『白薔薇』のマリオネット

龍賀ツルギ

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第七章 僕たちの闘い

ジュンとトモ そのニ

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ジュン
今日は妙に朝早く目覚めてしまった。
起きていつもの様に、あ…そうか。もう俺達には服を着ることすら許されないんだ。
身につけるのを許されるのは、白いハイソックスだけ。そして首輪と手枷足枷。それとローファー。
滑稽な姿だよな。改めて。
もし普通の男の子みたいな高校生活をしていたらどんなだったんだろう?
はっ!そんな事を考えても仕方がないのにな。
裸でハイソックスを履いて、首輪と枷を嵌める。
一応この奴隷住居にもカメラは設置されているから。奴隷スタイルでいないとお仕置きされちまう。

休息室には雪彦の人形が置いてある。
雪彦の身体のサイズを寸分無く再現して十字架に縛られている哀れな人形。
勃起したペニスまで再現するなんて悪趣味過ぎるぜ。
人形は俺たちと同じに白ハイソックス裸で十字架に晒されていた。
雪彦の人形の前には簡易ベッドが置かれていた。
頭がおかしくなってしまった優が寝ているから。優は雪彦の人形のそばにいないと情緒不安定になって喚いたり、大泣きして手がつけられなくなる。
以前は奴隷少年の中でも一番生意気で鼻っ柱も強くて、でも実は一番優しくて繊細な心を持っていた優『涙』
おかしくなってからはソラが罪滅ぼしなのか?一生懸命面倒を見てるけど。
優は時々雪彦の人形の男根を咥えている様になった。
さすがにヒロや俺がやめさせようと引き離したら、童子の様に大泣きして手がつけられなかった。
やむなく優の好きにさせたらまた咥えてチュッチュッと音を立てて、まるで赤ちゃんが母親の乳首を吸うように。まあ施設育ちの俺には母親がどんなもんかは想像出来ないけど。
ただ優は変な事を言ってるんだよなあ。
雪彦とお話してるって。
男根を咥えていると雪彦と話が出来るって。
まさかと思ったし、不気味だったが俺もヒロも雪彦の男根を咥えてみたが、何も変化は無かった。
貴也はどうかな?と思って試させたけど何も無かったようだ。
貴也はまだ後ろ手枷に縛られたまま。
食事も一人だけで床に置かれたドッグフードの様な栄養食を口だけを使って食べている。
カオルは処罰は許されたから。 
今は貴也だけが最低の奴隷として酷く扱われている。
寝る時も雪彦の人形に首輪を繋がれて床にひかれたカーペットで横になって寝ている。
優の寝ている簡易ベッドの下で寝る感じだ。
風邪をひいたら奴隷の務めが出来ないから毛布だけを掛けて。
毛布は優が掛けてやってるようだ。
それくらいは出来るらしい。

休息室は黄色い室内灯だけが、ぼんやりと灯している。
そこに雪彦の人形がポツンと置いてあると結構気持ち悪いな『苦笑』
でも今は平気になったけど。
元々俺はお化けとか怪談が大の苦手だったのにな。
ただここを脱走する覚悟を決めたら不思議と怖くなくなった。
腹が座ったのかな?
失敗したらどんな目に合うか?分からないからな。
雪彦の前に誰かうずくまっている。
誰?トモじゃないか!
トモもこんな朝早くに。まだまだ起床時間には早いのに。
トモの足元には貴也が横になっていて、簡易ベッドには優が寝ていた。
トモを見ると両手の指を組んで。
そうまるで西洋の神様に信者がお祈りするみたいに、トモは眼を瞑り穏やかな顔でお祈りをしていた。
そしてトモは俺に気づいて。

「あっ、ジュン。おはよう。」

貴也や優を起こさない様な小さな声で。

「おはよう。トモ。あれ。トモはいつも雪彦にお祈りしてるのか?」

「たまにね『微笑』
今日は早く目が覚めたからね。
そうしたら無性に雪彦に祈りたくなって。僕はここでは古株だから雪彦の事も良く知っているし。
ジュンも雪彦は知っているでしょ?」

「ああ。ヒロや貴也ほどじゃ無いけどな。そう言えば俺もここじゃあ古株だ『笑』」

するとモゾモゾと床に寝ていた貴也が身体を起こした。
貴也は俺を見て複雑な顔をしている。
無理もないな。俺は貴也には冷たくあしらったから。
殴って首を絞めた事さえある。

貴也は俺の眼をジッと見ている。
何だよ。恨み事でも言いたいのかよ!
すると貴也の眼からツーと涙がこぼれていた。

「ジュン。ごめんね。僕が弱かったから優も救ってあげられなかった。
みんなも守れなかった。僕のせいだ。そして…ジュンには…一番…謝りたかったんだ…本当にごめん…ごめん…ごめんなさい…うっうううっ…『涙』
トっトモもごめん…本当にごめん…
許してなんて言わない…ただ謝らせてくれれば…いいだけなんだ…
それだけでいいから…『涙』」

トモ「貴也。僕は別に…いいよ…貴也を恨んでなんかないよ。」

ジュン「貴也…」

トモ「ジュン。貴也と仲直りをする時じゃない?ここは雪彦の前だしちょうどいいよ。僕たちは血は繋がっていないけど家族じゃん。」

ジュン「貴也…俺こそごめんな。貴也の立場や苦しみを考えずにカッとなって。貴也を殴ったり酷い事をしていたのに。許さない訳ねえよ。俺は貴也を嫌いになった事なんかないから。
ごめんなさい。許してくれ!貴也。」

トモ「ジュン…
ねえ。貴也もこれで3人仲直りだね。良かった…本当に良かった…『涙』」

トモが俺と貴也をまとめて抱きしめた。俺もトモと貴也を…
貴也は後ろ手手枷だから俺たちに顔を近づけて来た。

そうだ…貴也には…言わなきゃいけない事があるんだ。

「トモ。貴也にはあの事を話そう。
貴也は俺たちのリーダーなんだから。」

「そうだね。ジュン。貴也にはヒロたちと後を頼まなきゃいけないからね。」

「……?なんの話なの?二人とも。」

「貴也。耳を近づけてくれ。
よし。これなら聞かれないな。
貴也。俺とトモはここを脱走する。」

「ジュン…トモ…本気なの?」

「うん。本気。ジュンもね。僕はここでは最年長だからみんなの為に脱走して白薔薇の存在を世の中に知らせたいんだ。」

「ああ。トモの言う通り。ここには政治家。大企業の社長も顧客にいるし、大騒ぎになるぜ!
そうしたら警察やマスコミが動いて俺たちを助け出してくれる。
そうすればみんな自由になれる。」

「でも、危険だよ。もし失敗したら戸倉は何をするか!
下手すれば命の危険が有るかも知れない。
二人にはそんな危険は侵させたくない。
この事を他の誰かは知っているの?」

「ヒロだけには。ただヒロにもいつ実行かは教えてないし、知らせない。みんなはこの事を知らない方がいい。トモも了承済みさ。貴也にもその日は教えない。何も知らなければ余計な追求はされないだろう。」

「じゃあ二人は僕たちみんなの為に、命を掛けるつもりなのか?」

「そんなカッコつけた事は言わねえよ『笑』
ただ俺たちが逃げ出したいだけさ。
なっトモ。」

「うん。そうだね。ジュン。結果みんなが開放されるだけ『笑』」

ジュン「だから貴也には、俺たちが逃げた後にみんなをまとめて引っ張ってやって欲しいんだ。
みんなが開放されるまでの間な。
頼むぜ。リーダー❗」

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