉との子育てで、行きたがっていた二人での旅行を断念していた。でも、末っ子の僕はもう17歳。一人で留守番くらいできる。

 ……何ていい息子なんだ!! こんな親想いの息子がどこにいるんだよ!!

 「えー、じゃあ泊まってくよ。キー君の両親がいないのならいいよね。」

 「なに言ってんだよ! つうか、お前のお母さんが許さないでしょ。」

 「これがね、うちの両親は親戚の集まりでいないのよ! 代わりにお婆ちゃんが面倒見に来てくれてるの。」

 そう、こっちを振り返りながら悪い顔をしていた。「何て女だ」そう思った。

 追い出したら、後日両親からガミガミ言われそうだし。一晩泊めても親は笑顔で「良かったね。」って言うだろうしさ。

 まあ、良いのかな。ただ、僕の理性が保つかどうか、それが1番の懸念事項だけど……。

 「昼何食べたい?」

 僕は簡潔に彩白に聞いた。

 「えっ、キー君料理できるの?」

 「ボチボチかな。人並み以下くらい。」
 
 「料理中に、実験に失敗した博士みたいに黒焦げになってそう……。」

 そう彩白は笑っていた。

 あの、爆発して顔とか髪の毛が黒くなるやつだろ? よくコメディ系のやつである、あれ。

 「何て酷いことを……。僕に料理の才能がないって言いたいの?」
 
 「そうね。君にはやらせたくない! だから私が作ります!」

 「はえ? どうしたの、いきなり。」

 「いやー、キー君にやってもらうの怖いから、私がやろうかと。」

 おいおい、お前に人の心はないのか!!

 「彩白さんや、僕の心を傷つけすぎじゃありませんかね……?」

 「まあ、事実だし。それにさ、最近助けてもらってばっかだったから恩返しって事で。」

 「ん? 僕なんかしたっけ?」

 「旅行行った時に何かと助けてくれたじゃん!! あれの恩返ししたいなって。」

 「別に恩なんか返さなくて良いよ。当然の事をしただけだから。」

 というか、今の今まで忘れていたなんて、口が裂けても言えない……。

 「良いの! 私がそうしないと気が済まないから!」

 そう言って彩白は僕のベッドから起き上がると、下に降りていった。

 「彩白ー! 買い出し行かないと食材ないよー!」

 「分かった、じゃあ買いに行こー!」

 そう言って僕らは近くのスーパーに向かって歩き出した。

 なんだろうこうしてると同棲したカップルのように感じる。

 流石に言葉にするのは憚られたが、道中での楽しい雰囲気はそれを連想させるだけの力があるように感じた。

 「昼何にする?」

 「逆に彩白は何作れるの?」

 「まあ、大抵のものは一通り作れるよ!」

 「何その料理スキルの高さ……。花嫁修行も万全って感じだな……。」

 「お母さんに仕込まれてさ。幼稚園の時から包丁持たされてたから。」

 彩白ママすごいな。5、6歳の子供に刃物を持たせるって、相当厳しいんだろうね。

 「……なら、オムライスは作れますかね。彩白氏は……。」

 「……任せておくんなさい。絶品に仕上げて見せましょう……。」

 「それは頼もしいですな~、彩白氏は!」

 「カッカッカッ! 大船に乗ったつもりでいなさいな!」

 そんなふざけ合いを挟みつつ、食材をカゴに詰めていく。

 「ねえ、オムライスに納豆とか入れる?」

 「入れるかー!! 早く戻してきなさい!」

 「じゃあ、これは?」

 今度は何だ? えっと…………炊き込みご飯の素、うん……。

 「要らんよ!! つうかさ、入れて見たら美味しそうな気もして、ツッコミずらいんだよ……。」

 「あっ、確かにね……。そこは反省しないと……。」

 どんなとこ反省してんだよ……。

 「いいから、早く買い物終わらせるぞ。」

 「えー、折角ボケる良い機会だったのに……!」

 やめてくれ、僕の体力が無くなるから。

 そんなボケとツッコミの攻防もあって、僕らは家路に着いた。

 その間も、絶え間なく笑いが起こっていたのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...