『白薔薇』のマリオネット

最終章 僕たちの未来へ☆

赤坂東警察署にて その三

◈一倉は片瀬茜とともに現れた公安の桂を見て呆然とする。
まずい…公安は何か掴んでいるのか？
まずい…まずい…まずい…！
どうすれば！
公安が出張ってきて、なぜ五十嵐の事まで…聞かれるんだ？
捕まるのは絶対にまずい。

そして片瀬茜と桂の背後の3人の私服刑事。
茜がこの件を捜査するために抜擢した敏腕刑事だった。
二人はスーツ、一人はブルゾン。
ブルゾンを羽織った角刈りの丹精な顔で逞しいイケメン。
沖田は警視庁一の銃の名手。
茜はこの巨悪の関わる事件に対して、腕利きを引き抜いて捜査に当たる事にしたのだ！

一倉
「片瀬参事官。いったいなんの事だ？
それにこの件をあんたが担当なんて誰の命令なんだ？」

茜
「命令を出したのは警視総監よ！
総監の部下、本間局長が私に辞令を出した。
嘘だと思うなら局長に直接聞いてみたらどうなの？
五十嵐さんの件は私は関知してないわ。
桂さんに聞きなさい。」

桂
「片瀬参事官の言われる通り。
五十嵐防犯局長の死には謀殺の疑いが掛かっている。
それと辻󠄀巡査長！」

辻󠄀
「いっいったいなんだよ！」

桂
「あなたにもある疑惑が生じている。
あなたは裏と呼ばれる非合法集団の一員の疑惑がね。」

一倉は足元が崩れて崖下に落ちる錯覚を覚えた。
また辻も同様に。
冗談じゃねえ！捕まってたまるかい！

辻󠄀
「誰も動くなよ。てめえら！
この男娼をぶっ殺すぞ！」

辻󠄀はニューナンブを抜くと、制服警官に腕を取られていた風太を強引に引っ掴むと、首を腕に廻して風太の頭にニューナンブを突きつけた！
辻󠄀に続いて一倉もシグP232を抜いて茜に向けた。

茜
「ばっ馬鹿な事はやめなさい！
一倉参事官！
あなたは何をしてるか分かっているの？」

一倉
「悪いね！片瀬さん。俺は捕まる訳にはいかないのさ。
口封じに消されちゃあ、かなわないしな。
それに公安部の桂っていったよな！
公安に取り調べを受けるなんて死んでもゴメンだね！
俺は公安が大っ嫌いなんだよ！」

辻󠄀
「へへへっ！そういう事。
おおっと全員動くなよ！
この男娼の脳みそをぶち撒けたくなければな！」

風太ー！風太を離せよ！
あんたそれでも警官か？
ヒロたちは思わず絶叫する。

茜
「一倉…参事官！
あなたって人は…」

茜は一倉と辻の卑劣さのあまり、怒りに震える。
こいつらはどこまで腐っているの？
しかし風太って子を人質に取られて、これでは動けない！

茜
「待ちなさい！
私が人質になるわ！
だからその子を離して私と交換しなさい！」

一倉
「嫌だね！あんたなんか人質にできるかよ！
あんたは自分を犠牲にしても犯人逮捕を優先するだろう！
昔から人質ってのは、ガキが一番なのさ。
小さいから非力だし、ガキの命は価値が高いからな！
じゃあさっさと逃走用の車を用意しろ！『笑』」

茜は呆れる。こんな奴が警視庁キャリアにいたとは！
また辻もニヤニヤ笑っているし。
しかしこのままでは手が出せない。
一倉も辻もこんな修羅場に馴れていて隙がないわ！
しかし茜も他の警官たちも気づかなかった！
赤坂東警察署刑事の真山徹也が制服警官に紛れこんでいた事に！
真山の独断だった！
唯一、真山の動きに気がついたのは茜の部下、沖田！

真山
「辻さん。久しぶり！元気？」

辻が一瞬気を取られた隙に真山が辻の右手首を掴み上げた！
「くっ…」バキューン！
辻のニューナンブの射線がずれて天井に！
真山が辻の首に腕を回して締め上げて、辻は思わず風太を離してしまう！

「くっ…てめえ…真山ー！」

真山は辻の右手首を捻りあげてニューナンブを落とさせた！
そして柔道4段の真山は背負投げで辻を強烈に床に叩きつけた！

辻
「ガハッ！ごぼっ！」
衝撃で口から泡を吹いた辻！

一倉
「真山か！貴様ー！」

一倉が真山にP232を向けるが、一瞬の隙をついて、沖田のS&WM36が抜かれて一倉の手首を撃ち抜いた！

一倉
「うぎゃー！痛ぇー！痛ぇー！」

沖田は凄い速さで一倉に突進すると！

沖田
「貴様はそれでも警官かぁー！」

ボゴッ！
一倉
「グギャー！ぶっは～！」

沖田の凄まじい怒りの一撃が一倉の顔面を振り抜き、一倉は鼻をへし折られて血ヘドを吐いて悶絶した。
沖田は警視庁一のストリートファイターだったのだ❗